血まみれの金を受け取るということーサウジ記者殺害事件に寄せて

何年か前、僕はTechCrunchイベントで会ったインベンターにコーヒーに誘われた。こういうことはよくある。僕はウィークリーコラムニストで、オフィシャルメディアのインフルエンサーと思われている。人々は僕に何かしらの影響を与えようとするが、結局僕は彼らを無視して僕が面白いと思ったことを書く、ということに相手は気づく。しかし、僕はこのコーヒーの誘いに応じた。というのも相手の仕事が、悪い意味で例になく興味深かったからだー彼はクレムリンに近いベンチャーファンドの代表だった。

これは、ロシアが今日のように民主主義を操る敵対的な存在になる以前のことだ。しかし、ロシアが“同性愛禁止法”を可決した後のことで、怒りに満ちた反ロシア感情が非常に強い時だった。相手がこの話題で憤慨する様を見るのは僕にとってかなり面白かった:彼が言うには、彼はベイエリアの人間で、ゲイの人権のプロであり、ゲイの結婚のプロだ。しかしそれぞれの国がそれぞれのスピードで啓発されていくという現実を受け入れなければならない。そして我々の価値を促進するための最善策は、国と一緒に働き、正しい道を示すことだ、と。

言うまでもないが、このコラムはサウジアラビアについてだ。

サウジアラビアの残忍さを人々に気づかせるのにJamal Khashoggi殺害を要したのには、まったく驚きに近いものを感じる。もう3年になるが、サウジアラビアは不必要な紛争で何千人ものイエメン人を虐殺している。国連の言葉を引用しているBloombergの記事は「特にサウジアラビア主導の連合、そしてそれをイエメン政府がバックアップすることは、市民の命を見捨てることを意味し、おそらく戦争犯罪に等しい」と記している。かつてはイスラムの過激な解釈のワッハーブ派と同盟を結び、一国一党主義の絶対的な君主主義を長い間しいてきた。ワッハーブについてT.E. Lawrenceは100年前に、解しがたい“狂信的な異教”と表現しているーこの同盟関係の結果、多くの世界的惨事を引き起こしてきた。

ご存知のように、サウジアラビアは国際的な同盟関係を築き、米国のパートナーとなっている。米国の経済/軍事/コンサルティング/産業/石油関係は、かなり長い間サウジと懇意にしていて、そこには政治家も含まれる。テック業界におけるサウジの金がどうにも非常に悪いもので異なるもの、というふりはやめよう。悪いもの、そう、米国社会の全てと同じくらいかなり悪いものだ。長い間、米国のサウジに対する姿勢というのは、「もちろん、彼らは圧制的な独裁制をしいている。しかし彼らは我々の圧制的独裁制であり、王室一家はとても素敵で寛大で、石油の多くをコントロールしている」というものだった。

しかしながら、ようやく今、そうした態度が変わりつつあるようだ。それは、米国がサウジから石油の購入をやめるようとしている、ということではない。米国がサウジに兵器を売るのをやめる、ということでもない。20世紀(間違っても21世紀ではない)にみられたようなその時々の躊躇するようなステップにもかかわらず、これから誰もサウジアラビアが残忍極まりない圧制的な国であるというふりはしない。(この件に関し、僕の故郷カナダの先取りした姿勢を声高にアピールしたい)。何が進歩なのか。進歩に近いものと僕は想像しているが。

サウジアラビアと関係を続けていくのに、実益政策をとることもできる。5年前に僕が一緒にコーヒーを飲んだ相手がロシア政府と協働を続けるように。それがどのような結果になったのかを見るといい。それからロシアがいかに啓発的になり、進歩を見せ、ロシアの社会に貢献しただろうか。…いや、最悪、サウジアラビアは違うかもしれない;あまりにも広範に激しく批判したり過剰反応したりするには繊細な問題だ。というのも、基本的には崩壊しやすい国だからだ。シリアの崩壊と内戦が起こる前にそれを予想したNassim Talebは、サウジアラビアについても同じような運命を予言している。

トランプ政権が、人々の恐れや経済影響を鑑みて、サウジアラビアの新たな常軌を逸したリーダーシップをサポートし続けるとは思わない。“Trump’s razor(トランプのカミソリ)”:最も愚かしい理由がおそらく修正される。ここでは、政権がサウジのサポートに戻ろうと思わないことを意味する。サポートに戻ると、彼ら自身の弱さをさらけ出すことになると彼らは考えているからだ。同様に、我々がからかっている人たち、サウジから資金を受けているVCは、パックスアメリカーナを支えるために同じような対応はとっていない。それは純粋に、彼らは金が欲しいからであり、だれも450億ドルもの現金を放り出す準備はできていない。

しかしながら、現在、そして当面サウジの金は汚れ、血まみれだ。もしそれを受け取れば、Khashoggi殺害事件後の新たな社会的道義に反するという帰結になることを考えなければならない。それは長く続くのだろうか。誰がそう言えるのか。しかし、そう長く続かなかったにしても、あなたの倫理に反するということを考慮しなければならない。それは、どれだけの額の金になろうとも、昨年においても、来年においても真実である。

イメージクレジット: 401kcalculator.org (opens in a new window)Flickr (opens in a new window)under a CC BY-SA 2.0 (opens in a new window)license

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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