美容医療の口コミアプリ「トリビュー」を運営するトリビューは8月8日、W Ventures、ニッセイ・キャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫からの融資を合わせ、総額3.5億円の資金調達を実施したと発表した。
プチ整形にリピート……変わる美容医療
トリビューは健康保険適用外の美容外科、美容皮膚科、矯正歯科を対象にした、美容医療の口コミ・予約アプリ。ユーザーによる15万枚以上のビフォー/アフターを含む経過画像と7000件以上の体験談投稿を集めており、施術価格や施術する箇所、クリニックのエリア、満足度によって、クリニックやドクターが比較できる、いわば「美容クリニック版の食べログ」のようなサービスだ。2017年10月のリリースからの累計ダウンロード数は15万件を超えている。
リリース時には口コミ機能を中心としたコミュニティの要素が強かったトリビューだが、その後、情報収集や比較に加えて、クリニックの予約申し込みができるサービスにアップデート。カウンセリング予約はチャット形式で行える。また希望する状態の写真をアプリ内のメモに保存しておき、カウンセリング時にドクターとやり取りをスムーズに行うための機能も追加された。
ひとくちに二重といっても、幅をハッキリ出したいのか、控えめにしてナチュラルにしたいのかで施術も変わる。施術内容によって術後どれくらい腫れるのか、程度や期間も違うので、社会人なら休暇を取れる期間を合わせる必要も出てくる。トリビューでは、体験談と投稿写真で具体的な施術のイメージがつかめる点と、希望する状態を客観的にクリニックに伝えられる点が、特徴となっている。
口コミ投稿時には、パーツや施術内容など、細かな条件(約120種類)をひも付けられるように設計されており、情報を検索するユーザーのための網羅性が担保されている。また、会員登録時にも興味のある施術などをアンケートし、ユーザーごとにトップ画面の表示を変更しているそうだ。
トリビュー代表取締役の毛迪(モウ・デイ)氏は、美容医療を受けようとする人たちの情報へのアクセス方法が近年変化していると話す。「以前はSNSアカウントで『整形』タグを追うのが主流だった。最近はボトックスやヒアルロン酸注射など、『プチ整形』とも言われるライトな施術が増えている。こうした施術を選ぶ人たちの中には『整形』という言葉に抵抗があるユーザーも多くなった。施術件数も増えていて、エステとの境界がぼやけてきている。隆鼻術や目頭切開術などの大きな外科手術は基本1回きりのものだが、今は軽い施術をリピートする、身近なものに美容医療が変わってきている」(毛氏)
「なりたいスタイルが伝わる」美容医療を目指して
日本国内の美容医療市場は、美容外科・美容皮膚科を合わせて約4000億円、審美歯科が約3500億円で合計すると7500億円規模となっており、そのうち20〜30%が広告市場が占める。1件の施術の平均価格は20〜30万円。ただしリスティング広告の落札価格は高騰しており、施術に至る前の予約までの案件獲得でも2〜3万円の出稿費がかかるという。
またユーザーの側から見ると、サイト検索の結果表示にはアフィリエイトサイトなどが多く、怪しいイメージが美容整形にはある。クリニック側も広告では薬機法などによる規制があり、具体的な効果はうたえない。結果として、ユーザーが自分に合ったクリニックやドクター、施術を見つけにくい状況になっている。
トリビューのビジネスモデルは、美容医療を受けたいユーザーとクリニックのマッチングだ。また最近では、クリニック探しからさらに踏み込んで、自分に合ったドクターを探す動きがスタンダードになってきていると毛氏はいう。
「美容医療ではドクターのセンスも問われるし、好みの顔のスタイルというものもある。ヘアサロンでも、相性のよい美容師を指名したり、カリスマ美容師がいたりするが、同じように美容医療の世界にも、相性のよいドクターやカリスマドクターが存在する」(毛氏)
トリビューではドクターごとに施術の体験談が見られるほか、クリニックの予約時に備考欄でドクターを指名するユーザーもいるという。自身も美容医療を10代から利用してきた毛氏は「整形を成功させるためには、情報収集とドクターとのマッチングがカギになる」と話す。
「整形の失敗はミスコミュニケーションから起こる。髪型と同じでユーザーが『思っていたのと違う』と不満に思ったとしても、ドクターの側からすれば『手術はちゃんとやった』となることも多い。これはお互いにとってもったいない、不幸なことだ。美容院へヘアカタログを持っていった客が気に入った髪型をオーダーし、美容師の側は客の髪質などから『その通りにはできないけれど』と違うスタイルを提案するのと同じように、カウンセリングでなりたいスタイルが伝わるフォーマットも提供していきたいと考えている」(毛氏)
毛氏は「コミュニティ機能からスタートしているが、ユーザーに寄り添って施術の成功に導くアプリ、サービスを目指す」と語る。また美容整形にまつわる怪しいイメージを取り除くべく、「パブリックカンパニーとして、きちんとした情報を提供していく」と話している。
トリビューのユーザーはほぼ女性で20代が中心、半数は整形の経験があるという。「会員の平均施術単価は28.5万円と高めで、中には韓国で手術を受けるユーザーも。熱量のあるユーザーが多い」と毛氏はいう。
競合サービスには「Lucmo(ルクモ)」や「Meily(メイリー)」などがあるが、毛氏は「トリビューでは口コミ機能に加えて、情報の網羅性を重視していく」と述べ、「他社も含めて情報を得られるアプリが広まっていることはいいこと。かつては怪しまれていた美容医療の世界も、インスタグラムなどで施術を公言する投稿が当たり前になってきている。そうした中でもリードカンパニーになれるよう、がんばりたい」と語っている。
中国や韓国では、日本よりかなり早い2011年ごろから美容医療関連のアプリが出回っている。例えばテンセントが出資する美容整形アプリの「SoYoung(新氧)」では、コミュニティ、マッチングに加えて、施術資金を融資するローンや、保険などの金融サービスも展開する。
トリビューでも「ユーザー向けには口コミ、マッチング・予約機能に加えて、ローンや保険サービスの提供も進めていきたい」と毛氏はいう。また、クリニック向けには集客のほか、クリニックが得意分野を伝えるブランディング機能やCRM機能も提供していきたいとのこと。美容医療関連のサービスを多角的にそろえた上で、2020年末をめどに累計会員数100万人、契約クリニック数1000院到達を、そして2022年までのIPOを目指す。
2017年7月に創業したトリビューは、今回が3回目の資金調達となる。同社が調達した金額の累計は約4.5億円となる。今回の調達資金はクリニックへの拡販やユーザー向けプロモーションの強化、コンテンツ強化に充てるという。