約2年前に組成された3億2500万ドルの第4号ファンドに続き、Accel Indiaが5号目となるファンドを4億5000万ドルで設立した。これがインドのバブルを象徴しているのか、同国の本当のチャンスを表しているのかについては、未だ議論の余地があるものの、2011年からAccelに参加し、バンガロールを拠点に活動しているAccel IndiaパートナーのShekhar Kiraniに、メールで本件に関するインタビューを行ったので、その様子をご紹介したい。
TC: Kirani氏は2005年からインドでの投資活動を活発化し、不動産プラットフォームのCommonFloorやオンラインショッピングのFlipkart、カスタマーサポートサービスのFreshdesk、ファッション・ライフスタイルECのMyntraといったインドでも有名なスタートアップを含むポートフォリオを構築してきました。今回のファンドの設立にかかった期間は、これまでで最短といって問題ないでしょうか?普段Accelは、3〜4年周期でファンドを設立しているように記憶していますが。
SK: 今回のファンドは確かにかなりの速さで資金がまとまりましたね。これはインド市場の長期的なビジネスチャンスや、LPのサポート、私たちのポートフォリオに含まれる企業の質の現れであるとともに、インドにフォーカスして投資先を絞った私たちの投資戦略や、Accel Indiaのチームの力でもあると考えています。
TC: Accel Indiaのチームはこれまでにどのような変遷を辿ってきたんですか?
SK: Accel Indiaの母体となるErasmic Venture Fund(2008年にAccelが買収した)は、Prashanth Prakash、Subrata Mitra、Mahendran Balachandranによって設立されました。そしてAccelによる買収後、Anand Daniel、Dinesh Katiyar、Subrata Mitra(そしてShekhar Kirani自身)のリーダーシップもあり、チームは順調に成長しました。さらに、私たちはインド国内にポートフォリオサービスチームを立ち上げ、彼らがプロダクト管理やスタッフの採用、データサイエンス、テクノロジー、デジタルマーケティングなどの面で投資先企業のサポートを行っています。
TC: Accel Indiaは、ベイエリアのAccel Partnersとはどのくらい密接に関係しているんですか?Accel Partnersの投資家がAccel Indiaのファンドにも投資したり、ベイエリアのチームとお互いに関係のある投資案件について話をしたりすることはあっても、それ以外の面では独立して(Accel Londonのように)運営されているのでしょうか?
SK: 全てのAccelオフィスは、お互いのネットワークや情報、ベストプラクティスを共有し、投資先企業にも私たちのネットワークを活かしてもらいながら、協力し合って業務を進めています。Accelのゴールは、世界中の素晴らしい起業家を発掘し、ポートフォリオに含まれる企業を、どこで設立されたかに関わらず、全てのステージを通してサポートしていくことです。
TC: 大体いつもどのくらいの金額を各企業に投資しているんですか?また、特にどの段階にある企業にフォーカスしていますか?
SK: 私たちはアーリーステージの投資家なので、基本的には投資先企業にとって最初の機関投資家になりたいと考えています。初回の投資額は200万ドル以内に収まることが多いですね。
TC: インドのスタートアップシーンは最近盛り上がってきていますよね。スタートアップによる資金調達の加速化は、評価額にどのように反映されているのでしょうか?例えば2年前と比べて、各ステージにある企業の評価額に何か変化はありますか?
SK: 2015年に過度な投資が行われていたとき、成長期にある企業の評価額はつり上がっていました。しかし、シードステージやアーリーステージにある企業への影響はそこまでなく、2015年を通して見ても、彼らの評価額は適正といえる範囲でした。
私たちは評価額よりも、健全なファンダメンタルを持つ、強固で統制のとれたビジネスを投資先企業と作り上げることに注力しています。ここ数年の間に、いくつかのカテゴリーのオンライン化がこれまでにない速度で進んでいます(EC、映画チケット、タクシー予約、生鮮食料品販売、フードデリバリー、ローカルサービス、マーケットプレイスなど)。さらに、以前はスケールするのに最大5年を要していたようなカテゴリーが、2〜3年でスケールし始めています。私たちはこのような企業を支援し続け、彼らの成長を促そうとしているんです。
TC: インドに過度の投資が集まっているという心配はありますか?最近アメリカの投資家のChamath Palihapitiyaは、なぜ彼の率いるSocial Capitalが、これまでひとつのインド企業にしか投資していないかという話をThe Times of Indiaにしていました。その中で彼は「採用や人材、サポート環境の観点から見て、インドのスタートアップエコシステムの大部分は、シリコンバレーに劣っています」と語り、さらにインドを拠点とするスタートアップは「適切な人材やガバナンス、メンターを持っておらずつまづいてしまっている」と話していました。彼は、”最後の審判の日”のようなものが向こう12〜18ヶ月の間に起きて、スタートアップの評価額が急激に下落すると考えているようです。このような彼の見解には同意しますか?
SK: まず、2015年には確かに過度の資金がインドに流れ込んでいました。しかし、だからといって、インドのスタートアップが健全な状態にないとは言えません。インドの起業家は、スケールと成長と利益の相互作用について理解しています。さらにスタートアップのエコシステムも、これまでにないほどしっかりしています。ファンダメンタルを見てみれば、インドのマクロ経済はとても良い状態にあると分かります。ビジネスに理解のある政府によって経済の形式化、デジタル化が進み、インド経済自体もよいペース(7%のGDP成長率)で成長してるほか、通貨もとても安定しています。さらに、市場はモバイルユーザーで溢れているので、以前に比べて、新たに設立されたスタートアップの成長スピードがかなり上がってきています。
私たちがどのサイクルにあったとしても、ファンダメンタルには常に気を配る必要があります。その点に関して言えば、インドでは消費者や大企業、中小企業の間でモバイル化が進んだ結果、8億7000万人以上がモバイル契約を結び、2億人以上がスマートフォンを利用しているほか、1億5000万人以上がソーシャルメディアを使い、6000万人以上がさまざまな商品をオンライン上で購入しています。つまり、インドにはテック系スタートアップが誕生・スケールする環境が整っているんです。
TC: 未だインドの人口の大半が住むとされる”ルーラル・インディア(インドの農村地域)”への投資は現在行っていますか?例えばMayfield Indiaは、ベンチャーレベルのリターンをベンチャー投資よりも小さなリスクで狙うことができると、建設業者などのローテクビジネスに最近投資していたと記憶しています。彼らの言うようなチャンスはまだ存在するのでしょうか?また、Accel Indiaはそのチャンスを追い求めているのでしょうか?もしもそうだとすれば、どのくらいの時間を都市部と農村部それぞれにかけているのか、理由も併せて教えてください。
SK: テック企業の投資家として、私たちはいつも、サービスの利用のしやすさ、使い道、価格を含むいくつかの側面に気を配っています。
ルーラル・インディアでも、最近モバイル端末の利用者が増えてきています。1億人以上の人々が住むルーラル・インディアは、上記の3つの側面を考慮しても、これからとても有力なマーケットになるでしょう。新しいファンドのテーマのひとつが、インドの新興地域での”next 100 million(1億人以上の新たなネットユーザーがルーラル・インディアから生まれるという予測)”です。現在投資している企業を見ても、インドの新興地域が今後伸びていくことが分かります。
例えば、近年のスタートアップエコシステムを活発化してきたインフラの大部分をつくったのは、Flipkartでした。初のオンライン・モバイル決済サービスや物流インフラといった、オンライン・オフラインに関わらず、アメリカでは当然のものとされている商業インフラのほとんどを彼らが構築してきたんです。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)