裁判所がアップルにUnreal Engineのブロックを止める命令、ただしFortniteのApp Store復帰は認めず

地方裁判所はEpic Games(エピックゲームズ)に対して、iOS App StoreへのゲームFortniteの一時的復帰の要求を却下するとともに、Apple(アップル)にはゲームの巨人がUnreal Engineをアップルのエコシステムに供給するのを阻止しないよう命じた。裁定は悲喜こもごもの結果となった。

連邦地方裁判所判事のYvonne Gonzalez Rogers(イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース)氏は、アップルはEpic Gamesへの報復措置として同社のアカウントを停止したり、アップルのプラットフォーム上で広く利用されているUnreal Engineへのデベロッパーアカウントによるアクセスを制限することを禁止した。

「Unreal Engineプラットフォームそのもの、およびサードパーティーデベロッパーやゲーマーを含むゲーム業界全体に対する著しい損害を招く可能性があることを記録が示している」と同氏は語り、たとえEpic GamesがApp Storeのガイドラインに違反したとしても、Unreal Engineおよびデベロッパーツールに関する契約には違反していないと付け加えた。

「アップルは断固とした行動を選び、その結果として契約上無関係な人々やサードパーティーデベロッパーエコシステムに影響を与えた」とロジャース氏は述べた。

しかしEpic Gamesにとって裁定は完全勝利ではなかった。同社は大ヒットタイトルのFortniteのiOS App Storeへの復活も要求していた。ロジャース氏は、同タイトルはEpic GamesがApp Storeガイドラインに再び準拠しない限りApp Storeから外されたままになると語った。

米国時間8月24日の裁定は、アップルとEpic Gamesの両巨人によるiPhone App Storeの基本的ルールを巡る大がかりな公開バトルに、ひとまずの決着をつけた。2020年8月EpicはアップルおよびGoogle(グーグル)のアプリストアガイドラインを破り、FortniteのiOSおよびAndroidユーザーが直接料金を支払う方法を提供した。アップルとグーグルは、プラットフォーム上のデベロッパーに対してそれぞれの支払プロセスシステムを使用し、手数料を支払うことを義務付けている。ゲームの手数料は取引金額の30%だ。

Epicの行動によってアップルは、おそらく史上最大のベストセラーゲームであるFortniteをApp Storeから削除する決断を下した。アップルの行動を予期していたEpic Gamesは、FortniteがApp Storeから削除された数分後にアップルを訴訟し、史上最も奇っ怪な、あるいは大胆なマーケティングキャンペーンを始動させた。

翌日、アップルはEpic Gamesに対してApp Storeガイドラインおよびデベロッパープログラムライセンス契約違反を根拠に、あらゆるデベロッパーツールを無効化すると伝えた。その結果、Unreal Engineを含む他のプログラムへのアップデートが8月28日まで不可能となった。その後Epic Gamesはアップルに対する差し止め請求を申請した

Unreal Engineはゲームデベロッパーの間で広く使われている人気の開発ツールだ。最近同ツールの評価が高まり、商業映画やDinsey+のThe Mandalorianのようなテレビ番組でも使用されている(未訳記事)。

先週Epic Gamesは、アップルのエコシステムでの将来に不安を感じたデベロッパーがUnreal Engineを離れ始めていると語った。Microsoft(マイクロソフト)のゲーミングデベロッパー体験担当ゼネラルマネージャーであるKevin Gammill(ケビン・ガムミル)氏はEpicによる差し止め要求に声明を追加して支持を表明した。

Xbox責任者のPhil Spence(フィル・スペンサー)氏もツイートで、「我々はEpicのUnreal EngineのためのApple SDKアクセスの維持を支持する声明を提出した。Epicが最新のアップルテクノロジーへのアクセスできることを保証することはゲームデベロッパーおよびゲーマーにとって正しい行動だ」と語った。

ちなみに、マイクロソフトとアップルは彼ら自身の法廷闘争の最中(未訳記事)である。

画像クレジット:Kyle Grillot/Bloomberg / Getty Images

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カテゴリー:ゲーム / eSports

タグ:Apple Epic Games

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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