非テック企業のAIアプリ構築を支援するプラットフォームPeakが約82億円調達

人工知能(AI)はますます多くのエンタープライズアプリケーションに組み込まれてきている。そうした中、企業、特に非テック企業がよりカスタマイズされたAI意思決定ツールを構築するのを支援するプラットフォームを手がけるスタートアップが、大幅な成長資金を獲得した。英国・マンチェスターに拠点を置き「Decision Intelligence」プラットフォームを構築しているPeak AIは、7500万ドル(約82億円)の資金を調達した。同社は今後もプラットフォームの構築を続け、新たな市場への進出を図り、来四半期には約200人の新規雇用を行うことを予定している。

シリーズCにはかなりビッグネームの投資家が参加している。SoftBank Vision Fund 2が主導しており、これまでの支援者であるOxx、MMC Ventures、Praetura Ventures、Areteもこれに名を連ねている。このグループはPeakの2100万ドル(約23億円)のシリーズBに参加し、同ラウンドは2021年の2月にクローズした。同社の調達総額は1億1900万ドル(約131億円)に達している。評価額については公表していない。

PeakのCEOであるRichard Potter(リチャード・ポッター)氏は、資金調達の迅速なフォローアップはインバウンドの関心に基づいており、同社が行ってきたことはその一端につながっていると語る。

PeakのいわゆるDecision Intelligenceプラットフォームは、小売業者、ブランド、製造業者などが在庫レベルを監視し、パーソナライズされた顧客エクスペリエンスを構築するために使用している。また、より効率的に機能するある程度の自動化機能を備えたその他のプロセスにも使用されており、異なるファクターを相互に測定してよりインテリジェントなインサイトを提供する洗練性も求められる。現在の顧客リストにはNike、Pepsico、KFC、Molson Coors、Marshalls、Asos、Speedyなどが名を連ね、過去12カ月で売上は2倍以上になった。

Peakは、次のようなことに取り組んでいる。AIは、現代の多くの先進的ITアプリケーションやビジネスプロセスの基盤となっているが、もしあなたが組織であり、特にテクノロジーに依存していない組織であるなら、AIへのアクセスとその利用方法は必ずしも自分に合わせたものではなく、他者が構築したアプリケーションによってもたらされることになる。よりカスタマイズされたソリューションを構築するためのコストは往々にして非常に高くつく。Peakによると、同社のツールを使用するユーザーの平均収益は5%増加し、広告費は2倍になり、サプライチェーンコストは5%、在庫保有(企業にとっては大きなコストだ)は12%減少したという。

Peakのプラットフォームは、その問題を解決するための「ノーコード」のアプローチではないことを指摘しておかなければならない。少なくとも今のところは、そのような組織のデータサイエンティストやエンジニアに向けたものであり、彼らが、AIツールから恩恵を享受できるかもしれないオペレーション内の各種プロセスを容易に特定し、それらを比較的少ない労力で構築できるようにすることを目的としている。

また、重要な役割を果たすさまざまな市場ファクターも存在している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を例にとると、企業における「デジタルトランスフォーメーション」の拡大と、消費者需要の高まりやサプライチェーンの逼迫に対応するためのeコマースプロセスの効率化の両方で、企業はよりオープンになり、自動化をインテリジェントに改善するためのツールへの投資に熱心になっている。

これはPeak AIの収益増加とも相まって、SoftBankが興味を示していることの一部だ。この投資家はしばらく前からAIに注目しており、そのような投資先企業に戦略的サービスを提供することを目的として、自社の投資ポートフォリオの1セクションを構築している。

これにはeコマースやその他の消費者向けビジネスが含まれ、Peakの顧客ベースの主要セグメントの1つを構成している。

特に、この分野に特化した最近の投資の1つが2021年に入ってマンチェスターでも行われており、D2Cビジネスのためのソフトウェアを開発し運営するThe Hut Groupの7億3000万(約803億円)ドルの株式を取得している(将来的にはさらに16億ドル[約1760億円]を取得する可能性もある)。

SoftBank Investment Advisersのシニア投資家Max Ohrstrand(マックス・オーストランド)氏は声明で次のように述べている。「私たちは、将来の企業がバリューチェーン全体を最適化できる集中型AIソフトウェアプラットフォーム上で運営されるという、共通のビジョンを持つパートナーを得ています。これを実現するには新しいタイプのプラットフォームが必要であり、リチャード(・ポッター)氏とその優秀なチームがPeakで構築したものに非常に感銘を受けています。彼らがDecision Intelligenceにおけるカテゴリー定義のグローバルリーダーになるのを支援できることをとても喜ばしく思っています」。

SoftBankの2つのマンチェスター関連会社が協力するかどうかは明らかではないが、そうなれば興味深いシナジー効果が期待できるし、何よりもSoftBankが関心を持っている分野の1つを強調するものになるだろう。

長期的に、Peakがどのように進化し、すでに顧客となっている組織のより幅広いユーザー層にプラットフォームを拡大していくのか、またその展開がどうなるのかを見るのは興味深い。

ポッター氏は、短期的にも中期的にも「技術的な傾向のある人々」が同社製品のユーザーになる可能性が最も高いと考えているという。例えば、マーケティングマネージャーのような人たちはそうしたことをしないだろうと思うかもしれないが、多くのソフトウェアツールの一般的な傾向はまさに、データサイエンティストが使っているのと同じツールのバージョンを構築し、技術に詳しくない人たちが、自分の使いたいものを作るプロセスに関与できるようにすることにある。

「データパイプラインを流す能力を民主化し、それらをアプリケーションで動作するように最適化できることが重要だと考えています」とポッター氏は付け加えた。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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