流行りのコワーキング浸透には限界がある

近頃どの通りにもWeWorkがあるように感じる。マンハッタンのミッドタウンを歩くと(実際にはしないで)、オフィスビルよりもWeWorkの方が多いようにも感じる。

この記事を、規制、公共サービスの問題、他の複雑な要素と絡んでいる都市部におけるテクノロジーについての進行形の議論ととらえてほしい。私はなぜ地下鉄の中で15分も立ち往生したのかを理解しようとしている辛辣なニューヨークっ子で、あなたの考えをArman.Tabatabai@techcrunch.comまで寄せてほしい。

コワーキングは天文学的な速さで世界中の都市に浸透してきた。その台頭は目覚ましく、ニュースのヘッドラインをたびたび飾っているソフトバンクもこの動きに巨大なVision Fundの成功を喜んで賭けているようで、WeWorkに何十億ドルも注ぎ込んできたーここにはコワーキング最大手の評価額を450億ドルに急上昇させた最近の投資44億ドルも含まれる。

コワーキングのこうしたトレンドがスローダウンする気配はない。需要の高まりを受け、新たなスタートアップが多くの都市で生まれ、未活用の実在店舗や商業スペースを低コストのコワーキングスペースに変えている。

その戦略とは、Workbarのような企業は小売業者が店舗の一部を貸し出すのを手伝い、Campsyteのような企業は空いている駐車場をアウトドア・コワーキングスペースまたは企業のオフサイトに変えるなど、小売から駐車場のようなニッチな場所まで、あらゆるタイプのビジネスにまたがっている。レストランやバーですら、人気のコワーキングスペースのようだ。SpaciousKettleSpaceといったスタートアップは、日中店を閉めているレストランをオフの時間だけプライベートなコワーキングスペースに変えている。

いつの間にかスタートアップはアーロンチェアを電柱の上にくくりつけて、それを“ワイヤレスワーキング”と呼んでいるかもしれない。

しかし、コワーキングの浸透には限界があるのだろうか。通りに並んでいる全ての店やレストラン、オープンスペースがMacBook、カプチーノ、Moleskineのノートで満たされるようになるだろうか。摩天楼を乗っ取るような勢いではあるものの、やはりそれはややハードルの高いタスクかもしれない。

全てコワーキング…

Photo: Vasyl Dolmatov / iStock via Getty Images

まず第一に、なぜ皆、あなたのお気に入りの近所のディナースポットをパートタイムのWeWorkに変えようとしているのだろうか。コワーキングは、未活用スペースに魅力的な使用方法を提供する。

まず第一に、コワーキングは最も独立したビジネスとして、一般的な商業地区と同じカテゴリーに区分される。そして、スペースを混雑して気が散るようなコーヒーショップに代わる場所にするのに、いくつかの余分な電源やWi-Fiをのぞき、追加で設置しなければならないインフラはわずかだ。コーヒーショップを利用しているのは価格に敏感で、リモートで働いていたりする人、あるいは最近増えているノマドワーカーだ。

このように、事業者はポップアップソリューションやイベントレンタル時に往々にして発生する構造レイアウトの変更をする必要もなく、そしてほとんどコストをかけることなくスペースをコワーキングリストに載せることができる。

供給サイドからすると、コワーキングネットワークは物件を購入したり、スペースに手を加えたりするのに資金を投入する必要がなく、従来のコワーキングスペースよりも随分安いレートで会員に場所を提供できる。たとえば、Spaciousのチェック済みレストランのネットワークにアクセスできるようになる月額会員料金は99〜129ドルだ。ニューヨーク市では1カ月300〜800ドルかかるWeWorkに比べると安い。

客はより手頃なコワーキング候補があることを知り、その一方で未活用の不動産の賃料上昇に直面している儲けの少ない事業者は保有するスペースをネットワークに載せ、ごく少ないコストで完全に新たな収入を得る。コワーキングが初めて導入された都市ではバリュー・プロポジションがかなりみられるーSpaciousは多くのレストランがネットワーク参加に申し込んでいて、トータルの5%だけが最終的に受け入れられているとNew York Timesに語っている

基本的に、ここでいうビジネスモデルは市場で成功するために多くの点をチェックしている:顧客、サプライヤーの両方にとって買収と支払いの面倒はほとんどなく、また両者とも以前にはなかった真の価値を見出している。単位経済学が強く作用しているようで、マーケットの両サイドとも信用とコミュニティを築いている。その結果、客がネットワークに参加するほどに高まる占有率でサプライヤーは恩恵を受け、客はネットワークにロケーションが加わるほどにフレキシビリティを確保できるという、はっきりとしたネットワーク効果が見て取れる。

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そして、これが未来の姿なのだろうか。コワーキングの戦略には本当に注目せずにはいられない。主要都市において、事業者や労働者に大きな価値を提供しているクリエイティブなソリューションだ。しかし、需要に応じた大規模展開については懸念があり、この現象がどの都市でもみられるようなものとなったり、WeWorkやその他従来型の大手のような規模に到達したりするかは不明だ。

これらコワーキングの企業は似たような利用層の獲得で競っていて、コワーキング企業間だけでなく、コーヒーショップや無料のワークスペース、従来型のコワーキングスペースで未使用の机やオフィスが使用できるようになるCroissantのようなフレキシブルなコワーキングとも競合しているようだ。SpaciousやKettleSpaceのように、Croissantのスペースは不動産リースを所有し、コワーキング用に建てられているので、かなり魅力的な料金を提供できる。

そうした料金は、特定の場所を必要とせず、従来型のコワーキングやオフィススペースで提供されるアメニティも不要という人にとっては最も魅力的なものとなるはずで、低価格であることを重視する人にとっても十分に魅力的な価格設定だ。と同時に、月額料金を払う代わりに無料で、あるいは無料に近い価格で使えるコーヒーショップを好むような人に提供するほどにあまりにも価格重視というわけでもない。

そして、こうした問題やソリューションが、人口密度の高い大都市以外のところでもメジャーなものになるのかどうかは不明だ。

人口がさほど過密でないところでは、コーヒーショップと無料のワークスペースで競争が展開されていて、月額料金が発生するサービスにはかなりハードルが高いのではないだろうか。また、プライベートな労働環境、あるいはワーキングコミュニティが欲しいという要望に応えるだけで、会員にとって十分なインセンティブになるだろうか。そして、人口が過密でない、スペースがたっぷりあるような都市においては、会員は近くに利用できるスペースがないときにかなり遠くまで足を運ばなければならないリスクも抱えるかもしれない。

リモート、臨機応変、そしてノマディックに働くという新たな労働力がトレンドとなっている一方で、コストはかかるが安定している従来のワークスペースを選択しないという人がどれくらいいるかは不透明だ。もし人口密度の欠如が問題になるのなら、そうした労働者のどれくらいが人口密度の高いエリアに住むだろう。特に労働者が料金に敏感で、どこでも住んで働けるという人であればどうなるのだろう。

はっきりさせておくと、私はコワーキング企業が著しく成長しない、と言っているのではないー実際、私はそうした企業は成長すると考えている。しかし、コワーキングを通して未活用のスペースで収益をあげるというトレンドが、あらゆる都市に浸透してかなりメジャーなものになるだろうか。おそらく、そうはならない。つまり、こうしたソリューションとバリュー・プロポジションの必要性は多くの大都市で顕著なのだ。

コワーキング企業は真の価値や無駄になっているスペースの効率的活用を生み出し、需給の問題の調整を図っている。独立事業者が存続するのを控えめにサポートしているという文化的な価値は、スペースをパートタイム・コワーキングスペースに変えるのを恐れている文化的“ダメージ”にまさるものだ。

イメージクレジット: Extreme Media / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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