貸付ファンドオンラインマーケット「Funds」のファンズが20億円超を資金調達、新たに地方創生関連ファンドの構想も

中央がファンズの藤田雄一郎代表

貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」を運営するファンズは4月27日、第三者割当増資によりシリーズCラウンドで総額約20億2556万円の資金調達を行ったと発表した。2016年11月に設立したファンズの累計調達額は32億円となる。

引受先は既存株主のグローバル・ブレインとB Dash Ventures、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、AGキャピタルで、新規引受先はANRIと日本郵政キャピタル、メルペイなどとなる。

今回の資金調達で、貸付ファンドの拡充や人員体制の増強、マーケティングなどに充てていく。また、ファンズは2021年度中にESGや地方創生に関する新たなファンドも出す考えだ。ファンズの藤田雄一郎代表にサービス概要や新たな取り組みについて聞いた。

貸付ファンドオンラインマーケットプレイス「Funds」

「Fundsは資産形成をしたい個人投資家と、資金調達をしたい、または個人投資家と接点を持ちたい企業をマッチングするプラットフォームです」と藤田氏は説明した。

個人投資家はスマホ経由で1円から、企業が事業資金調達のために組成したファンドに貸付投資ができる。貸付投資とは、このファンドと企業間の貸し付けに対し、個人投資家が出資することとなる。

Fundsへのユーザー登録費用や貸付投資の手数料、口座開設費用は掛からない。ファンズ自体は、Funds上で資金調達を行うファンドから業務委託料を徴収し、利益を得ているかたちだ。

ファンドはFundsで得た出資金を用いて借り手企業に貸し付けを行い、元本とそこから生まれた収益を個人投資家に分配する。

Fundsに参加する企業は、上場企業または監査法人などの監査を受けていることが前提だ。実際にFundsで資金調達を行う企業の85%は上場企業となる。

さらに藤田氏は「上場していても無条件でOKという訳ではありません。当然我々でも財務状況や事業計画などについて厳密に審査をします。審査の結果、事業の継続性に疑義があるなどの理由から、上場していてもお断りするケースもあります。このため個人投資家の方からは『資産形成をする上で安心度合いが高い』といった評価もいただいています」と話した。

全ファンドの8割が3時間以内に満額達成

2019年1月にFundsをリリースして以来、約2年で投資家登録数は3万人を超えている。これまで上場企業を中心とした29社が組成する約73のファンドを募集し、全ファンドの8割が3時間以内に満額申込を達成している。また、2021年3月末時点で分配遅延・貸し倒れは0件となっている。

Fundsにある案件では予定利回りが1~3%台が中心で、運用期間は平均で1~1年半となっている。貸し倒れのリスクなどを判断しなければならないが、個人投資家はファンドの募集時に予定利回り・運用期間が決められているため、先を見通したミドルリターン・ミドルリスクの資産形成ができるようになる。株式投資やFXのようにチャートにくぎ付けになり、値動きを追わなくて済むのだ。

藤田氏は「現状、日本において予定利回り型の金融商品は多くありません。サービスローンチ当初はボリュームを作ることに苦労しました。ですが最近は大手企業の参加やリピーター企業も増えました。実際に参加した企業の約7割がリピートするかたちです。地道に積み上げてきた実績によって、ファンドのボリュームも拡大し、2021年3月は公開ファンドの資金募集額が単月で10億円を超えました」と規模拡大に自信をみせる。

投資を通じたファン作りを支援するFCM

企業とってのメリットは、Fundsによって銀行融資や社債などだけでなく、資金調達の方法を多様化できる点だ。社債は信用格付けなどが必要だが、Fundsでは疑似的な社債として担保や信用格付けの取得はいらず、手間を省いてすばやく資金を調達できる。

さらに企業はこれまで顔の見えなかった個人投資家との接点を得るメリットもある。ファンズは2020年8月に電通と、投資を通じて個人投資家と企業との関係構築を支援するため「FinCommunity Marketing(フィンコミュニティマーケティング、FCM)」を共同開発した。

ファンズは現在、FCMをFundsの基本的な機能として提供している。企業はただファンドを組成して資金を集めるだけではなく、FCMを通じて個人投資家との交流会・イベントの企画や、出資者限定の優待券を設定するなど、企業へのファン化を促す戦略を練ることができるようになった。

FCMの取り組みに企業も乗り気だ。Fundsに参加する企業のうち約3割が、第一の目的を資金調達としていない。その3割の企業は「投資を通じたファン作り」を目的としているという。FCMによって企画したイベントなどを通じて、企業はFundsに登録する約3万人の個人投資家とのタッチポイントを得ることに重要性を見出しているのだ。

新たなファンドによる展開も

ファンズが三井住友信託銀行と進めているESG関連のファンド組成支援にも力を入れていく。

藤田氏は「グローバルではESG債、SDGs債というのはとても活況になっています」という。しかし、ESG債、SDGs債は格付けや認証取得における企業側のハードルが高く、いわゆる超大手企業が中心に発行している。買い手も主に機関投資家となり、幅広い企業や個人投資家が参入しづらい状況になっているという。

この課題を解決するため、Fundsで2021年度内に、ESG認証を行う外部機関の正式な認証を受けた貸付ファンドを出していく。企業はFundsで数千万円から数億円といった規模感でESG関連の貸付ファンドを組成でき、個人投資家からすればこれまでよりサステナブルな事業に対する出資へのハードルが低くなるのだ。

この他、ファンズは大手企業と手を組み、地域に貢献する貸付ファンドの募集も始めていく考えだ。

藤田氏は「全国展開を目指す地場の企業を支援するような、または地元の人が地元企業に投資できるような、地産地消型の地方創生貸付ファンドを考えています。こちらも2021年度内にいくつか出していきます」と新たな事業展開を語った。

関連記事:

カテゴリー:フィンテック
タグ:Funds資金調達日本投資プラットフォーム

画像クレジット:ファンズ

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。