IoT関連のスタートアップは増えているが、今年いちばん話題をかっさらったのは9月末にサービスを一般公開したソラコムだろう。ソラコムは、AWSのエバンジェリストだった玉川憲氏が2015年3月にAWSを退職して設立したスタートアップ企業で、創業直後に7億円という大型のシードラウンドで資金調達をしたのも注目を集めた。そのソラコム創業者の玉川憲氏が11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015に登壇していただけることとなったのでお知らせしたい。
ソラコム創業者で代表の玉川憲氏
ソラコムが提供するのはソフトウェア的に制御可能で安価なMVNOサービス「SORACOM Air」だ。
SORACOM Airは、アマゾンがクラウドで果たした役割をモバイルネットワークで果たそうとしているように見える。AWSは、従来専用ハードウェアを用意しなければ実現できなかったサーバー、ネットワーク、ストレージといったものを仮想化して、いつでも好きなときに好きなだけ組み合わせて使えるようにした。API経由で制御できることで、それまでの常識とは異なるシステム構築を可能にして、小さく始めて大きく育てられる高いスケーラビリティや、高い可用性、柔軟性を実現した。
クラウド同様にSORACOM Airは「小さく始められる」サービスだ。従来通信サービスを含んだ「ソリューション」の開発・提供となると、まずSIMカードを数百枚単位で買ってきてというのがスタート地点だった。それがSORACOM Airなら1枚のSIMカードによるプロトタイプからスタートできるようになっている。また、SORACOM AirではAPI経由で制御可能としている。きめ細かに通信サービスを制御することで、従来は採算性が取れなかった新しいビジネスを構築できる可能性も感じられる。詳しくは、9月末に掲載した記事「ソラコムがベールを脱いだ、月額300円からのIoT向けMVNOサービスの狙いとは?」をみてほしいが、ソラコム創業者の玉川氏は、「かつてAWSがでてきて、その結果、InstagramやDropbox、Pinterest、Airbnb、Uberといったサービスが出てきたみたいに、ソラコムのようなプラットフォームによって、きっと面白いIoTが出てくるんじゃないかなと思います」と話している。
ソラコムは、提供する製品自体も注目だが、スタートアップ企業としての立ち上げ方も目を引いた。大型資金調達やメディアを使った大々的なローンチ発表もそうだし、ローンチ時にパートナー制度を開始して多くのハードウェアメーカーやシステムベンダーを巻き込んでいること、そもそも特定業界を中から見ている腕の立つエンジニアでなければ見つけられない起業アイデアをつかんだことや、半年ほどで専用ハードウェア相当の機能をクラウドで実装してしまったことなんかは鮮やかな垂直立ち上げだったというほかない。製品リリース後もリレーブログや開発者イベントの開催などの開発者を巻き込むB2Dも、もともと技術者コミュニティーを盛り立てるエバンジェリストだった玉川氏の面目躍如といった感じで「手慣れたもの」という印象すらある。
まだ大きく成長するのかどうかは分からないが、ソラコムがいまもっとも各方面からの注目が集まっているスタートアップであることは間違いない。TechCrunch Tokyo 2015のステージ上では、大手企業を飛び出して起業することや、チームやプロダクトの作り方、SORACOMの詳細と応用可能性、IoTの未来など、ざっくばらんに語っていただこうと思っている。
玉川氏は東京大学大学院機械情報工学科修士卒で、日本IBMの基礎研究所でキャリアをスタート。Amazon Web Servicesへの移籍前にはカーネギーメロン大学でソフトウェア・エンジニアリングとMBAの2つの修士号を取得している。