南ドイツ(ブルッフザール)で創業したスタートアップVolocopter(ボロコプター)は、電動の垂直離着陸機(VTOL)の開発と、この機体を都市部でタクシー形式で運用するビジネスモデルを推し進めてきた。商業展開に近づく中、同社はまたしても大型の資金調達を行った。1億7000万ドル(約195億5000万円)を調達し、この資金で同社初のエアタクシーサービスを開始し、おそらくシンガポール、ローマ、パリなどの都市での提供となると発表した。
広報担当者によると、サービス開始時期は、取得する認証の種類と認証をいつ取得できるか次第だ。2023年後半から暮れの間にすべてが完了すれば、最初の都市での商業開始は2024年になる可能性が高い。VolocopterのCEO、Florian Reuter(フロリアン・ロイター)氏は2021年3月に「サービス開始は2年後(つまり2023年)」と話していた。
「当社の目標は、2024年のパリオリンピックまでに商業運航を開始することです」と広報担当者は述べた。
調達した資金はシリーズEの一部で、Volocopterはこれが最初のクロージングだと表現している。プレマネーのバリュエーションは17億ドル(約1955億円)、ポストマネーでは18億7000万ドル(約2150億円5000万円)になるという。同社は筆者に、シリーズEの最終的な調達目標は3億〜5億ユーロ(381億〜635億円)だと認めた。「デューデリジェンス段階にある他の投資家もいますが、次のサイニングラウンドの時期も額もまだわかりません」と広報担当者は述べた。
今回の最初のトランシェは韓国からの新たな投資家であるWP Investmentがリードし、戦略的投資家のHoneywell(こちらも新規投資家)、既存投資家からはAtlantia、Whysol、btov Partnersなどが参加した。現在までにVolocopterは総額5億7900万ドル(約666億円)を調達していて、他の投資家にはGeely、Mercedes-Benz Group、Intel Capital、BlackRockが含まれる。
Volocopterは2017年、Intel(インテル)などの大企業の支援を受け、ドバイで初の自律型の空飛ぶ車のテストを実施し、自動運転車の分野で大きな注目を集めた(IntelもVolopterの自律飛行機能を導入し、自社の大げさなイベントで披露した)。
注目すべきは、現地時間3月4日の資金調達の発表では、自律性や自動運転機能については一言も触れられていないことだ。これは、Volocopterのサービスが開始に近づいていく中で、より現実的なフレームワークがあることを裏付けている。
同社は筆者に、最初の商業サービスが試験的に実施されることを認めた。「VoloCityは、商用サービス開始時に、クルーが乗り込んでの飛行、遠隔操縦、および自律飛行の技術的能力を備えていることになります」と広報担当者は話した。「しかし、パイロットによる飛行の方が、一般に受け入れられやすいと思います。アーバンエアモビリティ(UAM)が浸透し、都市がクルーなしの飛行形態を認める規制を設ければ、徐々に遠隔操縦や自律飛行に移行していくでしょう」。これも、各都市の規制次第だろう。
「今回の資金調達は、非常に魅力的な新興市場において、Volocopterが主導的な立場にあることを証明するものです。我々は、世界中の都市で大規模なUAMを実現するために、技術的にも商業的にも大きな前進を続けています」とロイター氏は声明で述べた。
Volocopterは現在、同社のエアタクシーに使われる3種の機体、VoloCity、VoloConnect、VoloDroneに注力している。欧州連合航空安全局(EASA)から設計組織承認(DOA)を取得した「最初で唯一の」電動垂直離着陸(eVTOL)企業だという。つまり、この分野での成功を狙うLilium、Kitty Hawk、Joby Aviationなどの競合他社が参入する前に、うまくすれば単独ブランドの商業プロバイダーとして、あるいは他の都市交通企業のパートナーとして、市場参入できる可能性があるということだ。
今回のシリーズEはすべて株式による調達だが、Volocopterはより大きな航空機の建造のために多くを負債によっても調達している。2022年初めには、Aviation Capital Group(ACG)と10億ドル(約1150億円)の契約を結び、Volocopterの航空機の販売とリース運用のための資金調達を行った(時機が来れば最大10億ドル=約1150億円を借りられることを意味する)。これは、同社が航空機の完全な認証を取得した後に開始する。
これまでに同社は約1000回の公的および私的な試験飛行を終えている。
また、同社は今回の発表の中で、調達した資金調達で商業運転開始だけでなく、最終的には株式公開を目指す計画だと述べた。
「Volocopterには世界中からすばらしい投資家が集まっており、上場への道を歩み出す前に、いち早く認証を受け、いち早く市場に出るという戦略に集中できるすばらしい立場にあります」とVolocopterのCCO、Christian Bauer(クリスチャン・バウアー)氏は声明で述べた。
この先行者としての優位性と、過去10年間にわたる「空飛ぶ車」の開発努力が、まだ製品の市場性を証明していないにもかかわらず、投資家から今、多くの信用を得ている2つの要因のようだ。
「Volocopterは2021年、ソウルでUAMを飛ばし、世界の都市にいち早くUAMを導入することができると確信しています。ESG投資のリーダーとして、Volocopterを通じて都市の持続可能性を高められることをうれしく思います」と、WP Investmentの会長Lei Wang(レイ・ワン)博士は声明で述べた。また、同社の共同会長であるTiffany Park(ティファニー・パク)氏は、韓国も商業運転開始の一翼を担うことになると付け加えた。
画像クレジット:Volocopter
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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi)