男女間の問題を、実際に顕在化する前にその芽を摘むために、問題が発生しそうなことを告げている生命徴候を検出する、という研究をサウスカロライナ大学の複数の研究チームが共同で進めている。被験者のカップルは複数種類のセンサーを収めたウェアラブル(上図)を身につけ、そのデータを記録するスマートフォンを与えられる。
その研究はほとんど研究室の外で行われ、協力者のカップルはそれぞれ1時間のアンケートにつき合って、相手に対する気持ちを述べる。研究者が意図的に論争を導入したり、主観的な事項に触れたりはしない。中にはまったく問題が報告されないカップルもいるが、全体としては大量の問題が検知される。なにしろ、男女のカップルだからね。
研究報告を共同執筆しているTheodora Chaspariは述べる: “ウェアラブルから生体信号を捉えるのは、肉眼では見えない情報を捉えるためだ。それは実際に、相当有益な情報源だった”。
そのウェアラブルが捕捉するのは、体温と心拍と発汗だ。これらに、喋りの(音声の)内容と強度を検出するためのオーディオ信号を組み合わせる。チームが開発した機械学習は、抗争のタイプや内容を86%の確度で判定できる、という。
執筆主任のAdela C. Timmonsは語る: “うちの大学では、心理学の家族研究と、工学部のSAILプロジェクトが長年コラボレーションしている。両者が協力して、われわれが収集した大量のデータを処理分析し、それらに機械学習の技術を適用して、カップル間に対立や抗争が生じつつあるかを、高い確度で判定する”。
研究の次のステップは、その機械学習のアルゴリズムを利用して、抗争の発生をその5分前までに予見できるためのモデルを作ることだ。そのモデルには、心理学的なデータと音声の判定を学習させる。今、商品としてのウェアラブルはかなり高度化しているから、商用製品に体のフィットネスだけでなく心の健康をチェックする機能が導入されたって、おかしくはない、と思ってしまった。
“でもこれは、とっても難しい仕事よ”、とChaspariは語る。“抗争や対立の原因や徴候は、心理学的にも行動科学的にも、微妙に徐々徐々に積み重なって大きくなっていくものだから”。