Adobe(アドビ)は、マーケティングワークフロー管理のスタートアップであるWorkfront(ワークフロント)を15億ドル(約1600億円)で買収すると発表した。Bloombergが米国時間11月9日、この売却取引を最初に報じた。
Crunchbaseによると、Workfrontは2001年設立の会社で、これまで3億7500万ドル(約390億円)を調達した未公開企業だ。そのうち2億8000万ドル(約290億円)が2019年に流通市場で調達した資金であったことは注目に値する。
Adobeはこの買収により、同社のExperience Cloudに適合するオンラインマーケティングツールをさらに増やすことができる。企業がマーケティング部門内(または社内の他の部署)で複雑なプロジェクトを管理するのに役立つツールだ。
Adobe Experience Cloudのプラットフォームおよび製品担当副社長であるSuresh Vittal(スレシュ・ビタル)氏は、両社が協働し、お互いの営業チームが顔を合わせることがよくあるという。パンデミックが広がり、分散環境でうまく機能するこの種のツールを会社で使うことが合理的になり、過去数カ月をかけてついに取引が成立した。
「ニューノーマルの下でマーケティングチームやエクスペリエンスデリバリーチームは分散し、リモートで働くようになりました。仕事の管理方法、コンテンツを作り出すスピード、コンプライアンスとガバナンス機能の提供方法などに関する新しいアイデアが出現し始め、あらゆる資産が組織から流出することを防いでいます。そして、クリエイティブやマーケティングチームを経由して外に出て行き、ブランドを正しい方法で表現することになります」とビタル氏は説明する。
WorkfrontのCEOであるAlex Shootman(アレックス・シュートマン)氏は、この取引により大企業への接触が可能になり、計画実行が加速するとみている。「当社はマーケティングの表面にわずかに触れている程度であり、そうした素晴らしい有機的な関係を持つだけで飛躍的に成長できると考えています」と同氏は述べた。
Constellation Research(コンステレーションリサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、この買収でアドビの顧客はマーケティングプロジェクト管理の複雑さを容易に管理できるようになると述べた。「仕事のスケジューリングと管理は企業にとって桁違いに複雑になりました。AdobeはWorkfrontの買収で対応し、仕事の新しい未来のためのより良いツールを提供します」とミューラー氏はTechCrunchに語った。
Workfrontの960人の従業員はAdobeの一部に、そしてAdobe Experience Cloudの一部になる。シュートマン氏は引き続き経営に関与し、Adobeのデジタルエクスペリエンスビジネスのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるAnil Chakravarthy(アニル・チャクラバルシー)氏に報告する。
Workfrontの顧客には、Home Depot(ホームデポ)、T-Mobile(Tモバイル)、Deloitte(デロイト)が含まれ、Workfrontの合計3000社の顧客のうち1000社は両社共通の顧客だ。実際Workfrontには、マーケターが頻繁にアクセスする同社の製品ファミリーのうち、Adobe Creative CloudとExperience Cloudに接続するAPIがある。
Adobeはマーケティングオートメーションの分野でSalesforce(セールスフォース)、SAP、Oracle(オラクル)と争う中、近年小切手帳を使って追加の火力を獲得している。この買収はAdobeが2018年にMagento(マジェント)に16億ドル(約1700億円、未訳記事)、Marketo(マルケト)に47億5000万ドル(約5000億円、未訳記事)を費やした後に続くものだ。2年足らずで3社に約80億ドル(約8400億円)を使った。Adobe Experience Cloudの一部を社内で開発しているにもかかわらずだ。これらはすべて、Adobeがこの価値の高い分野で前進することにどれほど真剣であるかを示している。
カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)は、オンラインでも対面でも常に取引の重要な要素だ。顧客に対し、ブランドとの取引における満足感をもたらすからだ。顧客に繰り返し戻ってきてもらうだけでなく、顧客が会社の大使として行動することを促す。これには信じられないほどの価値がある。
逆に、質の悪い体験は正反対の影響を及ぼす可能性がある。見込み客、ひいては企業にとって良い顧客でさえブランドを見捨て、オンラインで友人に直接悪口をいうようになる。Adobeは新しいマーケティングツールを導入することで、顧客のオンラインでの体験を向上させる可能性を高めることができると期待している。これにより、会社で働くマーケティング担当者は、ワークフローを通じてマーケティングプロジェクトをアイデアから実行に移すことができる。
この取引はAdobeの会計年度の第1四半期に完了する予定だ。例によって、当局による精査の対象となる。
カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:Lisa Werner / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)