自動運転開発AuroraがSPAC合併で上場へ、評価額は約1.4兆円

2020年12月にUber(ウーバー)の自動運転部門を買収した自動運転車両スタートアップのAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は特別買収目的会社(SPAC)であるReinvent Technology Partners Yとの合併を通じて上場する。

米国時間7月15日に発表されたこの取引は、LinkedIn共同創業者Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏とZynga創業者Mark Pincus(マーク・ピンカス)氏、マネージングパートナーのMichael Thompson(マイケル・トンプソン)氏によって立ち上げられたSPACとAuroraが最終的な協議を行っているという6月のTechCrunchの報道のとおりだ

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NASDAQにティッカーシンボル「AUR」で上場する合併会社の想定される評価額は130億ドル(約1兆4275億円)だ。Uberの自動運転部門の買収後のAuroraの評価額は、100億ドル(約1兆980億円)だった。

合併取引を通じて、 ​AuroraはBaillie Gifford、Counterpoint Global (Morgan Stanley)やT. Rowe Price Associates, Inc.が管理するファンドや口座、PRIMECAP Management Company、Reinvent Capital、XN、Fidelity Management and Research LLC、カナダ年金制度投資委員会、Index Ventures、Sequoia Capitalといったプライベート投資家、並びにUber、PACCAR、Volvo Groupからの戦略的投資で10億ドル(約1100億円)を調達する。

合併会社は、クロージング時に現金約25億ドル(約2745億円)を保有することを見込んでいる。当局に提出した書類によると、ここには2021年3月18日に完了したIPOで調達したReinventの信託口座にある9億7750万ドル(約1070億円)が含まれる。

「当社にとってこれは大きな次なるステップです」とCEOで共同創業者のChris Urmson(クリス・アームソン)氏は7月15日のインタービューで述べた。「明らかに我々のプロダクトをマーケットに持ってくる必要があります。しかし我々はこの上なく当社のチーム、そしてこの取引がもたらすリソース、そしてパートナーにこの上なく胸躍らせています」。

Auroraは4年という期間で、話題を振りまくスタートアップから上場企業になった。同社は2017年にSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏,、Drew Bagnell (ドリュー・バグネル)氏、アームソン氏によって創業された。3人とも自動運転車両テクノロジーに取り組んできた経歴を持つ。

2020年12月に同社はUberの自動運転部門、Uber ATGを複雑な取引で買収することでUberと合意し、これにより合併会社の評価額は100億ドルになった。買収条件により、AuroraはUber ATGに現金を払わなかった。Uber ATGはトヨタ、デンソー、ソフトバンクのビジョンファンドから2019年に10億ドルの出資を受けたのち、評価額は72億5000万ドル(約7960億円)だった。米証券取引委員会に提出された書類にとると、現金の代わりにUberは合併会社の株式26%を受け取った。

買収後、AuroraはUber ATG従業員の統合にここ数カ月を費やし、現在の総従業員数は約1600人だ。Auroraはつい最近、北米向けの自動運転セミトラックを共同開発することでVolvoと合意に達したと述べた。少なくとも数年は継続すると予想されているこの提携は、VolvoのAutonomous Solutions部門を通じて、Volvoの顧客のためにハブ間の高速道路を自動運転で走行するトラックの開発と展開に注力する。

大規模なベンチャーキャピタル

ホフマン氏、ピンカス氏、そしてトンプソン氏は、彼らが「大規模なベンチャーキャピタル」と呼ぶコンセプトを促進してきた。これまでSPACはそのスケールに達するためのコンジットだった。3氏は白紙小切手会社であるSPAC3社を組成した。

それらSPACのうち2社は非公開企業との合併を発表した。Reinvent Technology Partnersは2月に電動垂直離着陸機を開発するJoby Aviationとの合併取引を明らかにした。Joby Aviationは2021年後半にニューヨーク証券取引所に上場する。Reinvent Technology Partners Zは住宅保険のスタートアップHippoと合併した。

3氏の3つめのSPACはAuroraと合併するReinvent Technology Partners Yで、このSPACはIPOで8億5000万ドル(約930億円)を調達するために8500万株を1株10ドル(約1100円)とした。そして割り当て超過をカバーするために追加で1270万株を発行し、調達総額は9億7700万ドル(約1070億円)となった。同社はNASDAQに上場していて、ティッカーシンボルRTPYUで取引されている。

多くの点で、AuroraとReinvent SPACの合併は理に適ったものだ。

Auroraはすでにホフマン氏と接点があった。2018年2月に同社はGreylock PartnersとIndex Venturesから9000万ドル(約100億円)を調達した。Greylockのパートナーであるホフマン氏とIndex VenturesのMike Volpi(マイク・ボルピ)氏はシリーズAラウンドの一環でAuroraの役員会に加わった。そして2019年にAuroraはSequoia Capital、Amazon、T. Rowe Price AssociatesがリードしたシリーズBラウンドで5億3000万ドル(約580億円)超を調達した。このラウンドにはLightspeed Venture Partners、Geodesic、Shell Ventures、Reinvent Capital、既存投資家のGreylockとIndex Venturesも参加した。

SPAC取引の両面からホフマン氏とReinventが現れたのは、前例のないことではないが、ありふれたことでもない。アームソン氏は、潜在的な利益相反を避けるためにホフマン氏がこの協議に加わらなかった、とTechCrunchに語った。

「一方でリード(ホフマン氏)の理解と会社との付き合いを考えると、リードは今回の機会を理解するのに最も適した人物の1人です」とアームソン氏はインタビューで述べた。そして、利益相反を回避するために、ホフマン氏はAurora、Reinveintどちらのサイドででも協議に加わらなかった、とも語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Aurora Innovation自動運転SPAC

画像クレジット:Aurora

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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