高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用

高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用高知工業専門学校(高知高専)を中心とする10校の高専が開発した超小型人工衛星「KOSEN-1」が、市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の制御に使うオンボードコンピューター(OBC)として常時運用するという宇宙技術実証に成功した。

KOSEN-1は、10センチ四方の立方体を2つ重ねた大きさで、重量は2.6kgという超小型人工衛星(2Uキューブサット。サイズ10×10×23cm)。以下に挙げる10校が共同で開発した、木星が放射する自然電波の観測のための最新技術の実証を目的とした木星電波観測技術実証衛星だ。2018年にJAXAの革新的衛星技術実証2号機の実証テーマに選定され、50名以上の高専生が参加して2年半をかけて開発。2021年11月、JAXAのイプシロンロケット5号機で打ち上げられた。

開発参加校

高知高専
群馬高専
徳山高専
岐阜高専
香川高専
米子高専
新居浜高専
明石高専
鹿児島高専
苫小牧高専

今回実証に成功したのは、超小型で省電力な市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の心臓部となるOBCに使い、宇宙で運用するというもの。このOBCと連動したカメラによる地球の写真撮影にも成功した。

KOSEN-1から撮影された地球

CM1のプログラムには、プログラミング言語Pythonを利用しているという。そのCM1とPythonの組み合わせには、いくつもの利点がある。まずはCM1のOSがオープンソースソフトウェアのLinuxで、OS本体だけでなくソフトウェアなどの膨大なリソースが自由に使えること。CM1は安価な市販のマイコンボードなので、ハードウェアのシミュレーションが容易に行えること。さらに、やはりオープンソースのプログラミング言語Pythonを使うため、インターネットで共有しながらプログラム開発が行えること。これらにより、多くの高専生が参加する画期的な「分散型OBCソフト開発」が実現できた。

OBCに使用された「Raspberry Pi Compute Module 1」

今後KOSEN-1では、「デュアルリアクションホイールによる超高精度姿勢制御」と「木星電波観測用6.6m長ダイポールアンテナ展開技術」の実証を宇宙で行うことにしている。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。