メディテーションアプリの「Calm」や、オンラインセラピーの「Talkspace」など、米国で先行する“メンタルヘルステック”関連のサービス。日本でも、働き方改革やストレスチェックの義務化など、政府の施策も相まって、そろそろ花開こうとしているようだ。
AIとのチャットを利用した個人向けの感情ログアプリ「emol(エモル)」や法人向けのメンタルケアプラットフォーム「emol work(エモルワーク)」を提供するemolは1月14日、「国内メンタルヘルステックカオスマップ 2020年版」を公開した。
従業員のメンタルヘルス支援領域にサービス多数
カオスマップでは、国内で展開される70あまりのメンタルヘルステックサービスが、7つのカテゴリに分けて紹介されている。
このうち、とりわけ多くのサービスが取り上げられているのが“HR”で括られた、企業の人事部門向けの分野だ。emol workのほかにも、従業員のメンタルヘルス分析・ケア支援を行うもの、エンゲージメントや離職リスクを可視化するもの、2015年から義務化が始まったストレスチェックを活用して組織のメンタルヘルスケアを行うものなど、健康経営を意識した、さまざまなソリューションが並ぶ。
emolは「働き方改革や健康経営に関心を持つ企業が増えているという背景から、企業向けメンタルヘルスサービスへのニーズが高まっている」として、「従業員のメンタル状態は組織へのエンゲージメントにも深く関わっており、さまざまなHRサービスが展開されている」と企業のメンタルヘルスを取り巻くサービスの傾向を説明する。
emol自体も、当初リリースした個人向けアプリに加えて、2019年12月に法人向けのemol workのベータ版をリリースしたばかり。emol workは、従業員のメンタルケアを通じて組織の生産性向上をサポートするためのプロダクト。簡単なアンケートを通じて従業員のメンタル状態を可視化し、アプリを通じて個々の従業員にパーソナライズしたメンタルケアのトレーニングメニューを提案するというものだ。
また、カオスマップ公開と同時に同社は、emol work内に組織内のメンタリングを支援する「emol team」をリリース。従業員のメンタル状態に合わせて、適切なタイミングで任意のメンターに1on1ミーティングの申請ができるようになった。メンターには、emol workの管理者向けトレーニングを履修済みの管理者のみが登録でき、emol workを通じてメンター育成もサポートする形となっている。
ロボティクス分野などソリューションの多様化も進む
カオスマップには、そのほかに“CCBT(コンピュータ認知行動療法)”、“カウンセリング”、“体調管理”といった分野に分けて、日本で展開中のサービスが紹介されている。
“CCBT(コンピュータ認知行動療法)”の分野にはemolのほか、「KibunLog」や「selport」といった感情ログをベースにしたメンタルケア支援アプリや、睡眠データ測定・支援の「O:Sleep」、瞑想・マインドフルネスをサポートする「MYALO」や「cocorus」などのアプリ/サービス群が含まれる。
“カウンセリング”のエリアにあるのは、オンラインカウンセリングの「cotree」、AIとチャットで対話する「SELF」、ホログラフィーによるバーチャルアシスタントがADHD当事者を支援する「Holoash」などのサービス。
“体調管理”のエリアでは、女性向けアプリの草分け的存在「ルナルナ」や、スマホカメラで指先を撮影してストレスチェックする「COCOLOLO」、音声からその日の気分をチェックする「じぶん予報」などが挙げられている。
マップ中でちょっと面白いカテゴリとしては“ハードウェア・ロボティクス”の分野がある。ここにはCESでも話題になったしっぽロボの「Qoobo」や“温かい”小型ロボの「LOVOT」も掲載されている。
そのほかマップでは、うつ病患者や家族のためのコミュニティを含む“コミュニティ”カテゴリ、体調に合わせてAIがハーブティーをブレンドする「herbox」などを含む“ハーブ”カテゴリが掲載されている。
カオスマップを発表したemolは「幸せの定義が画一的であった時代は終わり、人それぞれに幸せな人生の定義がある。人のライフスタイルに合わせたさまざまなソリューションが必要とされている時代に変遷している傾向が見られる」とメンタルヘルステック領域でのソリューションの多様化について説明している。