米国の安全監督機関は、タッチスクリーンの操作を不能にする恐れのあるメディアコントロールユニット(MCU)の欠陥を理由に、15万8000台の車両のリコールをTesla(テスラ)に要請した。この欠陥は、米幹線道路交通安全局(NHTSA)の数カ月間にわたって調査によって判明した。
同局の欠陥調査室は、MCUの欠陥は後方カメラ、曇りとり、霜とりなど機能の設定操作を不能にしたり、さらには信号インジケーターを有効にしたときや高度運転支援システム「オートパイロット」を起動したときにドライバーに音で知らせるチャイムを止めてしまう可能性があるため、安全上の問題と判断した。MCUが突然故障することは、Teslaフォーラムでも長年の話題になっていた。
欠陥の原因は、クルマに搭載されているフラッシュドライブのメモリーストレージがいっぱいになるためだと調査員は結論づけている。唯一の解決策は、その部品を物理的に交換することしかない。対象となるのは、2021年から2018年の間に生産されたModel Sセダンと、2016年から2018年の間に生産されたModel X SUVだ。
Teslaにコメントを求めたが、まだ返事はない。だが同社は、報告にあった情報をNHTSAに提出している。すべてのユニットはメモリー装置の容量が限られているため、この問題は避けられないとTeslaはNHTSAに対して認めている。Teslaは、2020年から2028年にかけて行うMCU交換の週あたりの予測数を示す独自の統計モデルを提出した。報告によれば同社は、欠陥のあるMCUの交換率は2022年初頭にピークに達し、2028年に完全に交換が完了するまでの間に次第に低下してゆくと見積もっている。
対象車両にはNVIDIA Tegra 3プロセッサが搭載されており、そこに8GBのeMMC NANDフラッシュメモリー装置が組み込まれている。この8GBのメモリーの一部が、車両を発進させるごとに消費される。eMMC NANDのメモリーセルは、ストレージの容量がいっぱいになると正常に機能しなくなり、マイクロコントローラーユニットの欠陥を引き起こすとNHTSAは話している。
このeMMC NANDフラッシュメモリーの寿命は、書き込みと消去の回数(P/Eサイクル)によって決まる。寿命に達した後は、メモリー不足でMCUは異常をきたす。調査員たちは、この8GB eMMC NANDフラッシュメモリー装置の予想寿命は、P/Eサイクル3000回と判断した。その後は、eMMC NANDフラッシュメモリーがいっぱいになり、機能しなくなる。1日あたりの使用率は1ブロックあたり1.4回。それが積み重なり、わずか5〜6年でP/Eサイクル3000回に到達するとNHTSAはいう。
同局は、Teslaにリコールを開始し、該当車両のすべてのオーナー、購入者、ディーラーに安全上の欠陥がある旨を通知し、部品交換を行うよう公式に通達した。
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(翻訳:金井哲夫)