9割の企業がアーリーステージでエグジット――スタートアップはどの段階で買収されやすいのか

【編集部注】執筆者のJason Rowleyは、Crunchbase Newsのベンチャーキャピタル・テクノロジー記者。

アメリカ国内のシードステージにあるスタートアップから、ランダムに1000社選ぶとしよう。この中から何社がシリーズAまでたどり着くだろうか? そして、シリーズAでの資金調達に成功した企業のうち、何社がシリーズBに到達できるのか? このように企業の段階を追って見ていくと、最後には数社だけが残ることになる。

しかし、各ラウンドまで生き残った企業の割合を求めるだけでは何も見えてこない。もっと重要なのは、途中で資金調達をやめてしまった企業に何が起きたのかということだ。もちろん、廃業も避けては通れない道だろう。しかし、事業売却やIPOのように、喜ばしい理由で次の資金調達ラウンドへ進まなかったスタートアップも存在する。それでは、どのくらいの企業がエグジットを果たしているのだろうか?

この記事では、2003〜2013年の間に設立された、1万5600社のテック企業の資金調達に関するデータをもとに、上記の問いに対する答えを探っていきたい。まずは全体的な生存率について見てみよう。テック業界でスタートアップが生き残っていくことの難しさがわかるはずだ。

急勾配を描くスタートアップの生存率

下図は、プレシリーズAで資金調達を行ったスタートアップのうち、どれだけ多くの(もしくはどれだけ少ない)企業が次なるラウンドへと駒を進めていったかを示したグラフだ。

仮に1000社が見事プレシリーズA(シード/エンジェルラウンド、コンバーチブルノート、エクイティクラウドファンディング等)をクローズしたとすると、そのうち400社ちょっとだけがシリーズAに進むことになる。つまり、私たちのデータによれば、プレシリーズAでの資金調達に成功したスタートアップの約60%はシリーズA以降には進むことができないとわかる。

均等目盛のグラフで見ると、企業数の減少度合いがかなり激しいことはわかるが、シリーズE以降の詳細がわかりづらくなってしまっている。そこで、対数目盛を使ってグラフを以下のように変換してみた。

(使われているデータは最初のグラフと同じだが、このグラフではラウンドを経るごとに企業数が指数関数的に減っていく様子がよくわかる)

上のグラフを見ると、2003〜2013年に誕生したスタートアップのうち、約1%しかシリーズFをクローズできなかったということがわかる。そして調査対象となった1万5600社のうち、シリーズHをクローズできたのは、Pivot3、Smule、Glassdoor、Aquantiaの4社だけだ。

エグジットという選択

先述の通り、企業が資金調達をやめる理由はさまざまだ。

事業をたたまなければいけない場合や、ビジネスが順調に進んで資金調達のニーズがなくなった場合を除くと、スタートアップが次のラウンドへ進まない理由は、買収かIPOのいずれかになる。それでは、企業はどの段階でエグジットする可能性が高いのかを考えてみよう。なお、買収された企業の数はIPOを果たした企業の16倍だったため、グラフでは買収された企業のデータを利用している。

用意したグラフは2つ。1つめでは、実際に買収されたスタートアップのみに焦点をあて、どの段階にある企業が1番買収されやすいのかということを分析している。そして2つめのグラフは、全ての段階を通じて、スタートアップはどのくらいの確率で買収されるのかということを示している。それでは最初のグラフから見てみよう。

どの段階にある企業が買収されやすいのか

どの段階にある企業が買収されやすいのだろうか? 恐らく直感的にもわかるように、株価が1番安いときが買い時なため、買収は比較的早い段階で起きやすい。しかし”早い段階”とはどのあたりを指しているのだろう? 驚くかもしれないが、買収された企業の90%近くが、プレシリーズAから数ラウンドの範囲にいたことがわかった。

プレシリーズA以降に進めなかった企業からシリーズHをクローズした企業を含め、買収された企業のラウンドごとの分布(累計)を示しているのが以下のグラフだ。

段階が上がるにつれて(急激に)企業数が減るため、各ラウンドでエグジットを果たした企業の数を、そのラウンドまでに買収された企業の総数で割っている。これにより、各ラウンドを終えたあとに買収された企業の割合を導き出すことができ、それぞれの段階での相対的なエグジットの起きやすさがわかるようになっているのだ。

念のため繰り返すと、上のグラフはシリーズCをクローズした企業全体の約92%が買収されると示しているわけではなく、資金調達を経てから買収された企業のうち約92%がシリーズCまでの範囲にいたことを表している。つまり、将来買収されることを目標に会社を立ち上げた場合、シリーズCかそれ以降で実際にその会社が買収される確率は10%程度ということになる。

ラウンド別の被買収企業の割合

上のグラフは、既に買収されている企業がいつ頃買収されたのかということを示しているが、さらに気になる問題が残っている。その問題に答えるため、下のグラフでは調査対象となった全てのスタートアップのうち、買収された企業の分布(累計)をまとめている。

買収された企業の割合はシリーズEの段階で約16%の最高値に達し、それ以降はあまり数字に変化がない。結果として、対象企業のうち6社に1社がどこかのタイミングで買収されたということになる。

生存率の低さの理由

繰り返しになるが、企業が資金調達をやめる理由はいくつかある。金銭的に持続可能なレベルに到達した企業や事業をたたんだ企業もいれば、買収やIPOを通じてエグジットを果たした企業も存在する。エグジットの中でも私たちは買収に注目してデータの分析を行った。というのも、実際にほとんどの企業がIPOではなく買収の道を選んでいるとともに、結論を導き出す上では買収された企業の方がデータ量が多かったのだ。

アーリーステージで姿を消す企業が多いことには複雑な背景があるが、ひとつだけ言えるとすれば、早い段階でエグジットのチャンスが訪れる可能性が高いということだ。スタートアップが失敗する要因に関しても同じことが言える。仲間割れやプロダクトマーケットフィット前の資金不足、業績の伸び悩み、単なる不運など、スタートアップの生死を分けるような問題は設立から間もない段階で起きやすい。

その他にも、レーターステージのラウンドは、参加する投資家の種類の違いから「プライベートエクイティ」と呼ばれることもあるなど、この記事で私たちが勘案していないような要素にも留意しなければならない。そのため、実際の状況は上のグラフよりも良いのかもしれないが、そこまで大きくは変わらないだろう。いずれにせよ、資金調達は厳しい戦いなのだ。

ビジネスの成長を妨げる要因の中でも、各ラウンドでの生存率の低さはもっとも大きな影響を持っているかもしれない。そのため、まだレーターステージに達していないものの、次のラウンドに進むのは難しいと感じた場合、可能なうちにエグジットを画策した方が良いだろう。そうしている企業はたくさんいるので、心配する必要はない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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