米司法省が元VCのマイク・ローテンバーグ氏を起訴、長期懲役の可能性

シリコンバレーの多くの人が投資家であるMike Rothenberg(マイク・ローゼンバーグ)氏を忘れたがっているかもしれない。彼のベンチャー企業が破綻に向かい始めて4年経つ(未訳記事)が物語はまだ続いていて、最終章は36才のローゼンバーグ氏にとって良い兆しはない。

ローゼンバーグ氏はまず米証券取引委員会と争って敗れたが、それは民事で、彼の残りの人生に付きまとうかもしれないというものだった。

そして現在、米司法省が同氏を2つの通信詐欺の疑いで起訴した(米司法省リリース)。銀行への虚偽申告2件とマネーロンダリングだ。今後の展開次第では、長期の懲役となる可能性がある。

では、どのくらいの刑期となるのか。司法省は銀行詐欺容疑2件、銀行への虚偽申告2件は「それぞれ最長30年の懲役、仮釈放は5年以下、罰金100万ドル(約1億800万円)」となり、マネーロンダリングは「10年以下の懲役、仮釈放は3年以下、罰金は違法に得た派生資産総額の2倍以下」という。

しばらくの間、業界の専門家にも大まかにしか把握されていなかったが、ローゼンバーグ氏が短いベンチャーキャリアの中で発生させた損害はかなり衝撃的だ。司法省が調査で明らかにしたところでは、同氏は自身の会社Rothenberg Ventures(ローゼンバーグ・ベンチャーズ)を興した2012年から2016年にかけて4つのファンドを立ち上げたが、同氏の犯罪行為は立ち上げ後すぐに始まった。

司法省の起訴状によると、最初のファンドをクローズ後、ローゼンバーグ氏は資産に関して銀行に虚偽報告をして自身の資金を2つの目のファンドに部分的に投入した。彼は住宅ローンを借り換え、30万ドル(約3200万円)の個人ローンを組み、これらの一部をファンドに注いだ。

これは銀行詐欺だ。だが司法省によると、これは手始めに過ぎなかった。

翌年2015年に同氏は「出資を募って管理していたファンドの1つからのベンチャーキャピタル手数料を過剰に取った」。というのも「年末に資金が尽きそうな事態となり、それを投資家らに報告したくなかったから」だ。彼は違法の応急措置を取った。中でも司法省は、同氏が「過剰な手数料を取ったファンドにその分を戻そうと、400万ドル(約4億3000万円)という最大貸付額を手に入れるために、虚偽報告と不正確な説明をすることで銀行から搾取した」と主張している。

つまり「ファンドがうまく運用されていると投資家に思わせるための行為」で、明らかにその当時は狙い通りにいっていた、と司法省は指摘している。

もちろん現実には、ローゼンバーグ氏はさらに大きな墓穴を掘っていた、と司法省は見ている。ただ、表面的には同氏はうまくやっているように見えた。司法省の調査によると、2016年2月に同氏は「自信が所有していると主張したバーチャルリアリティのコンテンツ制作会社River Studiosの事業に200万ドル(約2億2000万円)投資すると投資家を欺いた」。

しかし、同氏はその資金の大半をRiver Studiosとはまったく関係のないところで使用した、と司法省は指摘している。

調査では、ローゼンバーグ氏はまた後先を考えずに行動するようになった。おそらくこれは彼が罰せられることなくやりおおせると考えたからかもしれないし、あるいは徐々にやけになったからかもしれない。

その後、最初の投資家を欺いてから5カ月後の2016年7月に、ローゼンバーグ氏は別の5人の投資家を欺いたと起訴状にはある。非上場のソフトウェア企業の未公開株に投資するという名目で投資家らに計135万ドル(約1億5000万円)を振り込ませた。ローゼンバーグ氏は「その資金がソフトウェア企業の株を購入するのに使われると組織に説明することで投資家を騙すことになる」ことは承知の上だった、と訴状にはある。訴状によると、資金が振り込まれたその日のうちに同氏は資金を投資目的の銀行口座から引き出し、多くの用途で使われていたRVMCのメーン銀行口座に移した」。

司法省の調査では、ソフトウェア企業の株はまったく購入されなかった。ローゼンバーグ氏はまた「投資資金を『未開拓の最先端』テクノロジーに使い、ファンド管理費はわずかなものにするとうたってファンドへの出資を勧誘した」としている。だが「示した以上の管理費を取り、同氏は投資家との業務委託契約で示したものよりもはるかに少ない額しか投資しなかった」。

司法省は、ローゼンバーグ氏が少なくとも計1880万ドル(約20億2000万円)を不正に入手したという証拠を手に入れた、としている。

TechCrunchは、これまで一貫して不正を否定しているローゼンバーグ氏にコメントを求めている。いずれにせよ、同氏がこのところ直面している悪いニュースはこれだけではない。

2020年1月、自社のファンドから数百万ドル(数億円)を着服し、その金を個人の事業を継続させるために使用したとSEC(米証券取引員会)に起訴された件で、ローゼンバーグ氏は3100万ドル(約33億円)の罰金が科せられた(未訳記事)。

同氏はまた2018年10月に、5年後に復帰を申し込むことができる権利付きで証券業界から離れることに同意した(米証券取引委員会リリース)。

これまでの展開は、思い上がりとその帰結のほぼ信じ難いような話だ。ローゼンバーグ氏は27才で華々しくベンチャー界に登場し、TechCrunchでも2013年初めに彼のコネクションや若さが年季の入ったVCよりもアドバンテージになっていると取り上げた(未訳記事)。

2年後、BusinessWeekは彼にシリコンバレーの「パーティー・アニマル」というあだ名をつけた(Bloomberg記事)。彼の会社がベイエリアで「起業家を対象にした派手なパーティー」で有名になったからだ。サンフランシスコにある野球場のオラクル・パーク(当時はAT&Tパークという名称だった)での高価なパーティーもあった。ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得する前はスタンフォード大学に通った、自称前数学オリンピック選手のローゼンバーグ氏は当時「我々は多くのイベントを開催することでスケーラブルなネットワークを構築した」と話していた。

そのパーティーがどのように報われたのかという質問を彼は退けたようだが、Robinhoodに初期投資をしたことをBusinessWeekに明らかにした。Robinhoodは株取引アプリで、最近の企業価値は76億ドル(約8170億円)だ。同社の共同創業者兼CEOはローゼンバーグ氏と同じ時期にスタンフォード大学に通っていた。

要するに、幸先の良いスタートだった。ただ悲しいかな、ローゼンバーグ氏の会社の従業員は四方八方に散り、2016年夏には捜査当局も注目し始めていた。

画像クレジット:Max Morse / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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