都市の大規模建設プロジェクトから発生頻度の高い問題やエラーをビッグデータ分析で事前に取り除くVernox Labs

scaffolding

都市における建設や土地開発は、スケーラビリティとは縁遠いビジネスの典型だ。

まず、設計はそのときかぎりで、再利用性がない。土地利用の政策は各地域や国によってまちまちで、標準性がない。現場のサイズも大小まちまち、使用する素材も建物ごとに違う。つまりそれは、スケールするビジネスではない。

予算オーバーが日常化し、それはまれな例外ではない。

そこで、このほどY Combinatorから孵化したVernox Labsは、過去のプロジェクトから得られる多様な非定型データを活用して、上記のような、いろんな面での予測不可能性をできるかぎり排除しようとする。そして、ゼネコンや設計家やプロジェクトマネージャが、よくあるエラーをなるべく犯さないようにする。

まず、住居系のプロジェクトや病院などプロジェクトのタイプ別に、ゼネコンと設計事務所とのあいだで交わされる大量のメールやWordの文書やExcelのファイルなどを人工知能が読んで分析する。

そしてそれらのデータから、予測可能事のチェックリストないし設計の事前リビューを自動生成し、プロジェクトマネージャはそれと、新しい企画の細部を照らし合わせる。またGoogleのような検索エンジンを使って、部位や素材に対して下請けや建設労働者が抱く疑問に、即座に答える。

協同ファウンダのVinayak Nagpalはこう語る: “建設プロジェクトは、ひとつひとつが閉鎖的な蛸壺(silo, サイロ)だ。新規のプロジェクトは、できたてほやほやのスタートアップに似ている。しかしそれでも、毎回々々、同じような問題があちこちに生じてしまうんだよ”。

Nagpalは、トラブル続きのNokiaを辞め、Michael Savaianoと共に、UC BerkeleyのCenter for Entrepreneurship & TechnologyでVernox Labsを立ち上げた。

Savaianoは言う、“いつも、同じようなことを見忘れている。なにか、カーテンウォールのようなものが、毎度々々、過去に何千回も作られている。だから、過去の状況が分かれば、そこから学べるはずなのだ”。

Savaianoの説明によると、デベロッパは完成物の具体的なイメージを持っている。それを設計家に持ち込むと、設計家は設計を作る。次に、ゼネコンが登場して、その設計をいじくり回す。そこから、設計者と建築者とのあいだの、ありとあらゆる行き違い、コミュニケーションのエラーが生じてくる。

“今のビルは、とても複雑だ。その設計は、なお一層複雑だ。素材も、いろいろありすぎて複雑だ。建築を進めるシステム全体が、ものすごく複雑だ”、と彼は語る。“しかしそれでも、これまではプロジェクトのデリバリを助けるものが何もなかった。その状況は、何百年も変わっていない。われわれは、そこに着目したのだ”。

かつて大企業相手の営業をやっていたSavaianoは、パイロット協力企業を二社確保した。そのデベロッパ二社の名前は、当面非公開だ。Vernox Labsのサービスは今は無料だが、いずれは有料になる。

“うちがやるのは、起きうる問題を事前にシミュレートし、求めに応じて予測を作り出すことだ”、とSavaianoは述べる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。