先週起きたアメリカ国内のドローン市場にとってのマイルストーンとなる出来事をうけ、米ドローンテック企業に対する投資への期待が業界内部で高まっている。しかし、実際に投資が加速するには少し時間がかかるかもしれない。
先日の記事で報じた通り、アメリカ合衆国運輸省(DOT)とアメリカ連邦航空局(FAA)はパート107(小型無人航空システムに関するルール)を施行し、ようやくドローン業界に関する規制がある程度明確化された。
パート107では、夜間の商業用ドローンの利用が認められていないほか、人の頭上や視界を超えたドローンの飛行は禁じられている。そのため、企業はビジネス目的で禁止項目にひっかかるようなドローンの利用を行う場合、その都度連邦当局から例外使用の許可を得なければならない。
DOTとFAAなどの関連省庁が、どれだけ速やかに例外使用申請に応じるかによって、パート107はドローンによる配達サービスや、報道目的でのドローン利用、夜間や人の多いエリアでの監視・調査目的のドローン利用の普及を遅らせてしまう恐れがある。
ワシントンD.C.にある法律事務所Hogan LovellsでGlobal UAS Practiceの共同議長を務め、Commercial Drone Allianceでは共同エグゼクティブ・ディレクターを務めるLisa Ellmanは以下のように語っている。
「もちろんシリコンバレーの動きは早いですし、関係当局は官僚らしいペースで動いています……それでも、FAAやDOTなどの組織は規制を草案する前に多くの情報が必要なため、その状況も理解できます」
次の段階として、ドローン技術やドローン関連サービスを提供している企業がもう一歩前進し、出しうる限りのデータを規制機関だけでなく一般にも公開することで、もっと一般の人にもドローンに秘められた利点について知ってもらいたいとEllmanは話す。
さらに彼女は、現状のパート107でさえ、ドローン業界(特にドローンテクノロジー教育や安全関連のテクノロジーの分野)でのさらなるイノベーションや、同業界への投資を促す力になると考えている。
ドローンテックベンチャーのFlirteyや、ドローン探知システムの開発を行うDeDroneに投資を行っているMenlo Venturesでマネージング・ディレクターを務めるVenky Ganesanもその意見に賛同している。「どの業界でもゲームのルールが明確化することで投資活動が盛り上がってきます。投資家がルールを理解することで、どのようにプレイしていくか決めることができるということです」
Ganesanは、バーティカル市場や産業用に特化したドローンテックスタートアップ・ドローンサービスへの投資が、パート107の直接的な影響で増加していくと考えている。
「朝目を覚まして、今日から仕事でドローンを使うぞと言う人なんかいませんよね。まず、企業はビジネス上の問題を解決したり、自分たちの農場やパイプラインの周辺で何が起きているのかを調べたりしたいと考えています。ドローンはそういった企業をサポートすることができる一方、利用者の多くはドローンサービスを提供する企業や専門家の力に頼らざるをえません」
長期的にみて、自動飛行や障害物回避といった遠隔操作システムを備えたドローンが、オペレーターの視界を超えて飛行することを規制団体が許可するようになれば、多額の資金がドローンテック企業に流れ込むとGanesanは予想する。
さらに彼は、まだドローンテック企業に目をつけていない企業は、ドローンテクノロジーが持つ長期的な影響をひどく過小評価しているかもしれないと考えている。
シリコンバレーで語り継がれる決まり文句として、「たいていの場合、新たな一大テクノロジーの短期的な影響は過大評価され、長期的な影響は過小評価される」というものがある。
以前ボーイングに航空エンジニアとして勤務しており、現在はSubtraction Capitalのジェネラル・パートナーを務めるPaul Willardは、「各企業がどうやって越えればいいかわかるくらいの高さのバーを設定する」ことこそ、アメリカをドローン業界のリーダーにする上で、規制機関がとれる最も重要なアクションだと語る。
さらに彼は、「アメリカが業界の最前線に立つには、まだまだハッキリさせていかなければならないことがたくさんあります。しかし、アメリカ以外の市場では、既に多くの企業が資金を調達しつつレースに参加し始めています」と付け加えた。なお、Subtraction Capitalは、ルワンダで医療品配達用のドローンサービスをローンチしようとしているZiplineに対して投資を行っている。
また、Willardはドローンテック市場を医療機器や医薬業界になぞらえている。
医療機器や新薬は、しばしばアメリカ以外の地域で研究・販売されており、しばらくしてから多額の資金を投資ラウンドで調達し、アメリカの厳しい規制に対応するという動きをとっている。
スタートアップのファウンダーや、ドローンテックの投資家の中には、商業用ドローンに関する規制の下で、そのようなテック企業が特例許可をとる必要がでてくると、気付かないうちにドローン界の勝ち組に利益をもたらし、許可をとるのが遅れたり、そもそも許可がとれなかった他の企業にとっての障壁を生み出すことにつながりかねないと心配している人もいる。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)