カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の工学部の連中が、生物からヒントを得たソフトロボットの原理により、石ころや砂などの凸凹道をふつうに歩けるロボットを開発した。
柔らかい積層材で作ったロボットの四本の脚は、環境に適応できる。だからセンサーで地表の正確な像を把握する必要がない。平滑でないところに来たら、歩き方をそれに適応させるだけだ。
そのロボットの四つの脚は、3Dプリントした硬い材と柔らかい材から成り、ゴム製の空気袋の伸縮が前進運動を支える。ハーバード大学のGeorge Whitesidesのロボット工学研究室をはじめとして、同様のソフトロボットプロジェクトは過去にもあった。それらにも助けられて、蛸や烏賊のような海の生物にヒントを得たロボットが試作されてきた。
実はこの研究を率いたUCSDの助教授Mike Tolleyは、ハーバードの研究室出身だ。そこで彼は昔、著名なプロジェクトのひとつ、ほぼ全体的にソフトな身体を縮めて狭いところへ入り込める、完全ワイヤレスのX型ロボットを作った。
Tolleyはこう語る: “歩く、と言いたいところだけど、終始すり足だから、歩くと言えば誇大宣伝になる。しかも、起動したら一つの方向へ進むだけだ。でもそれが、おもしろい足並みを作り出す。まるで虫のように、くねくねと波うつ足並みなんだ”。
この研究から、すでに実用製品も作られている。たとえばSoft Roboticsが設計した工業用のグリッパーだ。蛸をヒントにした手だから、ロボット工学に基づく精密な視力がなくても、いろんな形やサイズの物を持ち上げることができる。そしてその脚は、四本ではなく二本で、くねくねした歩みではなく、実際に脚を上げたり下ろしたりしながら動きまわる。
ハーバートのロボットと同じく、圧力を利用する空気袋を使っているが、細かいところはもっと繊細になっている。
Tolleyは話を続ける: “以前は、膨らますと脚がどっちかへ曲がる、という方式だった。でもちゃんとコントロールできるためには、いろんな方向へ曲がれる脚が必要だ。でもそれは、積層材だけでは無理だった。複雑な空気袋を3Dプリントできるようになって、やっと、同じ動きを素早く繰り返すことのできる方法が見つかった”。
最新のシステムでは3Dプリントした空気袋が複数並んでいて、どれとどれを膨らますかで動きのコントロールができる。Tolley曰く、“一つだけ膨らますと、どっちかへ曲がるんだ。さらにもうひとつ膨らますと、360度の曲がり方もできる”。