ドナルド・トランプ次期大統領が次期運輸長官候補として指名したエレーン・チャオ(Elaine L. Chao)は水曜日(米国時間1/11)、上院公聴会で運輸テクノロジーの将来からFAA〔連邦航空局〕の役割に至るまで多数の質問に答えた。
チャオは自動運転車、インフラ、ドローンなどイノベーションとテクノロジーに関連する多数の質問に答えた。
上院商業委員会のジョン・スーン議員(共和党、サウスダコタ選出)は開会の言葉を述べ、「次期運輸長官はアメリカの運輸システムのイノベーションにおいて連邦政府にリーダーシップを発揮させるユニークは役割を担う」と述べ、重要な分野としてV2Vコミュニケーション〔自動車など輸送手段間の通信〕自動運転車、ドローンなど各種のUAVを挙げた。
チャオは「アメリカの輸送システムは、陸上、航空ともにテクノロジーの進歩に追いついてない」とし、国際的な競走で敗北する危険性を指摘した。「われわれの役割は何よりも利用者の安全の確保が優先される」としたが、同時に進歩を妨げるボトルネックとなっている不必要な規制を発見し、適切な見直しを行う方針を明らかにした。
チャオはの運輸インフラ整備に関して民間セクターからの投資を「活用していく」」と述べた。「政府と民間が提携することにより金融機関、年金ファンド等が持つ数兆ドルにも上る資金を多くの政府プロジェクトに注入し、活かすことができる。これらの事業を政府がすべてを独力で実行することができないのは周知のとおりだ」と述べた。
チャオは乗用車、バス、トラックなどの自動運転車とドローンがアメリカのビジネスに与える巨大な可能性を指摘し、「連邦政府の役割はまだほんの幼年期にある」と述べ、連邦政府の役割は「安全かつ効率的なテクノロジーの実現の障害ではなく触媒となる」ことが目的だとした。この発言は自動運転やドローンのテクノロジーを早急に商用利用しようと努力している民間企業にとって間違いなく追い風となる。事実、こうした運輸系企業はチャオが運輸省長官候補に指名したれたときから熱狂的支持を明らかにしていた。
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チャオはゲリー・ピーターズ議員(民主党、ミズーリ州)の質問に答えて、「自動運転テクノロジーに関連して自動車産業と密接に協力していくことを前向きに考えている」とした。この分野において公的規制がテクノロジーの進歩に追いついていないのではないかというピーターズ議員の質問に対してはこう答えている。
この分野におけるテクノロジーの発達は消費者の受容や理解を明らかに超えていると思われる。国として社会としてこうしたテクノロジーに親しみ、受け入れることが強く求められている。【略】〔その実現のためには〕広く国民的な議論が期待される。この面でも〔議会と〕協力していきたい。
ジム・インホフ上院議員(共和党、オクラホマ州)はドローンについて質問し、規制がテクノロジーの発達や商用利用を妨げているのではないかと質問した。チャオはこれに対してもアメリカがドローン・テクノロジーで世界をリードするためには「広く国民的な議論が起きることが必要だ」と述べ、積極的姿勢を見せた。【略】
マギー・ハッサン上院議員(民主党、ニューハンプシャー州)は「自動運転テクノロジーが普及し、健康上、経済上などさまざまな理由から自動車を運転することができない人々に一日も早く自動車による移動能力が提供されるようになることを期待している」と発言を締めくくった
コロラド州はこれまで自動運転テクノロジーの発達に大きな役割を果たしてきた(コロラド州であ今年に入ってからも自動運転セミトレーラーによる貨物輸送が行われている)。コリー・ガードナー上院議員(共和党、コロラド州)はスマート運輸テクノロジーについて質問し、テクノロジーの発達を妨げるような「面倒な規制」が連邦レベルで採用されることがないよう要求した。【略】
チャオはキャサリン・コルテス・マスト上院議員(民主党、ネバダ州)の質問に答え、ネバダを訪問して州政府が自動運転テクノロジーの発達において取っているリーダーシップを実地に見ることを約束した。ネバダ州において数多く自動運転テクノロジーのテストやデモが行われたことは今月開催されたCESコンベンションでも記憶に新しいところだ。【略】
エド・マーキー上院議員(民主党、マサチューセッツ州)は自動車間コミュニケーションとプライバシーの問題に関して質問した。自動車ますます「つながったデバイス」になるにつれてハッキングされるリスクが上昇する。また自動車がユーザーの移動パターンその他、車載センサーから重要な個人的情報を収集し、交換するようになっている。マーキー上院議員は消費者のプライバシー保護における連邦政府が果たすべき役割を質問した。【略】
テッド・クルス上院議員(テキサス州選出、共和党)はSpaceXやBlue Originに代表される民間宇宙企業についても質問した。前任のフォックス運輸長官は辞任に当ってのメモで商用宇宙航空について「触れてさえいない」とクルス上院議員は指摘し、チャオに対し、運輸長官としてこの産業分野に取り組む姿勢を質問した。チャオは「この分野についてはまだブリーフィングを受けていない。指名が承認された場合にはクルス議員と協力していく用意がある」と答えた。
チャオはジョージ・W・ブッシュ政権で労働副長官、ジョージ・H・W.・ブッシュ政権で労働長官を務めており、ワシントン政治に関して十分な実績がある。チャオは台湾の台北生まれ。8歳で家族とともにアメリカに移民した。チャオはケンタッキー選出のミッチ・マコーネル共和党上院議員(現在上院多数党院内総務)の妻。
運輸系テクノロジー企業、UberやLyftはトランプ次期大統領がチャオを指名したことを歓迎している。昨年11月にチャオが指名された際、両社はこの選択をa歓迎する声明を発表している。
〔日本版〕エレーン・チャオ(Ellane Chao)の繁体字表記は趙小蘭とされる。Wikipediaでは「イレーン・チャオ」と表記されているが、マスコミを含めて「エレーン・チャオ」表記の方が多いためこちらを用いた。
Featured Image: Chip Somodevilla/Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)