車椅子型モビリティのWHILLが自動運転システムを発表、2020年に公道での実用化目指す

車椅子型のパーソナルモビリティ(個人向け移動デバイス)を開発するWHILLは1月7日、「WHILL自動運転システム」を発表した。同システムは2019年1月8日から米ラスベガスで開催される家電・エレクトロニクス技術の祭典「CES 2019」のAccessibilityカテゴリで、最優秀賞受賞が決まっている。

WHILL自動運転システムは、歩道領域のための自動運転・自動停止機能などを備えた独自の車椅子型モビリティ「WHILL自動運転モデル」と、複数の機体を管理・運用するためのシステムとで構成される。

同システムのコンセプトは、空港や商業施設、観光地などでのシェアリングを想定し、誰でも簡単・安全に走行できること。また、少子高齢化による人手不足や長距離の歩行が困難な人の増加を念頭に、車椅子の運搬や回収・管理など、これまで人の手で行っていた作業を自動化することを目指したシステムとなっている。

自動車とは違い、歩道を移動するパーソナルモビリティを自動運転・自動停止するには、周囲の歩行者との距離の近さや、家具や柱などの障害物を想定し、周囲を全体的に把握する視野が必要だ。WHILL自動運転モデルでは、前方・側方監視のためのステレオカメラを左右のアームに搭載し、広い視野角度を確保。機体後方にもセンサーなどを搭載し、後退時に衝突が起きないように備える。

また、乗車しながら運転状況を確認できるタブレット端末や、空港などで使うためのスーツケース格納オプションなど、使用シーンに合わせたオプション、アプリケーションも開発される予定だ。

WHILL自動運転システムでは、地図情報と搭載センサー群からの情報を照らし合わせ、安全な自動走行を実現。乗り物などに移動した後は、乗り捨てたWHILLが自動で待機場所へ戻るように運用することも可能だ。通信回線も搭載されており、複数の機体の位置情報を一元管理することもできる。

WHILLではまず、オランダのスキポール空港、イギリスのヒースロー空港、アメリカのラガーディア空港などで、同システムの実用化に向けた協議を関係各社と進める。空港以外にも、スポーツ施設、商業施設、観光地などでの実用化を順次進めていく。

また施設以外でも、小田急グループほか3社とMaaS(Mobility as a Service)連携を開始したというWHILL。将来的には、全世界の歩道領域で公共交通機関のように利用されることを目指し、パートナー企業と協力しながら、2020年に公道での実用化を目指す。

WHILL代表取締役兼CEOの杉江理氏は、発表にあたり、下記の通りコメントしている。

「現状、電車やバス、タクシーなどの交通機関を降りた後、目的地までのわずかな距離を歩けない人々が、結果として外出をためらっている。今や世界中で多くの人々に『自分の足』として利用されているWHILLを、私たちは、個人へのプロダクト提供にとどまらず、誰もがインフラのように当たり前に使えるサービスとして構築したいと考えている。MaaS事業において、目的地までの数キロメートル、ラストワンマイルをつなぐ、だれもが安全に乗れるインフラは、まだ存在していない。WHILLはそこで、『最後の1ピース』としての役割を果たし、すべての人の移動をシームレスに繋ぎ、歩道領域の移動にイノベーションを起こす」

WHILLは、2018年9月の資金調達時にも、デバイスとしてのパーソナルモビリティから、移動をサービスとして展開するMaaS事業にも進出することを発表していた。今回のモデル、システム発表により、その実現が着々と進められていることが、より具体的になってきたと言えるだろう。

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TechCrunch Japan

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