自身も視覚障がいを持つ開発者がMicrosoft Seeing AIによるアクセシビリティ改善について語る

マイクロソフトのCEOを務めるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は2016年のBUILDカンファレンスでエンジニアのSaqib Shaikh(シャキブ・シェイク)氏を紹介し、彼の情熱と思いやりが「世界を変えるだろう」と述べた。

この予言は正しかった。シェイク氏はその後、目が見えないあるいは視覚障がいのあるユーザー向けのスマートフォンアプリ「Seeing AI」を共同開発し市場に送り出した。このアプリは AI の応用がアクセシビリティの改善にどれほど役立つかをよく示すケースとなっている。Seeing AIはスマートフォンカメラを利用し その場の情景を認識して描写してくれる。

例えば、人物の人数、性別、表情などを音声で告げる。また手書きのものを含め文章を撮影すると読み上げてくれる。紙幣であれば額面を対象物の色も分かる。アプリの最新バージョンではハプティック・テクノロジーを利用しておりユーザーは人物などの対象の位置を振動で知ることができる。このアプリは3年前の発表以来2000万回利用されている。現在のバージョンは日本語を含む8カ国語がサポートされている。

視覚障がい者のアクセシビリティを改善するテクノロジーをテーマとするオンライン・カンファレンス「Sight Tech Global」でシェイク氏が講演することになったのはうれしいニュースだ。シェイク氏はAIテクノロジーの急速な進歩がいか視覚障がい者の生活の質を改善しつつあるかを解説する。TechCrunchなどがメインスポンサーを務めるSight Tech Globalは、視覚障がい者を支援する活動を75年以上続けてきたVista Centerが主催する。このオンライン・カンファファレンスは最近TechCrunchで開催の詳細を発表した(未訳記事)。

シェイク氏は7歳の時に視力を失い、盲学校で学んだ。ここで視覚障がい者に「話しかける」ことができるコンピューターに魅了された。その後、英国のサセックス大学でコンピュータ科学を学んだ。シェイク氏によれば「大学卒業後常に夢見ていたのはいついかなる時でも自分の身の回りに誰がいて何が起きているのかを教えてくれるようなテクノロジーだった」という。同氏はこの夢の実現に向かって歩み続けた。

2006年にマイクロソフトに入社し、2014年と2015年の一週間に及ぶ定例ハッカソンでAIを視覚障がいのあるユーザーのためのソフトウェアの開発を試みた。その後間もなくSeeing AIは同社の公式プロジェクトとなり、 シェイク氏のフルタイムの業務となった。開発には同社のCognitive Services APIが決定的な役割を果たしたという。現在同氏は視覚障がい者のためにAIを役立てるチームのリーダーとして活動している。

シェイク氏は「AI について言えば障がいを持つユーザーは最も有望なアーリーアダプターだと思う。視覚障がい者は何年も前から本を音声録音によって利用してきた。人間の読み上げに代わるものとしてOCRやテキスト読み上げのテクノロジーなどが開発された。これらは初期のAIの応用といえる。現代ではコンピューターは高度な AI を利用して視覚的認識によって、文章化して読み上げることができる。このテクノロジーには数多くのユースケースが見出されている。しかし最も有望な分野は視覚障がい者に対して周囲の状況を認識し音声で教えるものだ。これは視覚障がい者の能力を信じがたいほどアップさせる」と説明する。下のビデオはマイクロソフトが2016年にリリースしたものでシェイク氏とSeeing AIプロジェクトをフィーチャーしている。

Seeing AI はAI テクノロジーがほとんど知性を持つように振る舞うツールを実現できるという例のパイオニアだろう。 このアプリは単に文書を読み上げるだけではなく、文章を正しく読み取れるようにするためにスマートフォンをどちらに動かせば良いかユーザーに教えてくれる。また目の前に誰かがいることを教えてくれるだけでなく(事前に名づけていれば)名前や簡単な見た目も教えてくれる。

Sight Tech Globalでシェイク氏はSeeing AIの将来に加えてクラウド・コンピューティングの発達、ネットワーク遅延の低下などによるアクセシビリティの改善、AIアルゴリズムによる高度なデータセットの利用などについてビジョンを語る予定だ。

Sight Tech Globalは、12月2日〜3日に開催される。参加は無料だが、事前登録がこちら必要だ。公式Twitterは@Globalsightとなる。カンファファレンスではスポンサーを募集中で、さまざまな支援の道がある。関心を持った企業は、運営事務局のメールにぜひ問い合わせてほしい。

画像クレジット:Saqib Shaikh

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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