顔認識技術のKairosを追い出された創業者ブラッキーン氏が諮問委員として復帰、偏向問題に取り組む

顔認識のスタートアップ企業Kairos(カイロス)の創業者で、2018年に更迭された元CEOのBrian Brackeen(ブライアン・ブラッキーン)氏が同社に復帰した。ブラッキーン氏は現在、同社の科学諮問委員会の議長を務めており、顔認識技術による人種的偏見の問題を解決し、排除することに貢献しようとしている。

それはKairosの明確な使命でないが(同社の使命は企業に認証ツールを提供することだ)、アルゴリズムの偏りは同社が、特にブラッキーン氏が長い間取り組んできた問題だった。

しかし、ブラッキーン氏が解任されるまでの間に起こったことや、その後の出来事は、非常に大きな旋風を巻き起こした。

2018年、Kairosの取締役会は、故意による不正行為があったとして、ブラッキーン氏をCEOの座から強制的に退かせた。Kairosはブラッキーン氏を自分が設立した会社から追い出しただけでなく、会社資金の不正流用や株主を欺く行為があったとして、同氏を訴えた。

当時、ブラッキーン氏はこの出来事を「お粗末なクーデター」と称し、疑惑を否定していた。その後、ブラッキーン氏はKairosを反訴し、同社とそのCEOであるMelissa Doval(メリッサ・ドーバル)氏が詐欺的行為によって意図的に彼の信用を毀損したと主張。2019年にブラッキーン氏とKairosはこの一連の訴訟において和解し、ブラッキーン氏はその後、妻のCandice Brackeen(キャンディス・ブラッキーン)氏とともにLightship Capital(ライトシップ・キャピタル)を立ち上げる

Kairosに復帰してから、すでにブラッキーン氏はKairosがBias APIと呼ぶものに注力するように指示している。同氏によれば、このAPIは企業や会社がアルゴリズムの偏りを検出し、対処することを容易にするために設計されたものだという。

ブラッキーン氏は、Lightship Capitalで手一杯なので、Kairosにフルタイムでは戻ったわけではないが、四半期ごとのミーティングでは全般的な舵取りを任されていると、同氏はいう。

過去のドラマにもかかわらず、ブラッキーン氏はKairosを今でも自分の子どもだと考えていると、TechCrunchに語った。ブラッキーン氏の更迭後にCEOに任命されたドーバル氏や、訴訟の先頭に立った元COOのMary Wolff(メアリー・ウルフ)氏のような人々が、会社からいなくなったことも注目に値する。

「まず、Kairosのチーム、投資家、ファンに対する責任を常に感じるということです」と、ブラッキーン氏は復帰の理由を語った。「その多くには、私が単独で責任を負っていました。第2の理由は社会です。この社会において偏見は、Twitter(ツイッター)の画像のトリミングから、黒人の手では空気乾燥機が作動しないことまで、あらゆるものに見られます。これは、社会がすべての人にとって公平ではないということを痛感させます。困難な問題は、AIがより多くの製品に組み込まれるようになると、あらゆる製品に偏りが見られるようになるということです。大規模なデータセットと長年のIPを持つKairosは、そのようなディストピア的な未来から私たちを救う会社でなければなりません。私はその戦略をリードする唯一の立場にいます」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Kairos顔認証差別

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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