英国の競争監視機関は、NVIDIA(エヌビディア)が計画しているチップ開発メーカーのArm(アーム)の買収について、深刻な懸念を示した。
この評価は現地時間8月20日、英国政府によって発表された。同政府は今後、競争・市場庁(CMA)に買収案の詳細な調査を依頼するかどうかを決定することになる。
CMAが政府に提出した報告書の要旨では、この買収が実行された場合、合併後の企業は、NVIDIAと競合する半導体チップおよび関連製品を製造する企業が使用するArmのIP(知的財産権のある設計データ)へのアクセスが制限することで、競合企業NVIDIAの競争力を損なう能力と動機を得ることになるという懸念が示されている。
CMAは、競争がなくなると、データセンター、ゲーム、IoT(モノのインターネット)、自動運転車など、多くの市場でイノベーションが阻害され、その結果、企業や消費者にとっては、製品が高価になったり、品質が低下したりする損害を招く恐れがあると懸念している。
NVIDIAが提案した行動的問題解消措置は、CMAによって拒否された。CMAは合併案について競争の面で詳細な調査を行う「第2段階」に移行することを推奨している。
CMAの最高責任者を務めるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は、次のようにコメントしている。「我々は、NVIDIAがArmを支配することによって、NVIDIAの競合他社が重要な技術へのアクセスを制限されるという深刻な問題を引き起こし、最終的に多くの重要かつ成長している市場におけるイノベーションが阻害されることを懸念しています。その結果、消費者が新しい製品を入手できなくなったり、価格が上昇する可能性があります」。
「チップテクノロジー業界は、数千億円規模におよび、企業や消費者が日々利用している製品に欠かせません。これには、経済全体のデジタルビジネスを支える重要なデータ処理およびデータセンター技術や、ロボット工学や自動運転車などの成長産業にとって重要な人工知能技術の将来的な開発も含まれます」。
NVIDIAにコメントを求めたところ、以下のような声明が送られてきた。
私たちはCMAの最初の見解に対応し、政府が持つ懸念を解決することができる機会を楽しみにしています。当社では依然として、この買収がArmとそのライセンス企業、市場競争、そして英国にとって有益であると確信しています。
英国のデジタル・メディア・文化・スポーツ省は、同省のウェブサイトに掲載された声明の中で、英国のデジタル担当長官が現在「報告書全文に含まれる関連情報を検討中」であり、CMAに「第2段階」の調査を依頼するかどうかの決定を「そのうち行う」と述べている。
「この決定を下すための期間は定められていませんが、不確実性を低減するため、合理的に実行可能な範囲で、早急に決定を下す必要性を考慮しなければなりません」と、声明では付け加えている。
この買収案は英国内でかなりの抵抗に直面しており、Armの共同設立者の1人を含む反対派は、合併が阻止されることを求めている。
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)