米YouTubeが無料で広告付きテレビ番組を配信へ

米YouTube(ユーチューブ)は米国時間3月23日、広告付きのテレビ番組を初めて無料で配信することを発表した。これはTubi、Pluto TV、The Roku Channel、IMDb TV、Xumo、Plex、NBCUのPeacockなど、市場で増え続ける無料ストリーミングサービスとの直接対決を可能にする動きとなる。同社によると、まず米国のユーザーに対して、「ヘルズ・キッチン〜地獄の厨房」、「アンドロメダ」「ハートランド物語」などの番組から4000以上のテレビエピソードを無料で提供する予定だそうだ。今後は、番組や映画を含め、毎週最大100本の作品を無料ストリーミングに追加していく予定だ。

YouTubeはすでに広告付きの無料映画を多数配信しているため、今回の無料テレビ配信開始は、同社にとってまったく新しい試みというよりも、既存の無料ストリーミングの取り組みを拡張するものといえるだろう。

現在YouTubeでは、Disney Media & Entertainment Distribution(ディズニー・メディア&エンタテインメント・ディストリビューション)、Warner Bros.(ワーナー・ブラザーズ), Paramount Pictures(パラマウント・ピクチャーズ)、Lionsgate(Lionsgate)、FilmRise(フィルムライズ)などの企業が提供する1500本以上の映画を配信している。例えば2022年3月には、「60セカンズ」、「プリティ・ブライド」、「キューティ・ブロンド」などの映画が新たに追加されている。

しかし、広告付きと定額制の両方を含む広範なストリーミング業界は、映画ではなくテレビに引き寄せられる傾向がある。以前の時代であれば、映画か、少なくともミニシリーズになっていたであろう、新しいオリジナルプロジェクトが、今ではしばしば一気見ができるテレビ番組としてリリースされている。プラットフォームメーカーもこの傾向を好ましく思っている。ユーザーが自社サービス上でコンテンツを視聴する時間が増えていることを意味するからだ。才能と資金も長い間これに続いており、テレビシリーズは、過去数年間ハリウッド映画にしか与えられなかった批評家の注目と称賛の両方を獲得している。

画像クレジット:YouTube

一方、無料のテレビストリーミングは、ストリーミング市場全体の成長の大部分を牽引している。

Kantar(カンター)のデータによると、米国の85%の世帯がなんらかの動画契約を結んでいるが、四半期ごとの成長は主に無料の広告付きテレビと広告付きビデオオンデマンドサービスからもたらされている。2021年第4四半期時点で、米国世帯の18%が少なくとも1つの無料広告付きテレビサービスを利用しており、この数字は前年度第4四半期から2倍以上に増加している。Kantarによると、最終四半期の新規ユーザーのほとんどは、Peacock、IMDb TV、Tubi、The Roku Channelのアカウントにサインアップした人たちだったそうだ。

一方、YouTubeは、無料テレビとまではいかないまでも、米国でかなりのコネクテッドテレビの足跡を残している。Nielsen(ニールセン)のデータによると、2021年12月にYouTubeは米国のコネクテッドテレビで1億3500万人以上にリーチしているとのことだ。しかし、ユーザーがYouTubeでテレビ番組を検索すると、当該タイトルをレンタルするか購入するように誘導され、無料ストリーミングは選択肢になかった。

それが、無料テレビサービスの開始で変わることになる。YouTubeによると、新しいナビゲーションと没入感のあるバナーアートを導入し、ユーザーが視聴方法を選択しやすくするとのことだ。従来通りレンタルまたは購入するか、もしくは可能な場合は、広告付きの無料で視聴することができるようになる。一方、CMは視聴者や番組を見ている状況によって頻度が変わるとYouTubeは述べている。広告のほとんどは、YouTube Selectプログラムを通じて販売される。

ひと握りの有名番組以外にも、無料で視聴できる番組の多くは、「パパは何でも知っている」、「未解決ストーリー」、「21ジャンプストリート」、「キャロル・バーネット」、「ザ ガール 」、「パトカー54 / 応答せよ!」、「ローン・レンジャー」、「ホパロング・キャシディ」、「Laugh-In」、「The Dick Van Dyke Show」などの古いシリーズだ。無料番組の多くは、たとえシリーズが長く続いたとしても、1シーズンか2シーズンしか提供されていない。このライブラリによって、YouTubeがすぐに無料のテレビ番組のトップデスティネーションになるわけではないが、YouTubeの常連ユーザーにとっては、退屈な時間を緩和するのに役立つかもしれない。

また、YouTubeは、多くの無料テレビ番組が、対応するデバイスで5.1サラウンドサウンド音声付きの高解像度1080pで視聴できることにも言及している。

これらの番組は、米国のユーザーが本日からウェブブラウザ、モバイルデバイス、YouTube TVアプリを介したコネクテッドテレビで視聴できるようになる予定だ。

画像クレジット:YouTube

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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