Uber(ウーバー)がディスラプトできなかった国、日本。同社は2015年2月にライドシェアの検証実験を開始したが、無許可でタクシー業を行う「白タク」を禁止する道路運送法に抵触する可能性があるとして国土交通省から「待った」をかけられたのち、わずか1ヵ月ほどで中止した。以後、ここ日本においてライドシェアは全く定着していない状況だ。
8月31日に福岡市で実証実験を開始した米の電動キックボードのパイオニアであるBird(バード)はそんなUberの失敗から学んでいるようだった。Birdにとっては今回が日本での初となる実証実験。この実証実験は、Birdと住友商事が福岡市との協力のもと行なっている。当日、実証実験の開始前に報道陣の前で挨拶をしたBirdの世界進出担当シニアマネージャーのSam Kernan-Schloss氏は「福岡市との密接な協力体制」を強調していた。また、同社は規制について深く理解した上で慎重に実証実験を行なっていくスタンスだ。
「Birdではミッションとして、世界中の都市をより活性化し、人々の自動車の利用を軽減することで交通渋滞を緩和しCO2の排出量を減らすことを掲げてきている。この実証実験では住友商事、そして福岡市と密接に取り組む。我々が提供する環境に優しいモビリティーの選択肢を福岡市の皆様に提供できるようになることを心待ちにしている」(Kernan-Schloss氏)。
BirdのCEO、Travis VanderZanden氏はプレスリリースで「実証実験を通じ(福岡)市民は、我々の提供する持続可能な交通手段が福岡市のインフラにシームレスに統合することが可能だと知ることができる。また、我々が、利用しやすく人々の移動を便利にし、かつ渋滞を悪化させないマイクロモビリティーのソリューションを提供可能だということを、直接、体験することができる」とコメントしている。
また、米国のBird本社にコメントを求めたところ、担当者からは「現在、日本において電動キックボードは道路交通法の規定により原付バイク扱いとなり、車道を走行する場合は、様々な装備が必要となることは承知している。福岡市は日本で初めて(電動キックボード)に関する規制を緩和する都市になろうとしている」とのコメントを得られた。福岡市長の高島宗一郎氏は2月、内閣府での国家戦略特区会議にて、福岡における電動キックボードの規制緩和を提案している。
日本では電動キックボードのシェアリングサービスのLuupが8月20日、埼玉県横瀬町の「埼玉県県民の森」にて、立教大学の観光学部舛谷ゼミと共同で実証実験を実施。この実証実験が同社いわく「国内初の公道での実証」となるなど、日本でも電動キックボードに関する取り組みが加速してきている。
9月7日より、同じく福岡市の貝塚交通公園にてBirdの競合、Lime(ライム)が実証実験を開始する。LimeのCEO、Brad Bao氏はインタビューで「日本は最も参入しにくい市場だが、最もポテンシャルのある市場でもある」と述べていたが、住友商事いわく、Birdも「日本を注力市場と捉えている」。Birdは福岡市での実証実験が他エリアでのトライアルにも繋がることを期待しているようだ。