良質なネットコミュニティ醸成を支援するTHECOOが3.8億円調達、ライブ配信事業を強化へ

ファンコミュニティサービス「fanicon」などを運営するTHECOOは6月2日、総額3億8000万円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、既存株主である日本ベンチャーキャピタルとYJ キャピタル、独立行政法人中小企業基盤整備機構(D4V1号投資事業有限責任組合)に加え、S5パートナーズ(S5パートナーズ有限責任事業組合)、MBSイノベーションドライブを含む計6社が引受先となる。

同社が2017年に提供を開始したfaniconは、不特定多数が参加するオープンな掲示版やSNSとは異なり、熱量の高いファンが集まりやすいのが特徴の有料のコミュニティサイト。有料会員のみが参加できるという特性から建設的なコメントが多く、アーティストや団体の活動をさらに盛り上げる原動力となっている。現在では1500以上のコミュニティが開設されており、タレントや声優、YouTuberなどのインフルエンサー、プロスポーツ団体などが活用している。

fanicon上には俳優やYouTuberの多数のコミュニティがある

最近では誹謗中傷によって自殺者まで出ているなどオンラインで繋がることのリスクについて同社は「ローンチ当初よりアンチユーザーのいない『安心安全な空間』にこだわって提供しています。コアファンが集まるクローズドなコミュニティは1つの解決策だと思っております」と説明する。

新型コロナウイルスの蔓延による全国的な自粛ムードの中でもfaniconは堅調で、各コミュニティの活動が活発になり、通常の倍以上のライブ配信や投稿があったとのこと。それに伴い、アクティブユーザー数と課金率も増加したそうだ。

さらに同社は、3月にfanistream(ファニストリーム)という新サービスもリリース。これは、新型コロナ禍で大打撃を受けているライブエンターテインメント業界の新たな収益源を創出する狙いで立ち上げた、チケット制ライブ配信サービス。都度課金でライブ配信できるのが特徴だ。「オフラインでファンとつながる機会が激減しているいま、オンライン上でファンと交流を深められるファンコミュニティの存在は、ファン離れを防ぎ、ファンの満足度向上に寄与するほか、安定的なマネタイズ施策にもなる」と同社。

fanistreamでは、faniconアプリからチケットと購入できるのはもちろん、アーティストの物販サイトへのリンクもある

同社では3月と4月にライブエンターテインメント業界を盛り上げるためにfanistreamの手数料と、賛同したライブハウスの使用料を無料(もしくは特別価格)にした「#ライブを止めるな!」キャンペーンを実施。配信を行ったアーティストからは「画面越しという難しさはありつつも、バンドで大きな音を出せる喜びやファンにパフォーマンスを届けられる喜びを体験を得られた」という意見あったそうだ。

今回調達した資金は、事業拡大に伴う人材採用・育成の強化、海外展開を見据えたサービス認知向上のためのマーケティング投資、サービスの改善、本格的なライブ配信が可能なスタジオ建設などに投下するとのこと。

なお今回の資金調達で新規株主となったMBSイノベーションドライブは、関西キー局であるMBS(毎日放送)のグループ会社。THECOOでは、2019年からMBSのラジオやテレビ番組とfaniconの連携を進めていたが、今後はライブ配信やイベントなどでMBSグループと連携をしていく計画があるとのこと。

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TechCrunch Japan

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