1度は退場した犯罪報告アプリVigilanteがCitizenとして復活、「事件報告」ボタンは削除予定

Vigilante(自警団員)アプリを覚えているだろうか?この論争を呼んだ犯罪報告アプリは、リリース後間もない昨年の11月にAppleStoreから追い出された。Appleが、このアプリは一般市民を所謂…自警主義(vigilantism)に巻き込むと判断したからだ。そのアプリが、異なるブランドとして戻ってきた。ニューヨークで運営が始まった新しい”Citizen”アプリは、リアルタイム犯罪レポートを911コールに基いて送ってくるだけでなく、利用者に犯罪現場のライブストリーム配信とコメントを行う手段を提供する。

Vigilanteアプリは、そのローンチに際しブログ上で、「平均的でごく普通の」市民たちが「集団で」犯罪の問題に取り組むべきだという元警察官の言葉を引用していた。「自警団員」というアプリの名前は、そのユーザーたちに、自分たちを非常に危険な状況に晒したり、あるいは警察 抜きに事態に直接対処することを後押しをするかのような響きがあった。

新しいCitizenアプリでは、ユーザーによる事件への直接の関与のトーンは薄まっている。Citizenはその代わりに、ユーザーが犯罪や事件のライブストリーミングを行い、他の人びとがそれ視たりコメントを書くことを促している。またアプリの説明のために、「決して犯罪現場に近付かないこと、事件に干渉しないこと、警察の邪魔をしないこと」を「強く指導する」ウィンドウがポップアップされる。

しかし、911コール(日本の110番に相当する緊急通話)からキュレーションされるアプリのコンテンツは、いまひとつ基準がはっきりしない。

「ニューヨークでは1日あたり1万件の911コールがありますが、私たちは平均して300から400件を通知します」と語るのはsp0nのCEOであるAndrew Frameだ(sp0nはアプリの開発メーカー)。

同社によれば、アプリによってリストされるのは、「公共の安全」に対する脅威に限られるということだ。

まだ作業途中であるからという理由で、使われている審査基準は公開されていない。Frameは「不審な人物」、「不審なバッグ」あるいはスーツケース、および薬物事件に関するコールは、現時点ではアプリには示されていないと述べている。

しかし、アプリでは、地図上の赤い点として事件の発生を知ることが可能なので、特定のエリアを回避するための、ある程度の役割を果たすことができる。これは仕様によるものだ。

この犯罪マッピングへの取り組みは、公開データを用いて白人たちが、「危険」と想定される隣人である非白人たちを避けることを助ける恐るべきアプリ “GhettoTracker”や“SketchFactor”とは少々異なったアプローチだ。しかしCitizenは911に通報される現在の事件を表示し、それが継続している間プッシュ通知で警告を送り続ける。

こうして、もし「Applebeeで喧嘩が発生」(これは今日(米国時間12日)起きた実際の事件だ)したなら、その店へ食事に行くことを控えることができる。

しかし The Outlineの記事が、ユーザーが犯罪や事件をその場で報告できる機能は生きたままであることを指摘している。そして実際に、新しいアプリには「事件報告」ボタンが備わっているのだ。

報告される全ての事件が、アプリで再通知される基準を満たすわけではなく、この機能は殆ど使用されることはない、とFrameは述べている。しかし、それは事実存在していて、アプリの意図は不明瞭だ(それはユーザー生成コンテンツを欲しているのか、いないのか?)。 課題は残る。

Frameによれば、このアプリの次期バージョンではこのボタンは削除されるという。

「誤解が多いようです。うまく説明できるようにする必要がありますね」と彼は言う。「私たちはとても慎重に事を運んでいます。それが通報ボタンがアプリの奥に埋め込まれている理由です。もし『事件報告』ボタンがアプリの中心に陣取っていたなら、アプリを開けた瞬間にそれを押したくなる誘惑に駆られる、強調ポイントとなるでしょう」。

外部から見ている人には明らかだが、人びとが「不正投票」をスマートフォンで通報するが奨励されているトランプのアメリカでは、ユーザーが各自の判断で犯罪を通報する機能をもったアプリの提供は危険な領域に向かいかねない状況だ。Nextdoorで起こったことを見てみるが良い、アプリ内での人種プロファイリングが蔓延してしまったために、同SNSはそれを防ぐために大幅な作り直しを余儀なくされたのだ。

「このボタンを削除することは約束しますよ」ユーザー報告ボタンがアプリのコアミッションを損なうことを認めながら、Frameは言った。アプリの使命は「犯罪を減らすことで、人びとをつつきまわすことではありません」と彼は主張します。

しかし The Outlineは他にも利用者に事件のライブストリーミングを促すことは、別の問題に繋がる可能性があることを指摘している。記事では、WITNESS(証人)のプログラムディレクターであるSam Gregoryの言葉を引用しながら、重要な証人の身元が判明してしまう可能性について指摘した。WITNESSは、人権侵害に繋がる可能性のある動画を倫理的に正しく用いる方法を訓練する非営利団体だ。彼はまた、Citizenが「誰かが暴行されている、信じれなはいほど屈辱的な動画」や、「誰かを、本当は無罪なのにあたかも有罪であるかのように写した動画」の共有に使われかねない、という懸念を表明している。

Frameはこれらの課題に対しては、最初そうした事態はまだ起きていないと答えただけだった。

より詳細な回答を迫ると、彼は以下のように付け加えた「これは透明性のあるアプリなのです。透明性がバイアスを取り除きます。透明性が、起きたことに関する不安と周りのすべての誤解を解消します。透明性の結果は、私たちにはコントロールできません」。

Frameに、デイヴ・エガーズの「ザ・サークル」を読んだことがあるかと尋ねたが、彼の答は「ない」ということだった

もうすぐ映画が公開されるこの小説には、Googleのようなハイテク企業が登場し、それが提供する「SeeChange camera」を人びとは24時間装着している。そうした人びとの中には「透明性」を強調したい政治家たちも含まれている。それらのカメラは、市民たちによっても、密かにあらゆる場所に設置されているのだ。

基本的に「1984年」の焼き直しだが、「ビッグブラザー」がクラウドソーシングになっている点が異なっている。

「私たちは、全ての場所が適切にモニターされているとは思っていません」とFrameは主張する。「このアプリでライブ配信を行って良いのは、事件が起きたときだけです」と彼は言う。

しかし、スマートフォンのおかげで、カメラはどこにでも存在している 。そして、Citizenの考える前提は、犯罪を減らすためには、公共の安全を脅かす犯罪はすべて集約され、ストリーミングされ、そして罰を与えられるべきだというものだ。

しかしながら、犯罪を減少させるためには、雇用、高賃金、そして教育の方が、よりよい手段だと主張することもできるだろう。

Cizizenは、Peter ThielのFounders Fund(FF Angelを経由して)、Slow Ventures、RRE Ventures、Kapor Capital (NAACPの元CEOであるBen Jealousを経由して)、その他のエンジェル投資家たちから、300万ドルのシード資金を調達している。

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(翻訳:Sako)