AI開発の「カラフル・ボード」が新たに8億円調達、アパレル企業のDM個人化で来店6割増も


カラフル・ボード
は人工知能でスタイリングを提案するアプリ「SENSY」などを手がけているが、今度はアパレル企業と組み、ファッションアイテムの需要予測やマーケティングを支援するという。カラフル・ボードは本日総額8億円の第三者割当増資を発表した。引受先は、はるやまホールディングスTSIホールディングスVINXの3社で、調達額8億円のうち1億円は日本政策金融公庫からのデットファイナンスだ。また、この3社とは戦略パートナーとして業務提携も締結している。

カラフル・ボードは2011年11月に設立した慶応大発のAIベンチャーで、ユーザーの好みにあったファッションアイテムやコーデを提案するSENSYアプリなどを提供している。2015年5月にはACAから総額1.4億円を調達し、2016年10月には慶應イノベーション・イニシアティブから5000万円を調達した。

法人向けサービスとしては三越伊勢丹ホールディングスと「人工知能接客サービス」プロジェクトを立ち上げたほか、ECサイト向けにユーザーのファッションの好みに合わせて商品を提案するレコメンドエンジンなども提供している。ファッション以外の分野では三菱食品と提携し、個人の食品の好みを解析する「グルメ人工知能」の開発も行っている。

今回の調達ラウンドに参加したはるやまホールディングス、TSI、VINXともアパレルに関連した企業で、各社とは以前より新たな人工知能サービスの提供に向けて取り組みを行っていたという。それらの成果が出てきたことから今回の出資につながったとカラフルボードの代表取締役CEOを務める渡辺祐樹氏は説明する。

はるやまホールディングスはスーツをはじめとする紳士服を扱う企業で、SENSYとはユーザーの好みを解析し、その好みを反映したDMを送付する「パーソナライズDM」の取り組みを実施した。2016年11月に4万4000枚のパーソナライズDMを送付した結果、来店数は通常のDMを送付した時よりも58.7%多く、売上としては2000万円以上の増加に貢献したという。

パーソナライズDMのサンプル。カスタマーごとに表示する商品や並び順が異なる。

TSIは「ナノ・ユニバース」など37のブランドを持ち、約1400店舗とECサイトを運営しているアパレル企業だ。アパレルのビジネスではトレンドを捉えた上で商品の需要を予測し、最適な量の商品を仕入れるのが大事だ。過剰に仕入れれば不良在庫になり、足りなければ販売機会を失う。カラフル・ボードは人工知能でこれまでの販売データを解析し、細かく需要予測を算出するソリューションを提供したい考えだ。

最後にVINXだが、彼らは店舗向けのPOSシステムなどを提供している。カラフル・ボードは彼らのPOSシステムから得られる購買履歴のデータを活用して、接客や販売に役立てるサービスを提供するという。

「アパレル業界で展開している各ソリューションを本格的にグロースさせるタイミングに来ました」と渡辺氏は説明する。調達した資金は、各ソリューションの拡充に力を入れていく予定だ。ゆくゆくはそれぞれのソリューションを連携させ、より正確な接客販売時の提案、需要予測、マーケティングを実現していくと話している。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。