AdobeのフラグシップといえばPhotoshopを思い浮かべるが、写真家やジャーナリストのユーザーがいちばん多いアプリケーションはLightroomだろう。このツールはRAWファイルを現像するだけでなく、露光、ホワイトバランス、色彩など写真のあらゆる要素を補正・編集する機能を備えている。
今日(米国時間10/18)、AdobeはMAXカンファレンスでまったく新しいバージョンのLightroom CCを発表した。現行のLightroomユーザーにはかなりショッキングな変更となる。
新しいLightroomでは使い方が大きく簡素化された。またクラウド接続を容易にすることにも重点が置かれている。現行版のLightroomはハードディスクに写真を保存し、ローカルで現像・修正を完了することを前提としているためきわめてインターフェイスが複雑だ。このためYouTubeにはLightroomの使用法を解説するビデオが大量にアップされている。
今回の新アプリの登場は写真コミュニティーに大きな衝撃を与えるものであることは間違いない。しかし新ツールについて考える前に、現行Lightroomがなくなるわけではないということを確認しておこう。われわれのお気に入りの(あるいは嫌っている)ソフトはLightroom CC Classicと改名される。AdobeはClassicの改良も続けていくと約束した。実際、AdobeはMAXカンファレンスでLR Classicの新しいバージョンを発表した。これにはプレビュー生成が高速化されるなど数々のパフォーマンスの改良が含まれているという。
Adobeのプロダクト・マネジメントの責任者、Tom Hogartyにインタビューしたところでは、今回の動きは写真をとりまく環境の変化にLightroomを適合させるのが主たる目的だったという。ユーザーは以前に比べてはるかに大量の写真を撮影するようになり、しかもその撮影にスマートフォンが用いられる場合も多い。「新しい状況というのは、誰もが高品質なカメラをポケットに入れて持ちあるくようになったことだ。現在のユーザーは写真の公開にあたってコミュニケーションを重視するが、ツールの利用方法を学ぶために長い時間を割くことは望んでいない」とHoggartyは述べた。
その結果、新しいLightroomは(契約するプランによって異なる―この点は後述)テラバイト級のサイズの写真をクラウドに保管できるようになった。ユーザーはすべてのデバイスからこのクラウド・ライブラリーに自由にアクセスできる。Adobeは以前からこの方向に向かっていたが、今後は全社を挙げてクラウドに注力する。写真をクラウドに保存することでAdobeは同社が開発していたSensei AIプラットフォームを活用して写真を自動的にスキャンし、適切なタグづけを行う。これにより、たとえば、キーワードで正確な検索ができるようになるという。
読者が現行Lightroom CCを使っている場合、新Lightroomに移行すると戸惑いを感じるかもしれない(ライブラリーは自動的にインポートされる)。Adobeは新LRのインターフェイスを最小限の要素に簡素化した。たとえば、旧版で写真を編集する場合、「ライブラリー」から「現像」へモジュールを切り替える必要があったが、新アプリではこのこの区別は消えた。消えたのは「ライブラリー」と「現像」ばかりでなく「ブック」、「スライドショー」、「プリント」、「Web」モジュールも消えた(誰も使っていなかったから影響は少ないが)。 新バージョンではビューを切り替えるだけになった(グリッド、正方形グリッド、詳細)。どのビューにいても、右サイドバーから編集ツールを選択すると自動的にフルスクリーン表示の「詳細」ビューに切り替わる。
さらに面倒な「読み込み」プロセスも大部分が消えた。このタブでは写真をどこに保管するか、何とタグづけするかなどさまざまな入力が必要だったので、この部分を解説するだけでYouTubeビデオにちょっとした産業が成立していた。新バージョンでは保存はクラウドになるので写真を選択して「写真を追加」ボタンをクリックするだけで済んでしまう。1枚の写真であればアルバムであれ簡単に共有ができる。
ユーザーはもちろん「設定」でデフォールトの保存場所を指定できるが、これはローカルにどれだけの空き容量があるかによって決まる。
Adobeはユーザーが一部の写真をローカルに保存したいはずだと知っており、いつでもそのようにできる。【略】
新しい料金プラン
上で述べたように、新しいツールの使い勝手はすべてユーザーのクラウド・ストレージの容量で変わってくる。【略】〔日本サイトの場合〕Adobe CCの新しいフォトプランはLightroom、Lightroom Classic、Photoshopのバンドルに20GBのオンライン・ストレージが付属して月額980円。これに1TBのクラウド・ストレージが付属するプランは.月額1980円となる。
AdobeではLightroomだけが欲しいユーザーのためにLightroom CCに1TBのクラウド・ストレージがが付属したプランを月額9.99ドルで提供する。これにはPortfolioとSparkへのアクセスが含まれる。〔日本サイトにはLightroom単体1TBプランについてはまだ情報がない〕。
なおCreative Cloudに加入する必要なく購入できるスタンドアローンの買い切り製パッケージソフトは、残念ながら Lightroom 6が最後のバージョンとなる。つまりLightroom 7がリリースされる見込みはない。またLightroom 6についても2017年以降はバグフィックスもアップデートも行われないという。
理由は?
世の中にはまだまだまだソニーのミラーレスやキヤノンのDSLRを肌身離さず持ち歩くエンシュージアストがいる。しかしこのマーケットは明らかに縮小しており、逆にモバイル写真が劇的に増加中だ。Adobeはこの写真を取り巻く環境のシフトに対応しようとしているのだろう。一方でGoogleは写真の保存、検索、編集に関してきわめて魅力的なツールとプランを提供しており、競争の激化が予想される。
Lightroom Classicが依然として提供されるので誰もドラスティックな変化を強制されるわけではない。しかし使い勝手のいいクラウド型のLightroomは従来のバージョンの複雑さを敬遠していた新しいユーザー層を大規模に獲得する可能性がある。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)