非動物性乳製品を開発する英国のBetter Dairyが2.2億円のシード資金を調達

Entrepreneur First(EF)から創業したアニマルフリー(非動物性)の乳製品を開発する英国のスタートアップであるBetter Dairy(ベターデーリー)は、160万ポンド(約2億2000万円)のシード資金を調達した。ロンドンを拠点とする同社は現在、生産プロセスに動物を使用せず従来の乳製品と「分子的に同一」な製品を開発する研究開発段階にある。

このシードラウンドはHappiness Capitalがリードした。この分野の他の投資家も多く参加した。その中には、さまざまな匿名のエンジェル投資家に加え、CPT Capital、Stray Dog Capital、Veg Capitalが含まれている。Better Dairyは2022年初頭までに最初の製品を商品化することを目指しており、研究開発の取り組みを加速するために資金を使用すると述べた。

Better Dairyは、インペリアルカレッジロンドンの卒業生であるJevan Nagarajah(ジャバン・ナガラジャ)CEOとChristopher Reynolds(クリストファー・レイノルズ)CTOが2019年に創業した。2人はEFの企業ビルダープログラムでペアを組んだ。同社はテクノロジーの進歩を利用して、持続可能とはいいがたい乳製品市場に挑んでいる。ナガラジャ氏はRocket Internet、SumUp、Rituaでの仕事や、初期の「ダークキッチン(配達専門の飲食店)」スタートアップのShare Diningの設立など、テクノロジー企業で豊富な経験がある。一方レイノルズ氏は、バイオインフォマティクスと合成生物学の博士号を有し、ポスドクとしての経験も豊富で、化学と生化学にまたがる自然科学の学位も持つ。

ナガラジャ氏は動物ベースの酪農が「持続可能とはいいがたい」と述べ、毎年17億トン以上のCO2を大気中に放出し、わずか1リットルの牛乳の生産に650リットルの水を必要とすると指摘する。「乳製品自体には母牛の搾乳プロセスで使う成長ホルモンや抗生物質などの不必要な汚染物質が含まれているため、人間の消費には最適ではありません」と付け加えた。

植物ベースの代替品が人気を集めているが、ナガラジャ氏はそれらが完全な解決策ではなく、風味、食感、栄養の点で欠点が多いと主張する。乳製品に代わる植物ベースの代替品は市場シェアを獲得できるかもしれないが、既存の7000億ドル(約73兆円)の乳製品業界とサプライチェーンを「根本的に」変えられるとは考えていない。そこでBetter Dairyの登場となる。

「代わりに、酵母の発酵と生物学により、従来の乳製品と分子的に同一の製品を製造しています」とナガラジャ氏は説明する。「私たちはビール醸造と非常によく似たプロセスに従っていますが、私たちの場合、最終的な結果はビールではなく大量の乳製品になります。この製造プロセスは一見未来的ですが、実際にはレンネットなどの食品製造用の酵素の製造や、インスリンなどの多数の医療製品の製造にすでに使用されています。私たちはそれに基づき開発を進めているにすぎません」。

Better Dairyはまだ研究開発プロセスの初期段階にあるが、ラボで最初の乳製品サンプルを作り出すことに成功した。最初の課題は、酵母を操作して最初の乳製品の概念実証を達成することだった。「これにより、私たちは商業的に実行可能な製品に到達するための明確な道を特定できたと信じています」とナガラジャ氏はいう。「私たちのマイルストーンのいくつかは製造能力のスケールアップなどの教科書的なものですが、克服する必要がある主要な課題は、エンド・ツー・エンドの生産プロセスの最適化周りです」。

それは、Better Dairyの共同創業者であるナガラジャ氏が説明するように、乳製品が比較的低コストの商品だからだ。既存の乳製品市場に真の革新を起こすには一定レベルの効率を達成する必要がある。そうしなければ、より良い乳製品の生産を成功させることに関してリスクを抱えながら、全体的としては非現実的な高い価格設定のために失敗することになる。

「私たちは現在、乳タンパク質に注力していますが、範囲を脂肪にまで拡張することも視野に入れています」とナガラジャ氏はいう。「主な乳タンパク質であるホエイとカゼインには多くの構造的および栄養的利点があり、何千もの食品の成分として使用されています。それらはチーズのような乳製品の食感を実現するにあたり重要になりますが、スープや調理済みの食事、焼き菓子やペストリー、チョコレートやスイーツ、パスタやパンにも多用されています。ビーフバーガーやチキンナゲットなどの製品分野にも参入して、タンパク質含有量や食感を高めます」。

「私たちの意図は当初、より良い乳製品という波を作ることでした。私たちの野心は、乳製品と非乳製品のカテゴリーにまたがる乳製品サプライチェーン全体の変革を目標に成長しました。人間が気づかないうちにビーガン(菜食主義者)になる世界を作るというのが私たちのビジョンです」。

カテゴリー:フードテック
タグ:Better Dairy資金調達

画像クレジット:Better Dairy

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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