高級ホテル予約のrelux、創業者の古巣リクルートから3.3億円調達–10言語対応でインバウンド需要狙う

高級旅館・ホテルの宿泊予約サイト「relux」を運営するLoco Partnersは9月5日、リクルートホールディングスなどを割当先とした第三者割当増資を実施した。調達額は3億3000万円、バリュエーションは非公開となっている。調達した資金をもとに事業開発担当者やエンジニアの採用を進める。Loco Partners代表取締役の篠塚孝哉氏はリクルートの出身。古巣からの調達となる。

また今回の増資の発表とあわせてグローバル対応を強化する。同日より10カ国語対応に加えて、12種類の通貨での予約決済サービスを開始する。

reluxは2013年9月にサービスを開始した宿泊予約サイト。同社の社員が現地を訪れ、100項目におよぶ独自の審査基準を満たした高級旅館や高級ホテルのみ厳選して掲載している。現在国内200件の宿泊施設の予約に対応している。

ユーザーは30代から40代が中心。客単価は9万円前後で、会員数は7万人。これまでは月1000〜2000人程度の会員増があったが、直近数カ月でその勢いは加速しているそうだ。会員は毎月30%ほど増加。売上高は非公開ながら、毎月30%増となっているそうだ。

ちなみに同社では、宿泊施設に満足しなかったユーザーに対する返金保証制度を用意したのだけれども、それを8月に終了している。その理由は「サービスを開始して1年半、1件も返金が発生しなかった」(篠塚氏)からだそうだ。また最低価格保証をしており、他の予約サイトなどより価格が高い場合は差額返金に対応するとしている。

古巣からの資金調達

前述のとおりだが今回の調達は、篠塚氏の古巣(篠塚氏のキャリアについてはこちらを参照)であるリクルートグループからの出資となる。篠塚氏は宿泊予約サイトの「じゃらんnet」に携わっており、既存事業と競合するため(reluxは同社がキュレーションした宿泊施設のみに厳選した予約サイト。一方でじゃらんは2〜3万件の宿泊施設を集めている)、リクルート社内では挑戦できないビジネスだからこそ起業して自らreluxを立ち上げた同社がなぜここでリクルートからの出資を受け入れたのか。

これについて篠塚氏は、「リクルートやじゃらんのアセットをうまく活用していいと言われている。通常のベンチャーキャピタルであれば人や事業会社の紹介はしてもらえるが、事業会社ではないのでそこまでで終わってしまう」と説明する。またアセットを借りられる一方で、ブランド的には独立したサービスを展開するという。またリクルートへのバイアウトについては「考えていない」(篠塚氏)とのことだが、リクルートとしては、まさにイノベーションのジレンマで実現できないreluxと近い距離に置いておきたいという狙いはあるだろう。

海外旅行代理店と組みインバウンド需要を狙う

また今回、英語、スペイン語、中国語(繁体字)、中国語(筒体字)、タイ語、韓国語、ベトナム語、アラビア語、インドネシア語、フランス語に対応。さらに円のほか、USドル、ポンド、カナダドル、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、ユーロ、元、バーツ、ウォン、ドン、ルピアでの決済にも対応する。

これはもちろん海外からのインバウンド(訪日旅行)需要を狙ったものだが、ロコパートナーズでは今後訪日旅行専門の代理店に管理画面を提供し、代理店経由でreluxの予約ができるようにしていくそうだ。すでにシンガポールのほかアジア圏の旅行代理店との交渉を開始している。

「東京オリンピックも控えているが、訪日旅行はホットになっている。それを加速したい。日本の旅館やホテルはサービスレベルが高いのに、まだまだ観光後進国。そのギャップを埋められるようなサービスにしていきたい」(篠塚氏)


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TechCrunch Japan

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