AIを利用した教育プログラムを提供するatama plusは3月26日、DCMベンチャーズを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は5億円だ。これが同社にとって初めての外部調達となる。
同社が提供する「atama+(アタマプラス)」は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するサービスだ。例えば、数学の正弦定理が苦手な生徒がいたとする。その場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて力ずくで覚えるという学習方法が一般的だろう。でも、atama plus代表取締役の稲田大輔氏は、その方法はとても非効率だと話す。
正弦定理を理解するにはまず、平方根や三角形の内角など、より基礎的な要素を理解する必要がある。それを理解しないまま正弦定理の問題をただひたすら解くというのは非効率だ。一方、atama plusでは生徒の苦手分野を特定するためのオンラインのテストをさまざまな角度から出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成するのだ。
atama plusが追求するのは“学習の効率性”だ。解いても意味のない問題を解かせるのではなく、AIが特定した苦手な部分だけを集中して解かせる。「Googleで活躍できるような人材を育てるには、“基礎学力”とプレゼン力などの“社会で生きる力”をつける必要がある。そして、その社会で生きる力をつけるには、基礎学力の習得にかかる時間を短縮するしか方法がないと考えている」(稲田氏)
atama plusは、提携する塾に対して同サービスのライセンスを付与するというかたちでビジネスを展開している(ライセンス料は非公開)。2017年4月の創業から約11ヶ月が経過した現在、Z会エデュース、学研塾ホールディングス、駿台教育センターなど学習塾大手がatama+を活用した授業を行っているという。現時点での対応教科は、中高数学、高校英文法、高校の物理化学だ。
同社によれば、2017年12月末に行なったatama+の冬期講習(約2週間)を受講した25人の生徒が、受講前に解いたセンター試験過去問の得点と、2018年1月のセンター試験本番の得点を調べたところ、その得点の伸び率の平均は50.4%だったという。2週間という短期間でこれだけの成果をあげているのは、正直驚きだった。
稲田氏は「塾の先生の役割は2つある。学習を教える“Teaching”と、目標までの到達をサポートする“Coaching”だ」と話す。TeachingはAIの得意領域で、人間の先生は勝てない。でも、Coachingは人間の先生こそが得意とする分野なのだという。atama plusでは、ある生徒が問題を解くのに手間取っていたり集中力が落ちていることを問題を解く時間などからAIが判断し、タブレット端末を持った先生にアラートする。そして、先生がその生徒を手助けにいく。人間がCoachingするのをAIがサポートするのだ。
人に何かを教えるという役割は、もう人間の役割ではなくなったのかもしれない。