通販事業者向けのクラウド在庫管理システム「ロジクラ」を提供するニューレボ(New Revo.)は12月20日、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により総額5000万円を調達したことを明らかにした。
同社はこれまでにも2016年9月にF Venturesから、2017年8月にDGインキュベーションから資金を調達。今回新たに調達した資金をもとに、データ収集や機械学習の精度向上・体制強化を進め、AIを用いた需要予測機能などプロダクトの拡張を進める。
通販事業者の負担となる入出荷作業をシステムで効率化
ロジクラは商品の入荷から在庫管理、出荷までを一気通貫で管理できるシステム。バーコードやラベルの発行、在庫管理、通販サイトの受注取り込み、納品書の作成といった一連の物流業務をクラウド上で完結できることが特徴だ。
ニューレボ代表取締役社長の長浜佑樹氏によると、通販事業者が在庫管理や発送を行う現場では未だに紙やFAXを中心としたやりとりや、目視での検品作業などアナログな部分が多いそう。それが生産を低下させる原因になっているという。
「中小のEC事業者では自社で商品の出荷まで行っているところが多い。他の業務もある中で注文データと目の前の商品があっているかなど逐一目視でチェックするのは負担になる。加えて送り状の記入なども毎回手書きでやっているのが現状。このようなアナログな作業をデジタル化することで生産性を上げたい」(長浜氏)
なんでも通販事業者によっては、全体の60%以上が検品作業など入出荷に関する業務に使われているという。その点は長浜氏自身も学生時代に倉庫業務のアルバイトを経験していて、同じ課題を感じていたそうだ。
ロジクラでは商品のバーコードをスマホで読み取りクラウド上で管理することで、目視で行っていた際に起こり得る検品作業のミスや無駄な時間の削減など、入出荷業務をスムーズにする。目標は「現場の入出荷作業の時間を80%削減する」ことだ。
サービス自体は11月上旬から事前登録ユーザーの募集を始めたところ。すでに約50社から問い合わせがあり、これからテスト版の運用を実際に始めていくフェーズだという。
蓄積したデータをもとにAIで需要予測、過剰在庫の削減へ
現在のロジクラでは上述したようなクラウド在庫管理機能のみを提供しているが、目指しているところはもう一歩先。蓄積された在庫データなどを解析することで、在庫の需要予測までできるシステムだ。
ニューレボが内閣府の資料をもとに計算したところ、国内の中小企業の倉庫には売れずに眠っている「過剰在庫」が54兆円ほど存在しているという。また平成28年には過剰在庫がキャッシュフローを圧迫し1週間に1社のペースで企業が倒産するなど、過剰在庫が大きな問題となってきた。
「過剰在庫が発生する原因のひとつは、発注担当者が自分の経験や勘で発注してしまうこと。欠品を恐れて必要以上に発注してしまった結果、在庫が増えてキャッシュを回収できないという状況に陥ってしまう。1番の問題はデータに基づいた需要予測ができていないことにあると考えた」(長浜氏)
そこでロジクラでは在庫管理システム上に蓄積された在庫・販売データと、景気動向や天気など外部のデータを組み合わせて解析。企業ごとに最適化された需要予測ができる機能を構築する計画だ。
「完全に過剰在庫をなくすことは難しいが、予測と出荷実績のばらつきを抑えることはできる。需要予測機能を使った場合の在庫の削減目標は30%。それだけでも大きなインパクトがある」(長浜氏)
ニューレボでは今回の資金調達を機に、統計解析や機械学習をはじめとしたAI技術を保有する人材の採用を強化する。2019年度までに各企業に最適化された需要予測機能を提供することが直近の目標だ。また長期的には在庫データをもとにした在庫売買のプラットフォームや在庫を担保にしたレンディングなど、「在庫データ」ビジネスの展開も検討していくという。
ニューレボの創業は2016年の8月。代表の長浜氏が学生時代にシリコンバレーでUberに出会ったことが起業のきっかけだ。自身がアルバイトなどで交通や物流領域の仕事をしてきたこともあり、当初は食品や日用品の即日配送アプリ「FASTMRT(ファストマート)」を運営。そこからより物流業界の大きな課題に着目する形で、在庫管理を効率化するロジクラを始めている。