出張が決まったとき、地図アプリ、乗換案内や航空会社サイトの時刻表、ホテルや航空券の予約サイトなどを駆使してプランを決め、交通手段を確保し、最適な場所と価格のホテルを予約するのは、楽しいという人もいるかもしれないが、なかなか手間がかかることは間違いない。「AI Travel」は、国内外への出張時に、出発地と目的地、行き帰りの日時と、大体の宿泊予算を入力するだけで、AIが最適なホテル・飛行機・新幹線を調べてくれて、そのまま予約までできる出張手配・予約・管理サービスだ。
このサービスを提供するAIトラベルは8月23日、旅費の申請・精算機能や、部門やプロジェクトごとの経費の一元管理・分析機能を追加した、AI Travelの法人向けサービスの提供を発表、申し込み受付を開始した。法人向けサービスでは、海外出張時のビザの手配代行やリスク管理のサポート、主要な会計ソフトへのデータ入力などにも対応するという。AIトラベルは法人サービスでは、出張者の手配効率の向上だけでなく、総務・経理の業務の自動化・効率化による管理コストの削減、出張経費の可視化も図れる。「TechCrunch Tokyo 2016」のスタートアップバトルでファイナリストにも選ばれている。
また同日、AIトラベルはプレシリーズAラウンドとして、ジェネシアベンチャーズ、ベンチャーユナイテッド、TLMを引受先とした総額約4000万円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。
サービス開始当初から、出張の多いビジネスマンにとっての利便性もうっていたAI Travel。だが実際にユーザーへのヒアリングを進めていくと、「予約のプロセスが楽になっても、出張者の多くは(会社のルール上の)申請フローにおける雑務に対してまだ不満を強く持っているということが分かってきた」(AIトラベル代表取締役の藤原由翼氏)という。また同時に、出張者を管理する総務・経理部門にも課題感があった。
「上司からは業務効率の改善やコスト削減を依頼され、現場からは面倒なプロセスに対する不満が出たり、出張報告書の依頼や経費精算に関するやりとりでのストレスなどがあったりする。もっと効率的にできるはず…と思っても最適なサービスが分からないという意見が多かった」(藤原氏)
実際藤原氏が法人向けの旅行サービスを調査したところ、観光向けサイトに多少の機能が追加されただけ、もしくは逆に多大なコストのかかる大規模なシステムしかなかったのだという。
「米国ではトラベルマネージャーという出張管理を専門とした役職があり、インハウスで雇っている例が多いことも分かりました。既存のプレイヤーのように旅行代理店として予約を増やすことを目的とせず、企業の出張を(まるで優秀なトラベルマネージャーがいるかのように)適切にマネジメントできるサービスを目指しています」(藤原氏)。トラベルマネージャーは、実際経費削減や業務改善といった観点まで含めて出張を管理する。AI Travelも単なる代理店機能でなく、そこまでの機能を提供したいという。すでに、月間50〜100件程度の出張が発生する会社を中心に試験的な導入も行っている。
AIトラベル代表の藤原氏は楽天出身で、インキュベイト・ファンドのデザインフェローを務めた後、2014年に起業した。今回の調達資金により、サービス開発と運営体制をより一層強化する、としている。