ニューヨークに拠点を置き、Tinder、Vimeo、Matchなどを傘下で運営するInterActiveCorp(IAC)。2015年5月、クロスボーダーM&AによりそのIACグループに参画したエウレカ。いよいよグローバルでの本格的な戦いがはじまるというところだ。11月18〜19日に開催されたTechCrunch Tokyo 2015の最終セッションにはエウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏が登壇し、今後の展開を語った。モデレーターはTechCrunch Japan編集部の岩本有平が務めた。
エウレカはFacebookを利用した恋愛マッチングサービス「pairs」と、写真アルバムやメッセージなどの機能を提供するカップル専用アプリ「Couples」を運営している。pairsは2012年10月のリリースで、会員数は日本と台湾で300万人(そのうち台湾は100万人程度)、これまでのマッチング数は1510万件に上る。そして驚くことに、1分間に25件のマッチングが行われている。これは競合サービスの約8倍の頻度だという。
pairsで出会い、実際に結婚したカップルもいるそうで、赤坂氏自ら「結婚式に参加したり、色紙を書いたりもしている」そうだ。カップル専用アプリcouplesも順調で、10〜20代のカップルの3分の1が使用しており、DAUで40万人のユーザーがいるという。
来年には新サービスも開始
エウレカの売り上げは右肩上がりで順風満帆にも見えるが、自社サービスに関しては小さなピボット(事業を方向転換すること)を繰り返して成長の可能性をを探り続けてきた。2014年までは受託もしていたという。いまやpairsの会社というイメージが強いが、「リクルートの『ゆりかごから墓場まで』という戦略があるが、それをスマートフォンのプラットフォームで作っていきたい」(赤坂氏)と語る。
既存サービスの延長線上には結婚、出産、育児、介護などさまざまな領域がある。赤坂氏は具体的な領域こそ明かさなかったが「来年、1つ新サービスを出したいと思っている」と明かした。また、既存のサービスについては、アジア圏のマッチングサービスを買収することも視野に入れているそうだ。
人のニーズに近く、課金できるサービスを
赤坂氏は2008年に起業し、当時広まりつつあったクラウドソーシングサービス「MILLION DESIGNS」を始めるも、このままでは会社を続けることは難しいと判断し、2012年にはランサーズに売却。また、アプリ検索サービス「Pickie」もうまくいかず、受託の収益に頼っていたという。これらサービスは現在では確かにニーズもあるし、有名となった競合サービスもあるが、当時は「トレンドの2.5歩先をいっている」と感じたという。
こうした経験を経て、「人のニーズの根源に近く、ユーザーが今すぐに課金できるサービスをやっていこうということで、pairsを始めた」のだそうだ。その後の成長はグラフからも見れるように、凄まじい勢いだった。この急成長については、「もともと受託でFacebookのアプリを作っていたりして、いいねを稼いでCRM(顧客関係管理、顧客との関係を構築して満足度をあげること)を向上させることが得意だった」と話した。
買収という選択肢を選んだ理由
2015年5月の買収についての話題に移ると、2014年のうちに意思決定をし、アメリカのIACとも接触を持ち始めたそうだが、結果は「本当に幸せなM&Aだった」と話す。
買収となると、買われるの社員から見れば、社長の退任をはじめとして、社内の状況が悪くなるイメージも少なくない。しかしエウレカでは買収のプレスリリースが出る1時間前に社員を集めて発表したところ、最後には拍手が起こったという。
「IACにジョインをして、これから本当に世界でやっていくということを表現できた瞬間だった」と赤坂氏は振り返る。IACへの売却を決めた理由としては、「資本力とグローバルでのオンラインデーティングサービスのノウハウがすごいことに尽きる。ソーシャルゲームと同じで、オンラインデーティングサービスもユーザーの課金ポイントを作る、エンゲージメントの高いユーザー獲得などノウハウありきなサービスだから」と話す。
ちなみに100億円とも200億円ともウワサされる買収金額の詳細については明かされることはなかったが、IACはNASDAQに上場しているので、年末の決算で明らかになると思われる。
今後の展開については、もちろんアジアでのサービス展開ということになるが、赤坂氏は「オンラインデーティングの領域では1人勝ちはできない。ユーザーは他のサービスにも登録する」と言う。なので、やはり他サービスの買収も戦略としてありうるというのだろう。また、自身の今後については「まずはミッション(アジア1のデーティングサービスを作る)を果たす」とした。