酪農・畜産農家向けに牛個体管理センサーの開発などを行うファームノートは3月27日、産業革新機構、全国農業協同組合連合会、農林中央金庫、住友商事を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額5億円を調達したと発表した。
ファームノートはIoTのちからで農業改革を目指すスタートアップだ。同社は現在、リアルタイムに牛の活動情報を収集できる首輪型ウェアラブルデバイスの「Farmnote Color」、そして取得したデータを管理するクラウド牛群管理システムの「Farmnote」を提供している。
「Farmnote Color」は牛の首に取り付けるIoTセンサー。これにより、牛の発育状況の変化や病気の兆候などを早期に発見することができる。また、事前に登録したスマートフォンなどのデバイスをFarmnote Colorに近づけることで個体の情報をすぐに調べることも可能だ。同社は取得した情報を人工知能を用いて解析。牛の最適な管理の方法をユーザーに提案している。
そして、Farmnote Colorなどが取得したデータを管理するのが「Farmnote」だ。このシステムでは、スマートフォンやタブレット端末から入力された生産データ、および個体センサーから取得した情報をクラウドに集約。グラフやレポートなどを通して牛の発育状況をリアルタイムに管理することができる。
Farmnoteは大きなアイコンで作業が選べるユーザーインターフェースを採用している。ITリテラシーの低い高齢の農業従事者でも同システムを簡単に使うことができるように工夫した結果だ。同社の売上成長率は過去3年で約30倍と急速な成長を遂げており、これまでに1600の農家がFarmnoteを導入し、約16万頭の牛が同システムにより管理されているという。
これまでもソラコムのSIMカードを利用したシステムを提供してきたファームノートが、比較的新しい通信規格のLoRaWANの導入を進めていることは以前TechCrunch Japanでも紹介した。従来のシステムでは牛舎ごとにゲートウェイを設置する必要があったが、LoRaWANを利用することでゲートウェイなしでも約2キロメートルの農場をカバーすることが可能となっている。
今回調達した資金を利用して、ファームノートは昨年設立した「Farmnote Lab」での研究開発を進める予定としている。さらに、農業生産データの自動収集プラットフォームの「Farmnote Connect」を酪農・畜産以外の農業分野へも拡大していくようだ。
ファームノートは2013年11月設立。同社は2015年8月に約2億円、その翌年の2016年には約3億円の資金調達を実施している。今回の資金調達を含めた累計調達金額は11億円となる。