顧客エンゲージメントのSalesLoftが103億円調達、評価額は1100億円超

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの中、ウイルス蔓延を防ぐためのソーシャルディスタンス要請によって多くの人々がオフィスを離れることを余儀なくされている。現在、ますます多くの企業と人々がリモート、分散、バーチャルの業務形態への永続的転換が進むと信じている。米国時間1月6日、そんな変化の中、デジタル販売で営業担当者を支援するツールを開発したスタートアップが需要に応えるべく巨額の資金を調達した。

SalesLoft(セールスロフト)はジョージア州アトランタ拠点のセールスプラットフォームで、AIベースのツールを提供して販売員が販売プロセスをバーチャル化する手助けをする。顧客の開拓からフォローアップ、販売までをバーチャルコーチングツールを使って支援し、販売後のサポートにも協力する。このほど同社は1億ドル(約103億1000万円)の調達ラウンドを完了した。

会社の共同ファウンダーでCEOのKyle Porter(カイル・ポーター)氏は、同社の資金獲得後の会社価値が11億ドル(約1134億4000万円)に達したことをTechCrunchに明かした。前回の評価を大きく上回る金額だ。2019年4月、世界的健康パンデミックのはるか前に、同社はシリーズDラウンドで7000万ドル(約72億2000万円)を調達し、評価額は6億ドル(約618億8000万円)だった(未訳記事、数字は当時本誌が同社に近い筋から確認した)。

最新のラウンドをリードしたのはOwl Rock Capitalで、既存出資者のInsight Partners、HarbourVestおよびEmergence Capitalも参加した。Emergence Capitalはエンタープライズ指向のスタートアップに特化したベンチャーキャピタルで、Zoomをはじめとする多くのスタートアップの早期出資者として知られている。

これでSalesLoftの総調達額は2億4500万ドル(約252億7000万円)となり、これはどんなスタートアップにとっても印象的な金額であるだけでなく、シリコンバレーではなくジョージア州アトランタ発であることが注目に値する(同州は現在上院議員選挙決選投票が争われていることでも注目を集めている)。

会社はここ数年爆発的な成長を続けており、いわゆる「セールスエンゲージメント」と呼ばれる分野の代表的存在となっている。セールスエンゲージメントとは、販売担当者の顧客(あるいは潜在顧客)への販売力を高めるためのツールで、たとえば対話をリアルタイムでモニタリングすることで、プロセス改善のためのコーチングや売り口上を支援する補足コンテンツの助言を行うほか、記録や対話を管理するための基本的なソフトウェアなどを提供する。

パンデミックが起きる以前から、これはエンタープライズソフトウェアの重要な成長分野であり、対面およびオンライン / デジタル両方の販売担当者がこの種のツールを使って競争力を高めていた。しかし、中心はどちらかというとインサイドセールス(大型購入に特化したB2Bセールス)だった。Porter氏は新型コロナウイルスの影響を、すでに強かったトレンドを加速する「追い風」と評した。

「新型コロナの効果はデジタル販売効果による追い風です」と彼は言った。「すべての販売業者が一夜にしてリモートになりました。しかしランプを飛び出した魔神は元には戻りません。つまり、いまやすべてのセールスがインサイドセールスだということです。ターゲットがミドルオブファネル(課題を特定した見込み客)であれアップグレードであり買い替えであれ、我々は記録に基づくエンゲージメント・プラットフォームとしての地位を確立しようとしています。すべてがデジタルになり、すべての売り手がさらに成功を求めているからです。

同氏は、SalesLoft自身の販売サイクルがパンデミック以来40%改善されたと付け加え、同社の開発しているツールの「緊急性と必要性」を反映していると語った。

もう1つ変わったのが、SalesLoftが対象とする顧客の種類だ。当初はミッドマーケット(中堅企業向け)に特化していたが、もっと大規模なエンタープライズが加わってきたことでそれが変わった。Google(グーグル)、LikedIn(リンクトイン、SalesLoftの出資者で戦略パートナー契約も結んでいる)、Cisco(シスコ)、Dell(デル)、IBM(アイビーエム)はいずれも顧客であり、Cargill(カーギル)、3M(3M)、Stadard & Poor’s(スタンダード・アンド・プアーズ)などの「主流」企業も数多く顧客になっている、とPorter氏は語った。

それを受けてSalesLoftは、これまでの主力であった「セールスエンゲージメント」という基本路線を超えるさらに大きなソリューションの開発を進めている。同社の競争相手は多岐にわたり、Clari(未訳記事)、Chorus.ai(未訳記事)、Gong(未訳記事)、 Conversica(未訳記事)、Afiniti(未訳記事)、Outreach(アウトリーチ)のほか、Salesforce(セールスフォース)のような大物もいる。中でもOutreachはコロナ禍中に大型ラウンドを実施し、2020年6月に評価額13億ドルで5000万ドル(約51億6000万)を調達(未訳記事)し、市場需要の大きさを示した。Porterは、SaleLoftの大きなセールスポイントは、ますますエンド・ツー・エンドになるソリューションを顧客に提供することであり、あちこち見て回る買い物を減らすことだと語った。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SalesLoft資金調達

画像クレジット:Chainarong Prasertthai / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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