AirtableのCEOは会社の評価額が急上昇してもエグジットに興味がない

パンデミックの真っ只中だが、ローコードのスタートアップであるAirtableにとっては、実に素晴らしい年となった。つい先日、同社は25億8500万ドル(約2730億8000万円)という驚異的な評価額で1億8500万ドル(約195億4000万円)を調達したことを発表した。また、同時に純粋なノーコードの領域からローコード領域へと入り込むための新しい機能を発表した。これによってユーザーは、同社の製品を製品を新しいやり方で拡張できるようになる。

AirtableのCEOで共同創業者であるHowie Liu(ハウ・リュー)氏は、米国時間9月14日開催のTechCrunch Disruptにゲストとして登壇し、インタビューを受けた。

リュー氏は、同社を2013年に立ち上げて以降、ソフトウェア開発を大衆化するというその当初からのビジョンは、しっかりそのままだと語った。「世界中のより多くの人びとが、単なるソフトウェア利用者に止まることなく、ソフトウェア開発者になるべきだと信じています。そして、私たちがこの会社で取り組んできたほとんどすべての時間が、その最終目標に向けての進路を進むために使われてきました」と彼はいう。

しかし、最近何かが変わったようだ。リュー氏は、当初のビジョンが可能にしていたものよりも、より多くのものを必要とする人たちがいることに気がついたのだ。

「つまり、本日資金調達と同時に発表された私たちの最大の変化はノーコード製品、つまりコードを使う必要はないけれど製品をコードを使って拡張することもできない純粋なノーコードソリューションから、ローコードソリューションへと移行するということなのです。それ以外にも多くの拡張機能が提供されます。例えばオートメーションを使えば、技術的な知識がなくても、Airtableの中にロジックを組み込むことができるのです」と彼はいう。

さらに、同社は20万人の顧客を抱え、ユーザー自身が開発したアプリケーションを共有できるマーケットプレイスを開設した。パンデミックが定常化するにつれて、リュー氏は目に入る取引の種類に変化が見られたと語る。これは、かつて彼の会社の主要な収入源だった中小企業たちが、新型コロナウイルス感染症の結果として、より大きな経済的苦痛を被っていることが一因だ。

しかし、彼は大企業顧客がこの空白を埋めるのを見ることとなった。よって新しい拡張機能が、純粋なノーコードソリューションが提供するよりも多少労力を顧客に要求するとしても、こうした利益性の高い顧客たちがそれらを受け入れてくれると考えることは、決して無謀な考えではないだろう。

「私たちのビジネスのエンタープライズサイドでは、例えば今夏は、2019年夏の期間と比べて、企業取引の成約速度が5倍になりました。また恐ろしく熱心な企業との間に、数十万ドル(数千万円)規模の数十件の取引や、数百万ドル(数億円)規模の複数の取引、そして何千件もの新しい有料契約が締結されています」と彼はいう。

この大成功やビジネスの上昇傾向と高い評価額にも関わらず、リュー氏はIPOについて話したいそぶりはみせなかった。彼の見解では、それはまだまだ先のことである。大きく勢いに乗った創業7年目の会社であるにも関わらず、彼は単にそれについては考えていないという。

また彼は、買収されることにもまったく興味がないし、投資家たちもエグジットに向けたいかなる圧力もかけてきていないという。

「私たちが描く長期的な目標とアプローチにコミットし、足並みを揃えてくれる投資家を見つけることこそが、実際の評価額やラウンドのテクニカルな側面よりも、いつでもはるかに大切なことなのです」と彼はいう。

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カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Airtable ノーコード

画像クレジット:Dani Padgett / StrictlyVC

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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