米国人は結局ビッグテックはそれほど悪くないと考えている

政府内でBig Tech(ビッグテック、大手テクノロジー企業)の解体について党派を超えて意見が一致することはめったにない。

16カ月の調査を終え、民主党が支配する下院委員会は最近、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)を競争と革新を吹き消す独占企業として特定し、ビッグ4を19世紀後半の石油王や鉄道王と同一視した。

わずか数日後、トランプ政権はGoogleを訴えた。「違法な独占の維持」(米司法省声明)を阻止するため、解体の可能性も視野に入れて裁判所命令を求めている。

そして12月9日、青い州と赤い州の48人の弁護士と連邦取引委員会はいずれも、Instagram(インスタグラム)とWhatsApp(ワッツアップ)による「略奪的」で「違法」な買収の取り消しへFacebookを訴えた。次期大統領ジョー・バイデン氏が来月就任した後は、同政権がGoogleとFacebook両社に対する連邦反トラスト訴訟を進めることが広く期待されている(未訳記事)。

両党は、ビッグテックは我々に利益があるとはいえ大きくなりすぎたという点で一致している。

典型的な米国人はビックテックをいつも同じように見ているわけではない。米国人の評価は、問題をどの観点から見るかによって変化する。

ハリス世論調査の、Amazon、Apple、Facebook、Googleは競争と革新を制限する独占企業だと思うかとストレートな質問に対し、米国の成人は下院司法委員会の調査結果に圧倒的な賛意を示した。また、ほとんどの人はGoogleを解体すべきだと言い、Facebookを解体することもイノベーションを促進し消費者を保護すると答えている。「奴らを捕まえろ」と応援しているように見える。

だが、ビッグ4がリードするデジタルサービスのカテゴリー(ウェブ検索、eコマース、ストリーミングサービス、ソーシャルメディア)について広く質問する(The Harris Poll Solu記事)と、圧倒的な数の米国人が自身のお気に入りのプロバイダーはまったく独占企業ではないと回答する。

ほとんどの米国人の目には、デジタル市場全体に豊富な競争と選択肢があると映る。ビッグテック(big tech)と小文字で見せられた場合、大多数はそれがイノベーションを促進し、世界の中で国家の地位を高めると言う。言い換えれば「Big」が自動的に「悪い」を意味するわけではない。

もちろんほとんどの米国人は、独占企業を探し出し市場への影響を定量化するマクロ経済学者や独禁法の弁護士ではない。米国人はビッグテックを主に消費者の視点から見ている。法廷で説明できるデータではなく自分の経験や感情に基づいて判断している。我々の研究によると、米国人は消費者の視点では一般的にテクノロジーをポジティブなものと見ている。

米国の2069人の代表的な成人を対象とした調査では、ほぼ3分の2が、毎日Googleなどの検索エンジンを使用し、Facebookなどのソーシャルメディアにアクセスしていると答えた。ほぼ半数が少なくとも週に1回、Amazonまたは他のオンライン店舗で買い物をし、3分の2がGoogleのYouTube、Apple TV+、Amazon Prime Videoなどのアプリで動画をストリーミングしている。

新型コロナウイルスのパンデミックは彼らの忠誠心を高めただけだ。閉じ込められた毎日を送る中で、例えば米国の成人の半数は1年前よりも多くの動画をストリーミングし、3分の1はオンラインで買い物をしていると回答した。消費者がビッグテックにひどい扱いを受けていると感じているとしても、そして実際、半数以上がビッグテックは常に顧客に対し正しいことをしているとは限らないと回答しているものの、消費者は手当たり次第クリックするほど怒ってはいないということだ。

米国の消費者は選択肢のない捕虜のように感じてもいない。モバイルデバイスでのインターネット検索におけるGoogleの市場シェアはstatistaデータ)は94%であり、これはおそらく誰が定義しても独占だ。米国人の55%は、Googleの力が強すぎるためYouTubeとGmailから切り離すことに賛成しているが、5人中4人は適切な代替手段があると述べている。

実際、調査において検索エンジンの選択肢が多すぎる(19%)と答えた人は、少なすぎる(11%)のほぼ2倍だ。米国人は、ソーシャルメディア、ビデオとオーディオストリーミング、eコマース、Apple PayやGoogle Payなどの他のデジタルサービスの市場にも同様に競争が存在すると判断している。

その市場での優位性にもかかわらず、米国の消費者はビッグテックがライバルを害しているとは考えていない。米国人の4分の3はAmazon、Apple、Google、Facebookを独占企業と見ているが、5人中4人はテクノロジーの巨人が業界のイノベーションを促進し、3分の2はそうした企業が競争を促進し米国の世界的な評判を高めていると回答している。

大卒者と45歳以上では、ビッグテックをイノベーションと競争の推進力と見る傾向がわずかに高くなるが、すべてのグループで同じような見方がみられる。

筆者はマクロ経済学者でも独占禁止法の弁護士でもないため、ビッグテックに対する超党派の合法的十字軍が正当化されるかどうかについて発言する立場にはない。だが、議会や規制当局がビッグテックによる支配を減らすために裁判や他の措置に訴えようとしている今、我々の調査に基づき、米司法省のGoogleに対する独禁法訴訟に米国人がどう反応するのかついて洞察を提供することはできる。

米国人の個々の企業に対する狭い見方を、消費者が日々過ごすデジタル領域に対する彼らの認識から切り離すと、連邦政府がビッグテックを吹き飛ばしてしまう理由がほとんどわからなくなる。我々の世論調査におけるもう1つの注意すべき発見事項は、企業が大きすぎるかどうかを判断する適切なグループが規制当局や議員だと考えているのは、米国の代表的な成人のほぼ半分にすぎないということだ。

ただし、それらの企業が最終的に縮小されるとしても、信頼できるアプリ、検索エンジン、ショッピングサイト、ストリーミングサービス、ソーシャルメディアサイトが自由に、そして心理的に十分に利用できるなら、一般的な米国の消費者は結果として生じる「それほど大きくないビッグテック」について悲しいと思うことはないと考えられる。

【編集部注】著者のWill Johnson(ウィル・ジョンソン)氏は、世界有数の世論調査会社の1つであるThe Harris Poll(ハリス世論調査)のCEO。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Google、Apple、Aamzon、Facebook

画像クレジット:Maskot / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。