米食品医薬品局は新型コロナに対する認可前の検査方法を許可

FDA(米国食品医薬品局)は米国時間2月29日、全国の有力な大学病院や医療施設で、新しい診断技術を使った新型コロナウイルス(COVID-19)の検査を許可することになると発表した。

このFDAの新たな取り組みは、「さまざまな米国内の政府機関が、新型コロナウイルスが米国内で流行する危険に対してなんら効果的な対策を取っていない」という批評家による非難を受けてのもの。昨年12月上旬に中国の武漢で最初の症例が報告されて以来、潜在的なリスクが認識されていたにもかかわらず、準備ができていないという批判だった。

この新型ウイルスへの感染が、いよいよ米国内でも確認された状況の中、CDC(米国疾病対策予防センター)は、これまでわずか459件の検査しか実施していなかった。一方中国では、1か月前から新型コロナウイルスに対して、5種類の民間による検査が市場に登場し、すでに週に最大160万件の検査の実施が可能となっている。Science Magazineのレポートによると、韓国でもこれまでに6万5000人の検査が実施されたという。米国内での最初の検査は、欠陥のある試薬を含む検査キットが配布されたことで、キットそのものが役に立たなくなり機能しなかった。

ウイルス流行の可能性への対応を誤っているとして非難されているのはCDCだけではない。ワシントンポスト紙の記事によると、米国時間2月27日には、米保健福祉省に対して内部告発者による不平が提起された。それによると、同省は十数人の職員を十分な訓練と装備もなく、武漢に派遣して米国人の救出に当たらせたという。

そしてFDAは、米国内の研究センターに対して、まだ承認されていない新しい技術を利用することを認めることにした。全国の医療機関が実施できる検査数を緊急に劇的に増加させるためだ。

「この施策が、今回の公衆衛生上の緊急事態にあって、適切なバランスをとったものになると信じています」と、FDA長官のStephen M. Hahn(ステファン・M・ハーン)博士は、声明で述べている。「私たちは、臨床試験に先立って科学的なものであることを保証し、FDAから独立した批判的な見解にも耳を傾けていきます。これも、米国内の検査能力を急速に拡大するためです。EUA(緊急使用許可)を認可する基準は変更していません。今回の措置は、重大な公衆衛生のニーズに対して、動的に変貌する状況に迅速に対応し、適応するという私たちの公衆衛生に対するコミットメントを反映したものです」。

新しいポリシーにより、研究機関からのEUAリクエストに対する審査をFDAが完了する前に、同機関は検証されたCOVID-19診断の使用を開始できるようになると、FDAは声明で明らかにした。

HHS(米国保健社会福祉省)が、公衆衛生上の緊急事態、あるいはそうした事態が発生する重大な可能性を認めた際には、FDAはEUAを発行して医薬品の使用を許可し、病気の診断、治療、または予防に当たることができる。HHSの長官は、COVID-19コロナウイルスの流行は、まさにそのような緊急事態であると、2月4日に判断していた。

これまでのところFDAは、COVID-19に対する1つのEUAを認可し、すでにCDCや他の公衆衛生の研究施設で使用されていると、FDAは明らかにしている。

「世界的にCOVID-19が発生していることは懸念事項であり、米国内での検査能力を向上させる、今回のFDAの取り組みに感謝します」と、CDCの国立免疫及び呼吸器疾病センター(NCIRD)のセンター長であるNancy Messonnier(ナンシー・メソニエ)博士は述べた。

新しい診断検査法の開発は、BARDA(Biomedical Advanced Research and Development Authority=生物医学先端研究開発機関)によって管轄されている。これは、HHSオフィスの一部門であり、健康問題に対する準備と対応を担当している。

「このステップは、開発コストを削減し、より多くの検査機関で利用できるようにするためのプロセスを高速化し、民間での開発を促進する可能性があります。そして最終的には、人名の救助に貢献するでしょう」と、BARDAのRick Bright(ディレクター、リック・ブライト)氏は述べた。

カリフォルニア州レッドウッドに本拠を置くゲノムシーケンシング用デバイスメーカーのGenapsysのようなスタートアップや、ソルトレイクシティにある分子診断学のスタートアップ、Co-Diagnosticsは、それぞれすでに中国政府と欧州の検査機関からアプローチを受けている。

米国では、多くの大規模な上場企業やスタートアップが、新型コロナウイルスを検出するために利用可能な新しい診断ツールの開発に取り組んでいる。

「BARDAでは、この業界のパートナーを選定して迅速な診断方法を開発し、民間や病院の研究室、さらには開業医の診療所でも利用できるようにするつもりです。それにより、医療従事者とその患者が、行動を起こすために必要な情報を得られるようにします」とブライト氏は述べた。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

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TechCrunch Japan

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