英国テック業界の求人は新型コロナ影響で3月に31%減

新型コロナウイルス危機が続く中、英国テック業界の複雑な状況を示す雇用データが明らかになりつつある。これまで何カ月も何年も雇用は成長軌道にあったが、それがほぼ一夜にして変わったようだ。

TechCrunchが独自に共有された仕事サイトAdzuna(英国政府の「Find a job」サービスも運営している)とWorkinStartupsの数字によると、英国のテック分野トップ100社の雇用活動は3月に31%減少した。加えて、テック部門全体で2万5000人分の新規雇用が3月と4月で失われた。

また、いくつかのユニコーン企業が従業員を一時帰休とした一方で、テック分野トップ100社の50%以上が雇用を停止している。その結果、求人1件に対する応募者数は平均38人となった。これは英国のテック業界においては2008年の金融危機以来、最も激しい競争となる。

「私がこのデータで最もインパクトを受けたのは、欧州全体のテック企業の大半が現在の経済状況を非常に憂慮していて、VCからの『軍資金』があった企業やユニコーンステータスの企業ですら従業員を解雇・一時帰休としたり、あるいは新規採用をしていないという事実だ」とAdzunaの共同創業者Andrew Hunter(アンドルー・ハンター)氏は話す。

今後変わるであろう雇用のスピードに関しては、ハンター氏はVladimir Lenin(ウラジーミル・レーニン)の言葉「何十年も平穏な時間が流れ、それが数週間で崩れる」を引用し、世界が「現在時速500マイル(約804km/h)で動いている」と話す。

「雇用マーケットがここ数週間で急変しているのに驚いている」とハンター氏は語る。「英国の失業は今月倍増するだろうが、求人数は半分になっている。この相乗作用で痛々しいものになる」

調査ではまた、企業によって雇用活動に大きな差があることも示されている。例えばデータによるとAirbnb、GoogleそしてFacebookは明らかに欧州での採用を縮小している。Habito、Treatwell、Carwowなどは不動産テックやモビリティが現在直面している困難を反映して採用活動を全面的に一時停止しているようだ。

フィンテックユニコーンでは、現在TransferWiseが45人の求人を、Revolutは324人の求人を出しているが、新型コロナ危機前は2社の採用状況は同レベルだった。驚くことではないが、サブスク型のデリバリーサービスGousto、Hellofresh、Oddboxはいずれもかなりの需要増を受けて新規採用を拡大している。Amazonは1000人超、Deliverooも100人超を募集するなど雇用を増やしている。

「Monzoのような大企業は、今後数カ月後にわたって何千人も解雇するという苦しみを味わったり、夏にもっと思い切った対応策をとることを余儀なくされるよりも今、行動を起こした方が良いという考えのもとに従業員を一時帰休としたのだろう」とハンター氏は話す。

「トップ100社の次にくるテック企業の大半はかなり異なった状況にある。彼らにとっては生きるか死ぬかの状況であり、採用凍結や一時帰休は予防策ではなく必須の措置だ。基本的に現在の状況がどのくらい続くのか皆目検討がつかないというのは、スタートアップが今後6〜12カ月の資金調達で間違いなく苦労するということを意味している。危機に備え、コアではないイノベーションを一時停止するというのは現状では最善策のようだ」。

調査によると、テック企業のマーケティング、ソーシャルメディア、ITセールスの雇用が最も影響を受けており、募集は対前月比で60%超落ち込んでいる。想像できることではあるが、観光・旅行部門のテック企業ほぼすべてが採用活動を中止していることがデータで示されている。

それとは対照的にエンジニアリング求人は善戦しており、C++、Java、Ruby、PHPのデベロッパー採用は20%減にとどまっている。

「いくつかの異なる要素が雇用に作用していると考えている。現在のキャッシュランウェイ(キャッシュフローが赤字の間、手元資金で乗り切れる期間)でバーンレートをコントロールし、今後3〜6カ月で立ち直れるかどうか、などだ。そのため資金調達やキャッシュディシプリンがものをいう。もし私が旅行予約スタートアップを現在経営しているとしたら、例え銀行預金残高が健全なものだったとしても、最悪の事態に備えるだろう」

その一方でハンター氏は、VCやCEO、創業者たちは今回の危機により可能な限りの「ヘッジ」を余儀なくされ、回復や危機の後にくる上向き局面を描こうとしているが、実際のところこの危機がいつ終わるのか誰もわかっていないと指摘する。

「V字型経済回復とはならないだろう。しかし景気回復が始まるときにいい位置につけることができる企業が最も速く成長し、最大のマーケットシェアを握るはずだ。だからこそ差し当たって1、2年の計画にさほど大きな変更を加えず、活用できそうな機会をつかんでものにしようとしている企業がいる。これはAyrton Senna(アイルトン・セナ)の言葉にある通りだろう。『晴れた日には車15台を追い抜かすことはできないが、雨の日だったらできる』」

画像クレジット: Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。