Alphabet、2016年Q4決算発表 ー 脱検索に向けた投資が実を結びだす

Alphabet CEO Larry Page speaks at the Fortune Global Forum in San Francisco, Monday, Nov. 2, 2015. (AP Photo/Jeff Chiu)

Googleは本日2016年Q4の連結決算を発表した。好調なビジネスもあれば、不調なものもあったが、「other bets(その他の投資)」とされるGoogleの本業を除くほぼ全てが詰まったカテゴリーには光が見えはじめた。

「その他の投資」からの売上は、2015年Q4の1億5000万ドルから2億6200万ドルへと健全な成長を遂げた。しかしもっと重要なのは、同カテゴリーの赤字幅が昨年の12億ドルから約11億ドルへと減ったことだ。ここにはNestのような事業が含まれており、Googleのビジネス全体に占める割合は微小だが、今後Googleが制覇しようとしている市場を表す重要なカテゴリーだ。そして同社の将来を考えると、このカテゴリーでよい成績を残すことが重要になってくる。

CFOのRuth Poratは、2016年通期での同カテゴリーの業績についても触れ、2016年の売上増額は8億90万ドル(前年比82%増)だったと発表した。なお、この売上の大半はNest、Fiber、Verilyによって生み出されたものだ。営業損失は29億ドルで、2015年に比べ少し減少した(Poratは2015年の具体的な数字を明かさなかったが)。一昨年から少し減ったとは言え赤字幅はかなり大きく、Alphabetが2017年に突入するにつれて損失は大きくなりそうな気配がする。同社は、その他カテゴリーへの投資の「金額やペースを引き続き修正していき」、「投資金額やスピードを入念に管理していく」とPotratは話す。

実際に昨年Alphabetは、特に同カテゴリーを厳しく監視していた。彼らは予想を下回る事業をたたみ、好調な事業へリソースを集中させようとしていたのだ。Alphabetは(Google Xを通じて)、Project LoonやGoogle Fiberなど新しいアイディアを試す場として長きにわたって知られてきたが、今後は自分たちが得意とし、市場を独占できそうな分野に注力しようとしているようだ。そのような動きの一例として、Alphabetは最近自動運転車部門を分社化し、Waymoと呼ばれる新しい会社を設立した

「その他の投資」カテゴリーの全体に占める割合がどれほど小さいか確認したい人は、下図をみてほしい(しかし同時にこの分野はAlphabetにとって極めて重要だということは忘れないでほしい)。

 

Googleは新しい分野へも進出しようとしており、2015年にはGoogle CloudのためにDiane Greenを迎え入れた。去年のAWSの様子を見るだけでも、クラウドコンピューティングサービスがどのくらい儲かるビジネスなのかということがハッキリとわかる。AWSは即座にAmazonで最も効率的なオペレーションと利益率を誇るビジネスのひとつになり、Googleがこのチャンスを逃すはずがない。Microsoftも同分野に精力的に挑んでおり、競争は必至だ。

Goole Play、Google Cloud、ハードウェアを含む「other revenues(その他の売上)」は、2015年Q4の21億ドルから62%増加し、2016年Q4は34億ドルだった。ひとつひとつの分野に特に大きな動きはなかったので、全て順調に成長しているか、ある分野が別の分野をカバーするような状況なのだろう。

アナリストによるAlphabet全体の業績予測は売上額252億2000万ドル、一株当たり利益(EPS)9.67ドルだったのに対し、実際は売上が260億6000万ドル、EPSが9.36ドルだった。EPSが予想を下回った一方、売上高は予想を上回っていたため、直後の株価はほとんど動かなかったもものの、検索ビジネス以外の分野で面白いことがわかってきた。

決算発表後、Alphabetの株価は時間外取引中に2.5%下落した。これは同社のサイズを考えるとかなりの動きだ。つまりウォールストリートでは、広告料が下落する中、Googleの方向性について不透明感が漂っている可能性がある。投資家が予想していた利益額をAlphabetが達成できなかったということが、今後数年間はAlphabetがGoogleをキャッシュマシーンのように扱い、次に何をするべきか模索しようとしているのでは、という不安を生み出したのだろう。

昨年はAlphabetにとって移り変わりの年だった。同社は、単なる検索エンジン広告ビジネスからの脱却を図ろうとしていたのだ。検索ビジネスはこれまでずっとGoogleの強みとして、数十年にわたって彼らの強力なAIエコシステムを支えてきたが、デスクトップ向けの広告でいつまでもお金を稼げるわけではない。

デスクトップ検索からの大幅なシフトの結果として、Googleの広告料は下がり続けている。一方でモバイルに注力することで、Googleは新しい広告フォーマットを開発し、モバイルデバイスが生み出す膨大なインプレッションを売上に結びつけることに成功した。その結果、Googleは1本あたりの広告料(コストパークリック)の減少を、インプレッションの増加で打ち消し、今のところは投資家が満足できる成績を残せている。

当然のように広告料は今も下がり続けており、2016年Q4のGoogleのコストパークリックは、2015年Q4から15%減少した。ペイドクリック数は予想通り増え続け、前年同期比で36%の伸びを見せた。つまり広告収入に関して言えば、これまでと同じような結果だった。

他にもGoogleは音声インターフェースなどの新しい技術を採用しはじめた。Google Assistantのローンチで、同社はユーザーが携帯電話に話しかける(そして最終的にそこからお金を生み出す)ような未来を描こうとしたのだ。Googleの後を追って、Amazonもすぐに音楽再生など簡単なタスクをこなせる、家庭用の音声アシスタントを開発した。

他社のおかげもあり、ユーザーは声を使ってGoogleに何かを「尋ねる」という行為に慣れてきだしたが、その一方でAmazonやAppleのSiriとの競争は激化している。会話式のインターフェースは、いつの間にか私たちに忍び寄ってきたようにも感じるが、時間が経つにつれて、ユーザーがキーワードを打ち込み、その結果現れる検索結果に対して広告を表示するようなモデルだけでは十分ではないということが、ハッキリとわかってきた。

Googleのここ数年の投資家に対する説明は十分なように映る。広告ビジネスの成績はまぁまぁで、モバイルデバイスが普及するにつれて更なる伸びが期待できる。また音声インターフェースやVRのような未来のプラットフォームを利用したビジネスについては、引き続き検討を進めていくのだろう。

 

Alphabetに関しては、2017年に「世界で最も価値のあるブランド」へと返り咲く可能性が大いにある。彼らは以前このタイトルを獲得してから、すぐにAppleにその座を譲ってしまったが、Appleの成長は2016年中に急停止した。iPhone 7や2017年Q1に発表したその他の製品で、Appleが今後持ち直す可能性もあるものの、音声ベースのUIなどAppleがまだ制覇できておらず、別のプレイヤーがユーザーを奪い取れる可能性のある分野には、ポッカリと大きな穴が空いている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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