B2B国際物流のクラウドサービス「Shippio」は12月3日、第二種貨物利用運送事業者の許可を取得し、サービスを正式版としてリリースしたことを発表した。これにより、既存のウェブ上の見積もりと輸送管理機能に加え、物流事業者として輸出入の荷主から「荷物を預かって運べる」サービスとなる。
またShippioはプロダクトの正式リリース発表と同時に、プレシリーズAラウンドで1.9億円の資金調達を完了したことも明らかにしている。
2016年6月設立のShippio(旧社名サークルイン)は同年8月にアクセラレータープログラム「Code Republic」に採択され、YJキャピタル、East Venturesからの出資を受けた。その後、500 Startups Japan、YJキャピタル、East Venturesを引受先として、2017年5月に数千万円規模の資金調達を実施。
今回の資金調達はそれに続くもので、500 Startups Japan、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DBJキャピタル、YJキャピタル、East Venturesのほか、個人投資家2名が第三者割当増資の引受先となっている。
Shippioは設立以来「輸出入の取引をもっと身近に」することを目指して、国際物流手配の自動化、クラウド化に取り組んできた。
Shippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏は「物流はサプライチェーンが長く、関わるプレイヤーが多い業界」といい、前回調達からの動きについて「デジタルによる効率化をどこからスタートする(のがより効果的)か、検討してきた」と振り返る。
国際物流のプレイヤーは、出荷を行うシッパー(荷送人・荷主)、実際の運送を行うキャリア(運送事業者)、そして荷主から荷物を預かり、キャリアを手配して、シッパーとキャリアの間で運送を取り次ぐフォワーダー(貨物利用運送事業者)の大きく3つに分かれる。
Shippioは2017年8月、フォワーダー向けにオープンベータ版を公開。2018年6月には輸出入の荷主向けにも「WEB取次サービス」をリリースし、見積取得・依頼機能の提供を開始した。
ベータ版ユーザーは、中国、東南アジア、ヨーロッパとの間で、EC商品や家具、加工食品、日本酒、ワインなどさまざまな商品の輸出入取引を、海上・航空貨物の両方で行っている。深圳の工場から部品を指定の倉庫へ運送したり、フランスからワインを輸入したり、といった例があるそうだ。
ベータ版運用の感触について、佐藤氏は「利用者にはスタートアップも多い。すると小口貨物での利用が多いので『航空貨物だと高そう』といって船便にすることも多いのだが、比べてそうしているわけではなかったりする。船便会社も航空便のレートを知らないし、航空便の会社も船便のレートは知らない。Shippioは両方の数字を持っているので、本当に最適な輸送ルートの提案ができた」と話している。
また「国をまたぐ輸送を誰に頼めばいいのか、わからないというユーザーも多く、間口を広く持つのは重要だなと感じた」とも述べている。
このベータ版から、「間口を広く」して、誰もが輸出入の運送を頼める正式版サービスができるまでに、Shippioにはひとつ壁があった。Shippioを各国との輸出入手続きをドア・ツー・ドアで行えるサービス、すなわち「荷物を預かって運べる」サービスとするためには、フォワーダー(貨物利用運送事業者)としての許可を国土交通省から得る必要があったのだ。
佐藤氏によれば「スタートアップに外航運送の領域で免許を与えるという事例が、国土交通省にとっても新しいものだった」とのこと。「いろいろとヒアリングや交渉、調整を進めてきた」結果、第一種貨物利用運送事業者の登録と第二種貨物利用運送事業者の許可取得ができたという。
既存の見積もり取得、輸送管理のプラットフォームとしてだけでなく、物流事業者として実際に輸出入貨物が扱えるようになったことで、ユーザーはShippioに輸送依頼の発注ができ、また同じプラットフォーム上で輸出入の煩雑な手続きや管理を一元化することが可能になった。
海外では、テクノロジーを活用した国際物流「デジタルフレートフォワーディング」のサービスとして、Flexportなどが既にあるが、今回の許可取得で「日本でも、見積もりからオペレーションまで一貫して、デジタルフレートフォワーディングのサービスを提供することができるようになった」と佐藤氏は話す。
調達資金の使途について、佐藤氏はその「オペレーション」の強化を進めると述べている。「物流事業にはオペレーションが必要。例えば船便やトラックの手配、輸出入業務に不慣れな顧客への対応など、数多くの業務がある。デジタルフレートフォワーディングの初期立ち上がりに必要な体制を作っていく」(佐藤氏)
また、プロダクトとしてのShippioについてもさらに機能を拡充していく、と佐藤氏。「安心してウェブで法人向けの貨物を国際輸送できる仕組みづくりを行う」と話している。「物流は建築業などと似ていて、大マーケットである一方、関係者が多いためにデジタル化が進まなかった分野だ。人手不足が進んでいる中で、やり方を変えていかなければ」(佐藤氏)