英Skyroraが複数回のエンジン停止・再点火が可能で一度の打ち上げで様々な任務をこなすロケット「スペースタグ」をテスト

英国の宇宙技術スタートアップ企業であるSkyrora(スカイローラ)は、現在のところ英国内からロケットを打ち上げることができる唯一の民間企業だ。2020年のクリスマスイブには、スコットランドのFife(ファイフ)にある同社の試験施設で、新しいロケットに搭載されたエンジンの第3段階の静的燃焼テストが行われた。このロケットは最終的に衛星を目的の場所まで運ぶことになる。しかし、さらに興味深いのは、このロケットが軌道上で何度もエンジンを再噴射し、1度の飛行で複数のミッションを行うことができるということだ。これは「Space Tug(スペースタグ)」と呼ばれ、宇宙ゴミを撤去したり、すでに衛星が軌道上にある場合にはメンテナンスをするなど、宇宙空間で様々な任務を行うことができる。

Skyroraは、Seraphim Capital(セラフィム・キャピタル)による初期の「Space Camp(スペース・キャンプ)」促進プログラムの1つに参加していた。

スペースタグは、英国で開発された初の「ミッション・レディ」なロケットであり、軌道に乗れば自力で任意の場所まで航行でき、複数回の停止なども可能だ。

このスペースタグには、3Dプリントで作られた推力3.5kNのエンジンが搭載されており、打ち上げ時の第1段階では、廃プラスチックから作られた環境に優しい燃料(エコセン)を使用する。

Skyrora社のCEOであるVolodymyr Levykin(ウォロジミール・レヴィキン)氏は次のようにコメントしている。「Skyrora XLロケットのこの面に関しては、我々はわざと沈黙を守っていました。この段階に到達させるためには大きな技術的課題があり、すべてのテストで満足のいく結果が得られるようにしたかったからです。それが今、達成しました。良いニュースが本当に不足している現在の状況で、私たちはこのことを世界に伝えるべき時だと感じています。【略】我々の目標は、英国の大地から最も環境に優しい方法で効率的な打ち上げを行うだけでなく、一度の打ち上げで、これまで複数回の打ち上げが必要とされてきたレベルの作業を行うことができるようにすることです」。

宇宙飛行士のTim Peake(ティム・ピーク)卿は、次のようにコメントしている。「Skyroraのような企業が、英国を『打ち上げ国』にするという野心を持ち続けているのは素晴らしいことです。前進し、そのエンジニアリング能力への投資を継続的に行うことで、彼らは見事なマイルストーンを達成し、英国はその恩恵を受け続けています。衛星を精密な軌道に送り込む軌道上作業機としての機能を実現する第3段階の完全燃焼試験を実施したことで、Skyroraは打ち上げ準備に一歩近づきました。この機体はまた、衛星の除去、燃料補給、交換、軌道上からのデブリ除去などの重要な業務もできるようになる予定です」。

関連記事:3Dプリンタでロケットエンジンを作り廃プラ燃料で噴射に成功したSkyrora

カテゴリー:宇宙
タグ:Skyroraイギリスロケット

画像クレジット:Skyrora

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。