米食品医薬品局が臨床試験で死亡例が続いた抗マラリア薬の緊急使用許可を撤回

米国食品医薬品局(FDA)は、クロロキンとヒドロキシクロロキンに対して出していた緊急使用許可(EUA)を撤回したとThe Washington Postが報じている。いずれも抗マラリア薬で慢性関節リウマチの治療にも用いられている。この薬品はDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領が新型コロナウイルス(COVID-19)の治療に効果があると発言していることでよく知られているが、現在進行中の世界的なパンデミックを起こしている感染症に対する効果の可能性を示した初期の医学研究結果は、科学的正当性に乏しく重大な懸念が指摘されている。

その後の研究では相反する結果が出ており、ある研究チームは、多数の死者が出たためにこの薬剤の臨床試験を中止した。2020年3月下旬にFDAは、クロロキンとヒドロキシクロロキンの使用に対してEUAを発行したが、有効性と安全性に関する検証結果が実にさまざまであることから医学界、薬学界による強い批判を呼んだ。その後の臨床試験で死亡例が続いたことを受け、FDAは同薬品の使用に関する警告の声明を発表した。

FDAは、同局の完全かつ厳格な承認プロセスを経ていない治療法や機器の使用を迅速化することがリスクを上回る、と判断した場合にEUAを与える。新型コロナパンデミックによって、FDAは通常よりも多くのEUAを発行しており、中でもその発症原因である新型コロナウイルスによる感染を診断する検査機器に対しては特に多い。

トランプ大統領はクロロキンとヒドロキシクロロキンの効果を無責任に吹聴した挙げ句、感染を免れると誤って信じている予防手段として自分自身でこの薬品を服用し始めた。同薬品の供給は、高まる需要によって強い圧迫を受け、紅斑性狼瘡や慢性関節リウマチなど、承認済みでその効果が臨床的に実証されている疾病のために必要としている人びとが、悲惨な状況に直面する恐れを生んでいる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook