米国証券取引委員会、公開企業が社名に「ブロックチェーン」を付加する行為に警告

誰もが知っているように、仮想通貨とブロックチェーン関連技術の騒動に乗じようと個人投資家も機関投資家も群がっている。

しかし困ったことがある。投資先をSEC認可のETFやNASDAQかNYSEに上場されている企業に限定すると、仮想通貨や仮想通貨企業に直接投資することはほぼ不可能だ。そのためこの需要供給の不均衡を活用しようと、小型株の公開企業は、「ピボット」と呼ばれる事業転換や、単に社名をcryptoに関連のあるものに変えるだけ、といった行動にでている。そして、事情をよく知らずに仮想通貨騒動のおこぼれを頂戴したいだけの個人投資家の中には、この手の企業の株を本物だと思って買う人もいる。

そこで数日前SEC(証券取引委員会)のジェイ・クレイトン委員長は、証券規制協会のスピーチで、この手の会社に警告を与えた

次の話題に移る前に、もうひとつ分散型台帳、あるいは「ブロックチェーン」関連の細かい法律問題をある仮説にもとづいて取り上げたい。みなさんの中に次のような行為が許されると思っている人はいないだろう。分散型台帳あるいはブロックチェーン技術に関するまともな実績のない公開企業が、(1)ブロックチェーン事業のまねごとを始める、(2)社名を”Blockchin-R-Us”などに変える、あるいは(3)伴うリスクや変更について個人投資家向けに適切な情報開示をすることなく証券を発行する、などだ。SECはビジネスモデルを転換して有望と目される分散型台帳技術を利用しようとする公開企業の情報開示が証券法に則っているかどうかを、特に証券発行について注意深く監視している。

クレイトン委員長はどのようなことを言っているのだろうか?

たとえば、Long Islan Iced Teaという飲料品会社が社名をLong Blockchain Inc.に変えたところ1日で株価が500%上がったというのはどうだろう。あるいは KodakがICO(新規仮想通貨公開)すると発表したら株価が3倍になった話。さらには仮想通貨少額融資スタートアップ(実際に仮想通貨ベースの融資をしたことはない)を買収したら小型株が2000%高になり、しかもそのスタートアップの95%を買収会社のCEOが保有していたという例。

公開企業が急に社名を変えたり、仮想通貨やブロックチェーンの騒動に乗じようと事業戦略そのものを変えることに対して、今後SECが強硬なスタンスを取ることが予想される。これは大変良いことだ。多くの個人投資家は、仮想通貨の何が正当な技術なのか、なぜ社名を変えただけの会社の株価が急騰するのかについて十分な知識を持っていない。そして、こうした詐欺行為がなくなるのが早ければ早いほど、仮想通貨や他の有望なブロックチェーン技術に個人投資家が直接投資できる場を、SECを始めとする規制当局が認める時期も早まるだろう。

情報開示:筆者は少額の仮想通貨を複数種類保有している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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