コンピューターが完璧な記憶力を持っているとすると、なぜコンピューター上での探し物はあんなに大変なのだろうか?もしかしたら、私たちの記憶とは違った働き方をするからなのかもしれない。Atlas Recalは、”全方位検索機能”を武器にこの問題を解決しようとしている。このアプリは、ユーザーが全てのデバイスでやったことや見たものにインデックスを付け、人間の記憶の仕方に沿って情報を整理することができる。そして、本日からAtlas Recallのオープンベータテストが開始された。
私は今回、Atlas Recallの開発元であるAtlas Informatics CEOのJordan Ritterと、マーケティング担当ヴァイスプレジデントのTravis Murdockに話を聞くため、アプリのローンチ前に、シアトルにある彼らのオフィスを訪れた。以前はNapsterに勤務していたこともあるRitterは、会社や製品の成り立ちについて説明してくれた。要点をまとめると、資金的な自由が生まれたことで、新しい冒険に乗り出すことができ、彼はすぐに検索機能の改善に取り組みはじめたのだ。
「私は自分がしたことを、デバイスごとではなく、複数のデバイスをまたいで覚えているんです」と彼は話す。しかし、私たちも間違いなく経験したことがある通り、それぞれのサービスや検索エンジンがアクセスできる領域は限られている。
Googleはインターネット上を検索するためのもであり、Facebookはプライベートの写真や友人との記録を残すためのものだ。Outlookは連絡先やメールや予定を記録するためにあり、Spotlightではローカル上のファイルを検索することができる。そしてSpotifyは音楽やプレイリストを管理するためにある。この他にも、同じような例はいくらでも挙げることができる。
そしてどの辺り(もしくはどのプラットフォーム上)にデータがあるかわかった後も、実際にそこへ移動して探しているものを掘り起こさなければならない。Slackのどのチャットルームにミーティング時間を記載していただろうか?どのスレッドにファイルが添付されていただろうか?ルームメイトが話していたプレイリストはどれだろうか?といった具合に。
「検索には大きくわけてふたつの種類があります。ひとつは、今まで見たことがない新しいものをみつけるための検索。そしてもうひとつが、どこにあるかは分からないけど、絶対に見たことがあるものをみつけるための検索です」とRitterは語る。
Atlas Recallは、後者を現存するどのサービスよりも上手くこなすために開発されたのだ。このアプリを使えば、ユーザーがコンピューターやモバイル端末上で見る全てのものにインデックスが付けられ、あとで検索できるようになる。ウェブ上にあるもの、Facebook上の情報、Outlookの中身、ローカルファイルなどユーザーが見るもの全てだ。びっくりする前に以下を見てほしい。
- 検索対象のサービスにアクセスする必要はなく、API連携も不要
- やりとりされる情報は常に暗号化される
- ユーザーはアプリが記録する対象を簡単にコントロールできる
さらにAtlas Recallは、検索対象となるアイテムやそのコンテンツだけではなく、関連情報まで記録することができる。いつ・どの順番でそのアイテムを見たか、当時他にどんなウィンドウやアプリを開いていたか、アクセス時ユーザーがどこにいたか、その情報は以前誰とシェアされていたといった情報の他にも、たくさんのメタデータが関連情報には含まれている。
「シアトル・シーホークス 試合」といった曖昧なワードで検索すると、すぐにさまざまな領域をまたいだ全ての検索結果が、関連度の高いものから表示される。このケースで言えば、メールで受け取ったチケットや友人と立てた試合観戦の計画、Facebookの招待状、以前読んだチームに関する記事、フォットボールのファンタジースポーツチームのページなどが検索結果に含まれるだろう。そしてそのうちどれかをクリックすると、すぐに探している情報のもとへたどり着くことができる。
ほかにも、例えばユーザーが空港で読もうとした記事を保存し忘れた際にも、「LAX(ロサンゼルス国際空港)」と検索すれば、空港にいる間にやったことや見たもの全てが表示される。ファイルがノートパソコン、デスクトップ、Google Docs、Dropbox上に散乱する中、同僚へプレゼン資料や関連情報を送ろうとしたときも、一か所からファイルを検索し、必要なものを選び出すことができる。
コンテンツのタイプや期間のフィルターを使って、検索結果を絞り込むこともできる。さらには、記録してほしくないウェブサイトやアプリも選べるため、確定申告の作業中や秘密のポエムを書いているときなどは、一時的に記録をストップすれば良い。
一度試してみると、このアプリが今後すぐに欠かせないツールになると感じることができる。私は記憶力が悪い方だが、もしそうでなかったとしても、ひとつのPDFファイルを探し出すために、仕事中に4つのウェブアプリを順番に確認したくはない。どこにそのファイルが”生息”しているかに関わらず、プロジェクト名を入力するだけで、自分と同僚が送受信した全ての関連情報がすぐに表示されるとしたら、どんなに素晴らしいことだろう。
これがコンピューター上でのAtlas Recallのインターフェースの様子で、似たような機能がモバイル版にも採用される予定だ。さらにモバイル版では、GoogleやSpotlightとAtlasを連携させることで、いつも通り検索すれば関連情報が全て表示されるようにも設定できる。
全てのデータはもちろんクラウド上に記録されるため、ここまで詳細なオンライン行動の記録が、誰かのパソコンに保存されることを心配に思う人も中にはいるかもしれない。Ritterも今後ユーザーとAtlas Informaticsの間で、信頼関係を築いていかなければならないと認めている一方で、元セキュリティエンジニアとして、セキュリティ面にも真剣に取り組んでいると彼は話す。
プライバシーについて、GoogleやFacebookはユーザー情報をもとに広告を販売して収益を挙げているものの、Atlas Informaticsではデータの中身が確認されることはない。さらに同社はフリーミアムモデルを採用する予定で、広告掲載は検討されていない。そもそもプライバシーに関する保証なしでは、誰もこのようなサービスを利用しないだろう。そのため、Atlas Infromaticsは誰(ユーザー)がデータを所有して、どのようなデータ(コンテンツではなくメタデータ)に同社がアクセスできて、利用をやめるときには何の痕跡も残らないようにするということを名言している。
Microsoft、Nathan Myhrvold、Aspect Venturesから調達した2070万ドルの資金を使って、Ritterと彼のチームは”私たちのデジタルライフの検索可能な写真記憶”を実現しようとしている。なお、オープンベータにはこちらからサインアップできる。おわかりの通り、バグを減らし、インターフェースを改良するほか、ユーザーが好きな機能や使っていない機能、見もしない機能を発見することなどが、このバージョンの目的だ。アプリは現在macOSとiOS向けに公開されており、Windows 10とAndroid向けも近日中に公開予定だ。
有料版には、グループ間での共有機能や、管理者向けツールなどの追加機能が搭載される予定だが、Atlas Recallの基本機能は無料で提供され続ける。
今後数週間のうちにこのアプリをテストして、機能性やパフォーマンス上の問題、このアプリを気持ち悪く感じるようになるかなどを見ていきたい。読者の皆さんも是非自分で試してみてほしい。Atlas Recallは次の必須デジタルツールになる可能性を秘めている。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)