浮動小数点演算1回は100京分の1秒、IntelとCrayが超高速次世代スパコンを共同開発中

「今のスマホは昔のスパコンだ」とよく言われる。しかし今の本物のスーパーコンピューターの能力はもちろんスマートフォンなどとは比べモノにならない。Intel(インテル)と Cray(クレイ)はエネルギー省の5億ドル(約553億円)の契約を獲得し、最大級のスーパーコンピューターを共同開発している。このマシンがいよいよエクサフロッップスを実現する

Auroraプログラムはいわゆる「エクサスケール」のコンピューティングシステムで、2021年にアルゴンヌ国立研究所に納入される。エクサ(exa)という接頭辞はものすごく巨大な数、10の18乗を表す。浮動小数点演算1回に100京分の1秒しかかからないわけだ。

読者の手元のデバイスに使われている最新のCPUはおそらくギガフロップス級の速度だろう。 1000ギガが1テラであり、その1000倍がペタ、さらに1000倍でやっとエクサの単位に到達する。たしかに半導体回路製造テクノロジーの驚異的な発達によってわれわれは非常に高機能のスマートフォンやタブレットを使えるようになった。しかし本物のスーパーコンピューターは文字通り桁違いに強力だ(これはCPUの場合で、GPUはもう少し込み入った話になる)。

ただし、そのスパコンも現在の世界最速は200ペタフロップス程度で、昨年TechCrunchが紹介したオークリッジ国立研究所で稼働するIBM Summitシステムだ。

しかしなぜエクサスケールのスパコンが必要なのか?ペタフロップス級で能力は十分ではないのか?実はペタフロップスでは間に合わないのだ。地球温暖化が特定の地域の雲の発達に与える状況をシミュレーションするには現在のスパコンの能力では足りない。こうしたシミュレーションの必要性が新たなスパコンの能力拡張競争を生んでいる。

気候シミュレーションは特にコンピューターのリソースを消費する処理だ。モデルの各点ごとに複雑な計算を必要とするため、当初のモデルはきわめて目が粗いものだった((最近の成果はたとえばこちら)。こう考えてもいい。ボールが地面にぶつかってはね返る。この現象は簡単にシミュレーションできる。では巨大なスケールのシステムに含まれるすべての分子についてこの計算が必要だとしたらどうだろう? 気候シミュレーションとなれば各ノードの相互作用、重力、気圧、温度、地球の自転、その他あらゆる要素を考えねばならない。2つの恒星が衝突するしたら?

コンピューターの能力がアップすればシミュレーションはそれだけ正確になる。 Intelのプレスリリースによれば、「天文学上の巨大なスケールの現象をシミュレーションしたり、化学物質が個々の細胞に与える影響を再現することで新しい効果的な薬品を開発したりできる」ようになるという。

IntelによればAuroraはアメリカにおける最初のエクサスケールのシステムだという。ただし中国はすでに1年前からエクサスケールを目指して開発を始めていた。中国のスパコンは現在でも世界最速クラスであり、この目標が達成できないと考える理由はない。

アルゴンヌ国立研究所がこのシステムを使って何をするつもりなのか興味があるところだ。そこで同研究所のサイトで公表されている研究テーマ一覧ざっと眺めてみたが、「何もかもほとんどすべてのジャンル」という印象だった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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